『GUNDAM SONG COVERS 2』インタビュー

森口博子が語る、ガンダムソングに込められたものと歌うことへの使命 「根底には“生きる”というメッセージが流れている」

  今年8月にデビュー35周年を迎えた歌手・森口博子が、昨年放送開始40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』シリーズの楽曲をカバー&セルフカバーしたアルバム『GUNDAM SONG COVERS』をリリースし、オリコンウィークリー3位、10万枚を超えるセールス、さらに年末には『日本レコード大賞』企画賞受賞するなど大ヒットとなった。その第2弾『GUNDAM SONG COVERS 2』をリリース。オリコン、Billboard JAPANともに週間アルバムチャート 2位にランクイン。「GUNDAM SONG COVERS」シリーズ累計が20万枚を突破し勢いが止まらない。昨年リリースされた第1弾を上回る反響の今作には、前作に参加した寺井尚子、押尾コータロー、塩谷哲に加え、新たに本田雅人、武部聡志、The Voices of Japan(VOJA)がコラボアーティストとして参加。絶妙なアレンジと森口の透明感あふれる歌声によって、ガンダムシリーズの名曲に新たな命を吹き込んだ1作になった。各楽曲に対する思い入れと曲に込めたもの、コロナ禍の制作で彼女を支えたもの、35周年というアニバーサリーイヤーの2020年に何を感じたのか? 森口博子に今の気持ちを聞いた。(榑林史章)

ガンダムソングに込められた「生きる」というメッセージ

ーー今作は、10万票を越えるインターネット投票による上位10曲+Bonus Trackを収録、森口さんの楽曲もベストテンに入りましたが、この投票結果はどう感じましたか。

森口博子(以下、森口):こんなに沢山投票していただき、大きなバトンをファンの皆さんから預かった気持ちでした。入ってくるだろうなという楽曲もあれば、「こんな熱いロックを私に歌ってほしいんだ!?」という発見もありました。自分の曲がランクインしたことは、ちょっとホッとした気持ちもありますね。中でも「銀色ドレス」はデビューシングル『水の星へ愛をこめて』のカップリング曲で、『機動戦士Z ガンダム』の20話挿入歌として放送では1回しか流れなかった曲なので、ランクインして感慨深いです。

ーーガンダムソングはその時代性も反映しながら、作品ごとにいろいろな曲調もありますが、根本には時代を経ても色褪せない普遍性があることが、このシリーズを聴いて実感します。

森口:私もその普遍性を改めて感じます。今回は3曲レコーディングしたところで緊急事態宣言が発令されて、レコーディングが一時中断されたんです。リリースも6月から9月に延期されて、どうなるんだろうという不安の中で、ファンのみなさんは「楽しみな気持ちが延長されて余計に楽しみになった」や「時間ができたぶんより良い曲にできますね」とすごく前向きで、その声が私のモチベーションになりました。それでせめて1曲だけでもと思って、レコーディング済みだった「星空のBelieve」を6月に配信でお届けしたのですが、この曲の世界観が、ソーシャルディスタンスを保ちながら生き抜いている今の私たちにぴったりの楽曲だったんです。どんなに時代が変わっても、ガンダムソングが伝えるメッセージは、一貫しています。ロックであったり、時には美しく壮大なバラードであったり、ポップな曲であったり、いろんな音楽ジャンルになっていますが、その根底には「生きる」というメッセージが流れています。哲学的で重厚感があって、まさに普遍的。あらためて音楽は、メッセージなんだなと感じました。

ーーガンダムファンは、音楽に対しても耳の肥えた厳しいファンが多いです。そういう人たちを納得させるために、アレンジや歌で意識することはどういうところですか?

森口:まずアニソンは作品ありきで、物語に寄り添って生まれています。長年楽曲を大切にしてくださっているファンのみなさんには、「このフレーズは聴きたい」という肝になるところがあって。そこは絶対に残しながら、コラボレーションさせていただいたミュージシャンの方と私が新しい息吹を吹き込む。その絶妙なバランスは、すごくこだわって綿密にレコーディングスタッフの皆さんと相談しました。たとえば前作でもコラボさせていただいたジャズバイオリニストの寺井尚子さんをフィーチャーさせていただいた「サイレント・ヴォイス」は、尚子さんのバイオリンソロでアルバムの幕開けを、ドラマティックにしたいと提案させていただきました。それならガンダムファンの皆さんは勿論、ガンダムを知らない方にも、「何が始まるんだろう」というドキドキやインパクトを感じてもらえると思ったので。尚子さんの情熱的なバイオリンなら絶対に裏切らないと、確信していました。

ーーイントロから世界観に引き込まれるものがありました。メランコリックな雰囲気は、ガンダムの世界とすごくマッチしますね。

森口:哀愁がありますよね。しかもバイオリンと歌の同時レコーディングだったんです。尚子さんのバイオリンは本当に歌心があるので、尚子さんとのセッションは、毎回私自身も覚醒するような感覚があります。ライブでも何度かご一緒させていただきましたが、本当に魂が揺さぶられます。同時レコーディングによって、その雰囲気がまるまる曲に投影できたと思います。カバーという部分では、私が普段はあまり歌わない中低音域のメロディを歌って、私にとっても新鮮でした。

ーー今作では、元T-SQUAREのサックス奏者・本田雅人さん、プロデューサー/ピアノの武部聡志さん、コーラスグループのVOJAさんが初参加。「君を見つめて -The time I’m seeing you- 」は、本田さんのセクシーなサックスが秀逸ですね。

森口:まさに! 官能的なサックスのイントロから始まります。この時は歌との同時ではなかったのですが、音入れのレコーディングに参加させていただいて、本田さんに「宇宙の無音の中に広がるような感じでサックスをフィーチャーしたいです」とイメージをお伝えしたら、何パターンも考えてくださって。短いフレーズですけどどれも格好良くて、その中から選ばせていただくのは悩みましたし、すごく贅沢なレコーディングになりました。この楽曲のMVが森口博子公式YouTubeチャンネルで公開になりましたが、地球をモチーフにしたドレスを着て、バンドスタイルでの撮影もかなりオシャレな仕上がりなので、是非チェックしてくださいね!

ーー「君を見つめて」は、森口さんの楽曲のセルフカバーでもあります。

森口:1991年の楽曲で、オリジナルはギターが印象的なサウンドですけど、以前に『SUMMER JAZZ』というイベントでご一緒させていただいたご縁で、本田さんにコラボを提案させていただきました。オチサビはディレクターの時乗浩一郎さんのアイデアで当時20代だった私の歌声と、現在50代の私の歌声を重ねてあって、過去と現在のコラボも実現して、声が重なったものを聴いた時はウルッときましたね。こんなにも長く歌わせていただいているんだなぁって。ファンのみんなとスタッフの皆さんと色々乗り越えてきた証ですね。

森口博子「君を見つめて -The time I'm seeing you- / with 本田雅人」MV (機動戦士ガンダムF91)

ーー29年前の自分の歌声を聴いて、何を思いましたか?

森口:「マジメかよ!」って思いました(笑)。すごくマジメで、純粋にまっすぐ歌っている感じです。ただ最初は、29年前の曲が日の目を見るうれしさから、ゴリゴリに力強く歌ってしまって、「やる気が空回りしてる」とディレクターさんに指摘されて(笑)。それで一旦気持ちをフラットにして、冷静になって歌い直したら「お帰りなさい」と言われたエピソードがあります。(笑)

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