JUNNA、20歳を迎えた日に行われたメモリアルな生配信ライブ 集大成と新たな挑戦を歌に込めた特別な一夜

 さらにwacciの人気曲「別の人の彼女になったよ」のカバーを、本家本元の因幡による伴奏で披露。未練と前に進みたい気持ち、その相反する要素が切なさを掻き立てる女性視点の名バラードだが、JUNNAはその複雑な感傷を、感情のこもった歌い口で表現。特に終盤の思いが募ったかのように朗々と歌い上げる姿は、心に迫るものがあった。本人も「自分の曲に王道のラブソングはあまりない」と語っていた通り、JUNNAのこれまでの持ち曲には、恋愛をテーマにしたものはあまりなかったが、今回のカバーを聴くに、彼女の太く芯のある歌声はラブバラードとも相性は良さそう。今後はぜひ切ない恋愛ソングにも積極的に取り組んでほしい。

 また、オンラインライブならではの試みとして、リアルタイムでの投票企画も行われた。JUNNAの生まれた年である“2000年発表の楽曲”というお題であらかじめ募ったカバー曲候補のリクエストのなかから、JUNNAが絞り込んだ2曲ーーポルノグラフィティ「サウダージ」と椎名林檎「ギブス」を対象に、ライブの視聴者に投票してもらい、どちらの楽曲をカバーするかをその場で決めるという企画だ。その結果、選ばれたのは「サウダージ」。歌謡曲的な色気のあるメロディに加え、ラテンジャズ風のアレンジも手伝って、いつも以上に大人なライブ空間が広がっていた。

 そこから再度、子供時代からのJUNNAを振り返る映像をはさみ、ライブは後半戦へ。和柄の袖をアレンジしたツアーTシャツにショートパンツを合わせた新衣装に着替え、この日が初公開となる新曲「我は小説よりも奇なり」を披露。12月9日にリリースされる2ndアルバム『20×20』のリード曲ということで、パワフルな歌声を存分に堪能できる力強いアップチューンに仕上がっている。激しく明滅するライト演出、ラスサビ前に演奏がストップするなか、大きく「あ〜〜!」とシャウトする見せ場を含め、強烈なインパクトを残した。そこから夜の高速道路を疾走するイメージ映像とJUNNAの歌う姿が重ねられた「コノユビトマレ」、la la larksの楽曲提供による「紅く、絶望の花。」と、狂騒的かつカオティックなナンバーを立て続け、モニター越しからも熱気が伝わるようなパフォーマンスを叩きつける。そして、彼女の口癖でもある“ヤバい”という言葉をモチーフにした、人気の歌謡ロック「Vai! Ya! Vai!」を投入。アグレッシブな楽曲の4連弾で真骨頂を発揮する。

 最後、バンドメンバーがはけてステージに一人残ったJUNNAは、ワルキューレでのデビューから5年が経ち、無事に20歳を迎えることができた感謝の気持ちを言葉にしたあと、ステージ前に用意されたキーボードの前に座る。ここでまた一つ、20歳の新たな挑戦として、ピアノの弾き語りが行われることに。歌うのは、彼女が初めて作詞・作曲を手がけたデジタルシングル「いま」。このライブの前日に配信開始されたばかりの新曲だ。新型コロナウイルスの影響による自粛期間中に、一人で考える時間が増え、「私にできることはないのかな?」と自問自答する日々を送っていたというJUNNA。その結果、導き出された答えの一つが「いま」であり、サビの〈今を生きる 私にしかできないこと/君を守れるように 強くなれるように/私はここで歌うよ〉というフレーズには、彼女の歌手としての覚悟と決意がそのまま表れている。ピアノの一音一音を確かめるように、ひとつひとつの言葉を噛みしめるように、大切に紡がれた歌。JUNNAというアーティストの“いま”を鮮烈に印象付ける名演だった。

■流星さとる
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