ヒトリエ、バンド史を更新し前進していく“自信と覚悟” 新たなスタート地点に立った配信ワンマンライブレポート
「ライブってのは非日常的空間と言われたりして。でもそんなライブが我々にとっては日常だったりするのでございます。それが奪われているこの感じ、まさに非常事態だと言えますな。でも言ったらさ、俺ら去年の春からずっと非常事態なわけ。それでも3人でコースト立ってさ、全国ぐるっと回ってさ。3人でなんとか駆け抜けてきたわけ。だからこんな感じのライブでも全然屁でもないね。ヒトリエを舐めてもらっちゃ困る」
中盤、シノダはそんな言葉でヒトリエとしての自信というよりも“覚悟”を語った上で、バンドの始まりの曲「カラノワレモノ」を歌い始めた。4つ打ちビートとシンプルなコード、そして〈泣きたいな 歌いたいなあ〉と切実な感情をむき出しのまま詰め込んだ歌詞。文字通りヒトリエの原点を刻んだこの曲のパフォーマンスは圧巻だった。そしてその原点からできるかぎり遠くへ飛ぼうとするようなダンサブルナンバー「トーキーダンス」を経て、ライブは後半戦に突入していく。
「このクソみたいな2020年に、wowakaより愛を込めて!」というシノダの叫びとともに鳴らされた「アンノウン・マザーグース」のヒリヒリとしたテンション、どこまでも続く道をまっしぐらに突き進むような「目眩」の美しさ、そして“歌う意志”をエモーショナルに歌い上げる「青」の力強さ。楽曲を追うごとにその演奏は確信を深め、強度を増していくようだった。振り返ればあっという間だったこの配信ライブを「緊張した」と振り返るゆーまお。シノダは「もう終わっちゃうのか!」と無念そうだ。このコロナの状況を踏まえ「この先どうなるかはわかりませんが」と前置きしつつ、「あえてこういう言葉で締めくくらせてください。今日は本当にありがとうございました、続きはライブハウスでお会いしましょう!」。そう再会を誓うと、一気にラストスパート。「センスレス・ワンダー」と「ローリンガール」を畳みかける。髪を振り乱しながらベースを弾き倒すイガラシ、全身を躍動させてビートを叩き出すゆーまお、そして激しく弦をかき鳴らしながら全身全霊の歌を届けるシノダ。「オン・ベース、イガラシ。ドラムス、ゆーまお。ギター・ボーカル、シノダ。そして作詞作曲、wowaka。ありがとうございました、ヒトリエでした」。最後にはシノダによるメンバー紹介の声が、ライブを完遂した充実感とともに響いたのだった。
■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。
■セットリスト
『ヒトリエ BEST ALBUM RELEASE 生配信ライブ “4”』
1.ポラリス
2.SisterJudy
3.モンタージュガール
4.シャッタードール
5.日常と地球の額縁
6.SLEEPWALK
7.Loveless
8.Inaikara
9.(W)HERE
10.カラノワレモノ
11.トーキーダンス
12.アンノウン・マザーグース
13.目眩
14.青
15.センスレス・ワンダー
16.ローリンガール
■リリース情報
ベストアルバム『4』
発売:2020年8月19日(水)
<初回盤(2CD+BD)>
価格:4,500円(税別)
<通常盤(2CD)>
価格:3,000円(税別)
<CD収録曲>
Disc 1:
1.カラノワレモノ
2.SisterJudy
3.モンタージュガール
4.Inaikara
5.センスレス・ワンダー
6.アンチテーゼ・ジャンクガール
7.踊るマネキン、唄う阿呆
8.(W)HERE
9.インパーフェクション
10.NONSENSE
11.トーキーダンス
12.シャッタードール
13.ワンミーツハー
14.フユノ
Disc 2:
1.リトルクライベイビー
2.イヴステッパー
3.doppel
4.目眩
5.アンノウン・マザーグース
6.絶対的
7.Loveless
8.ポラリス
9.日常と地球の額縁
10.コヨーテエンゴースト
11.SLEEPWALK
12.青
13.ローリンガール 2016.2.18 at下北沢GARDEN
BD収録曲:
COUNTDOWN JAPAN 18/19 2018.12.31
M1 踊るマネキン、唄う阿呆
M2 トーキーダンス
M3 アンノウン・マザーグース
M4 ポラリス
M5 センスレス・ワンダー