PEDRO、目の前の“あなた”に想い届けた爆音のロックショー 『LIFE IS HARD TOUR』ファイナルを徹底レポート
「同じ時間、同じ場所、同じ体験を共有できる貴重さ」
煌々としたスポットライトに照らされたステージで軽快なメロディが流れていた「へなちょこ」では、毛利がドラムスティックで客席を鼓舞。わずかな暗転を挟みサイケデリックな演出の中でスタートした「ironic baby」、心の声を目の前のマイクへぶつけるかのような「Dickins」と続き、次の「おちこぼれブルース」では、物憂げなメロディにつられて観客は腕を組みじっとステージを見守っているかのようだ。
なにげない日常を切り取った「生活革命」で客席はさらに静まり、時折ふさぎ込みたくなるような今の世相を思い「何てことない日々こそ、幸せなのかもしれない」という感情が込み上げてくる。しかし、ライブ本編も残り数曲。空気を裂くように歌い上げる「SKYFISH GIRL」で、会場は徐々に激しさを取り戻す。
続いて、ステージ上で「みなさま、本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました」と挨拶をするアユニ。「LIFE IS HARD…...人生は大変厳しいものですが、最後まで楽しい時間をお過ごしください。私、アユニが僭越ながら、乾杯の音頭を取らせていただきます。右手をお上げください。みなさまの幸せと健康を祈りまして、乾杯!」という口上で始まったキラーチューン「乾杯」では、客席が何度も〈乾杯〉のフレーズに合わせて右腕を上げて前のめりでステージへと食らいつく。
ライブアレンジされた田渕のギターリフでスタートした「自律神経出張中」に続き、本編ラストを飾る「空っぽ人間」では、虹のように光るスポットライトが目立っていた。
客席からの手拍子を受けて、アンコールで再びステージへ戻ってきたPEDRO。コロナ禍でようやく実現した全国ツアーを振り返るアユニは、静かにじっと見守る客席へ向けてみずからの思いを口にした。
震えるような声で「もう終わっちゃうんだ。寂しい」とつぶやくアユニ。言葉を一つひとつ噛み締めながら「今日が最後の日で、始まる日、終わる日があって。すごい長いなと思っていたけど、もうアンコールで」と寂しさを滲ませる。
「3年前の私は、一人の人の前でしゃべることもできなくて。だけど......まだまだペーペーだけど、たくさんの人との縁が繋がりあなた方とも音楽を通して出会うことができて、日々支えられながら助けられながら、人間にちゃんと近づけたと思って。すごい、生きててよかったと思わせてくれて、本当にありがとうございます」と周囲への感謝を吐露した。
さらに、世相を憂いながら「前みたいにギューギュー詰めのライブハウス公演や楽しいことができなくなっちゃって。この数カ月間のうちに無観客ライブを経験して、そこでしかできない客席を使った演出とかもそれはそれで素晴らしいけど、目の前にこうしてあなた方がいてくれて、同じ時間、同じ場所で、同じ体験を共有できるのは本当に貴重で、幸せな時間だと改めて思いました」と、コロナ禍で味わった思いをまっすぐに伝えていた。
そしてアンコールでは、名残り惜しそうな表情を浮かべながらも「浪漫」を披露。この日のラストを飾る「NIGHT NIGHT」では、その場で飛び跳ねるアユニに向けて客席も精一杯の拍手を返し、煌々と点滅するスポットライトの下で、PEDROの面々はステージを後にした。
■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。