WEAKEND WALKER、五感を刺激するロックと美しい狂気 バンド体制初披露となった『1st ANNIVERSARY LIVE』レポート

 カンカンカンという踏切の音に連れられ「Orange」が鳴らされるると、会場は一変してしっとりした雰囲気へ。WEAKEND WALKERの歴史をスタートした思い出の1曲だからなのか、音楽の浸透圧が凄まじい。彼らが発する音楽や映像、空気などすべてのものが、一直線にオーディエンスの五感を刺激する。会場は自然と左右に揺れ、それぞれの姿勢が少しだけ前のめりになっていた。

 その後もラップのフロウのような歌い方が特徴的な「CHECKMATE」、ダンサブルなナンバーの「Liar」と、一歩も手を抜くことなくラストまで駆けていく。トリを飾ったのは、歌謡曲のようなフレージングが印象的な「Nights Out」だ。「死にたくなる夜もあるけれど、叶えたいことがあって。同じような思いを抱えている人に届けばいいなと思って作った曲」というだけあり、言葉の明暗が深く描かれる。途中では、オーディエンスにクラップを誘導する一幕も。1周年を祝うべく駆けつけたファンと一緒にライブを作り上げ、記念すべき一夜を飾ったのだ。

 思うように外出できないし、気軽に会いたい人と会えないし、大勢でライブを楽しむことができない。そして何より、この状況がいつまで続くのかわからない。全く期待できない時代だ。しかし、そんな潮流のなかでもWEAKEND WALKERは自分たちの音を鳴らし、真っ直ぐに言葉を届けていた。変わってしまった時代のなかだって、自分たちの火を灯し音楽を刻み続けることはできる......と。それは彼らがインターネットネイティブ世代である以上に、確固たるロック魂を胸の中に宿しているからだろう。これからの時代、彼らがどんな音楽を鳴らしてくれるのか、楽しみに待ちたい。

■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter

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