WANIMA、初の無観客配信ライブが浮き彫りにしたバンドの根幹 無人のスタジアムで展開した興奮のステージを観て
昨年10月に発売されたメジャー2ndフルアルバム『COMINATCHA!!』の全国ツアー。11月5日新木場STUDIO COASTから始まったそれは、彼らの地元である熊本城ホール、大阪城ホールやマリンメッセ福岡などで大成功を収めてきたが、今年2月末からはコロナにより約半分の30公演中16公演が中止。その後、ツアーでのみ披露していた曲の緊急配信や未発表曲のテレビ披露などはあったが、どのバンドもそうであるように、ライブに関してはしばらく沈黙するしかない。今回のZOZOマリンスタジアム公演は本来未発表だったツアーファイナルにあたるが、どう開催するのか、相当な時間をかけての協議があったようだ。
まさか強引に開催とはいかない。ただしキャンセルもしたくない。無観客では寂しいし、行けなかった土地も含めてファンとの繋がりは確かめていたい。WANIMAが選んだのは、全国286劇場の映画館、そして12会場のライブハウスをこの日のために貸し切ること。そしてチケットに当選した者には地元でのライブビューイングを、外出したくない人には自宅でのリアルタイム配信を楽しんでもらうことだった。ここまでの準備をしたうえで、バンドとスタッフは無人のスタジアムを可能な限りド派手に盛り上げていったのだ。
スタートから目を引くのは照明の豪華さ。SEに乗ってスタジアムの客席360度にWANIMAの電飾文字が回りだす。なんでも2万5千個のサイリウムを仕込んだそうで、アリーナ席にあたるグラウンドにもこぼれんばかりの光が宿っている。見ようによっては満員の観客がスマホライトを点けているようであり、なるほどこれなら寂しさも半減する。手間と時間を想像すれば気が遠くなるが、その他メインステージ以外にもセンターステージの設営、それを360度カメラが取り囲む世界初の映像技術「soundiv.」の開発、さらにはドローン撮影などが仕込まれた。やるなら徹底的に。使える手は全部使ってゴージャスな舞台を作るのがWANIMAの流儀。ライブハウス出身でありながら、ホール、テレビ、スタジアムへと飛躍していった3人の強さは、こういうところで違いを発揮する。
カメラの多さやスイッチング技術も圧巻だったが、そこに映る笑顔が何より輝いていた。結局3人で演奏できるのが楽しいというバンドの喜びがあり、レンズの向こうに誰かがいる事実が笑みを加速させる。「ツアーファイナル、ZOZOマリンから開催しまーす!」「見とるか? 見とるか?」。声を張り上げ「JOY」からのスタート。〈吐き出すことも許されないで〉〈もう一度待ち望んで〉などの歌詞が心に刺さる。あらためて気づくのは、WANIMAの歌は、苦しい、きつい、どうにもならない状況下のほうがよほど効くという事実だった。久々だから無条件に楽しいが、同時にチクチクした痛みにも気付かされる感じ。まるで、雨の中で笑っている3人みたいだ。