歌詞に今求められるのはビジュアル化とデザイン性? AWA「LYRIC DIVE」が打ち出すサブスクの新展開

言葉への没入感覚とスマホの手軽さ

 昨今の音楽シーンは映像と切り離せない関係にある。YouTubeをはじめとした動画投稿サイトで公式のMVが公開されるのは最早アーティストのプロモーションとして当然となり、年々そのクオリティは増している。なかでも人気なのがリリックビデオだ。ただ歌詞を表示するだけのものから近年は多様化し、その表現技法も徐々に進化してきた印象がある。歌詞をメインにした動画を指すこのリリックビデオというジャンルが元々はファンの二次創作によって始まったと言われている点からしても、「もっと深く歌詞の世界に入り込みたい」というニーズは古今東西変わらず強くあるのだろう。一般的な(歌詞表示のない)MVではいまいち感じ取れない言葉の機微や、文字の温度感、そして行間を、リリックビデオは表現してくれる。

 一方で、現在音楽を楽しむツールとして一般的になったストリーミングサービスは、やはりその手軽さが売りだ。世界中の音楽を検索ひとつでアクセスできる。スマホを開き、アプリを起動し、作品を選べば即座に聴ける。その流れで専用ボタンをタップするだけでLYRIC DIVEは可能だ。最近はライブイベントにおいてスクリーン上に歌詞を表示する演出も散見されるが、もちろんそれはライブ会場へ足を運ばなければ体験できない。もとより今はコロナ禍でライブ開催自体も減っている。「LYRIC DIVE」はいわば、リリックビデオの持つ言葉への没入感覚とサブスクがもたらす手軽さのハイブリットだ。スマホで手早く歌詞世界に浸ることができる。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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