BRAHMAN、初のオンラインライブを開催した意味 ILL-BOSSTINO&KOとぶつけたライブというエンターテインメント

 後半の選曲も興味深い。「CIRCLE BACK」「SHOW」、「LAST WAR」など、近年ライブではあまり披露されなかった楽曲たちである。収録アルバムで言うなら2001年の『A FORLORN HOPE』や2004年の『THE MIDDLE WAY』。震災後に覚醒して“鬼”と呼ばれるようになる前の、さらには彼らの人気に火を付けたエアジャム・ブームが次第に終わっていく、いわば苦悩ともがきの時期だ。ことに「LAST WAR」の歌詞など、やると言ったらテメェでやれよ! と背中を蹴り飛ばす今の“鬼”とは大きくニュアンスが異なっている。

 今ここで、全国のライブハウスにこの歌を届けることに意味があるのだろう。〈日々を賭ける/願い超えて/逃れられぬ悲しみに〉と続く後半、TOSHI-LOWは本気でもがいていた。あるいはもがき苦しんでいる人々の心を代弁していた。混乱、痛み、諦念と格闘しながら、それでも逃げるなと歌っているようだった。選ばれたスーパーマンじゃない。自分たちも死ぬほど迷ってきた。そういう25年ぶんの歴史がまるごと説得力になっているのだ。

 コロナ禍を歌ったとおぼしき新曲(「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」プロジェクト提供曲)を挟んで、「ANSWER FOR…」は事実上の本編ラストのようだった。これもまた迷える初期の曲。ただ自分の掌をじっと見つめ、TOSHI-LOWは震えながら歌っていた。しかも〈What did you say?〉の部分を〈立ち上がれ〉〈ライブハウス!〉と言い換えて。あえてカメラ目線ではなく己の手を見ていたのは、誰かに期待するな、自分に問え、というメッセージだろうか。歌い終えた後にはこの日唯一のMCがゆっくりと語られた。いわく、「生き延びろ、ライブハウス。生き延びろ、ライブハウスのバンド。生き延びろ、ライブハウスを愛する人たち」。「俺たちが死に場所を作りに行くまで、そこを守っていてください」。

 事実上ラストと書いたが、感覚としては、その後ふわりと始まったILL-BOSSTINOとの「BACK TO LIFE」がアンコール、最後の「ARTMAN」がダブルアンコールといったところ。今必要な怒りとメッセージを爆発させ、チルな空気で同士と笑ってみせ、ラストで揺るぎなき原点を叩きつける。見事なまでにBRAHMANらしい一時間。これに心打たれなかった人がいるだろうか。いいものを見た、やっぱりライブが好きだと確認できた娯楽の先には、明日のあなたの行動が問われている。

BRAHMAN オフィシャルサイト

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