『Acoustic for you.』インタビュー

南條愛乃が語る、今だからこそ歌を介して伝えたいメッセージ「“みんなに”というよりは“あなたに”届けたい」

『Acoustic for you.』というタイトルに込めた思い

ーー今回、アルバムのアートワークも非常に印象的です。この煌びやかなイメージにはどういう思いが込められているんでしょうか?

南條:今回はアコースティックアレンジアルバムなので、アコースティック楽器たちと一緒に写りたいなというのがまず最初にあって。いつものアルバムと比べてアナログ感が強くなるので、色味も派手というよりは煌びやかであっても温かみのある、ちょっとアンバーっぽい色味にして、床もちょっと木目が見えていて、無機質というよりは有機的なものに囲まれた感じがいいかなと思って、セットを組んでもらったんです。そして、一本芯のある人物像が欲しかったので、背景は可愛くおしゃれに作ってもらったんですけど、人物はメイクやヘアメイクもキリッとした感じに仕上げてもらって、衣装もシックめな色を使って、意思強めにそこにドンといる、そんなイメージで作り上げてもらいました。

ーーどうしてそういう人物像をイメージしたんですか?

南條:これは『Acoustic for you.』というタイトルにもつながってくるんですけど、こういう時期になってライブもイベントもできなくなってしまって、直接お客さんに届けられるものがアルバムだとしたら、今回は直接届けることを意識したいなと。「みんなに」というよりは「あなたに」届けたい気持ちだったので『Acoustic for you.』というタイトルにしたんですけど、それに合った芯のある人物像が今回のイメージなんです。

ーー前作『LIVE A LIFE』が日常的な調度品の中にラフな部屋着の南條さんが座っている、その構図含めて今作と対照的な作りだなと思いました。

南條:確かにそのとおりですね。去年の『LIVE A LIFE』はライブというものが気づいたら日常生活に溶け込んでいて、当たり前の存在になっていたというコンセプトなので、今のライブができなくなってしまった時期の作品『Acoustic for you.』と真逆のコンセプトですし。偶然ですけど、面白い対比ですね。

自粛明けは音楽を一緒にやるのも久しぶりでじんわり感動

ーーアルバム初回盤には昨年のバースデーライブを収めた映像作品が付属します。CDを聴いてからこの映像を観ることで、ひとつ完結するものがあるのかなと思いました。

南條:去年は特にアコースティック漬けな1年だったので、ここまでの流れをまとめるという意味ではこの作品で総括することができたのはよかったなと思います。特にバースデーライブは弦楽器と一緒にライブをするのも初めてだったし、アンコールでは日笠陽子ちゃんと茅野愛衣ちゃんがサプライズで出演してくれて、それもすごく楽しかった。そのあたりも楽しんでもらえたらいいなと思っています。

ーー1年前のライブになりますが、改めてどんなことが印象に残っていますか?

南條:ずっとライブハウスツアーをやっていて、バースデーライブはホールだったので、なんだか距離感が全然わからなくなってしまって(笑)。ライブハウスではいつもはすぐ目の前にファンの子たちがいて、後ろでは普通に喋っている声が聞こえるぐらいの距離にバンドさんがいたのが、それがちょっと離れてしまったことに違和感もありました。しかもホールだとイヤモニをしないとやりにくいというのもあって、同じアコースティックライブなのにライブハウスとホールでこんなに違うんだと、ちょっとビビってしまいました(笑)。

ーーその感じ、映像の序盤で伝わってきました(笑)。

南條:ふふふ(笑)。曲がというのは二の次で、私はそれがすごく印象に残っていることです。改めて勉強になりましたね。

ーースタジオ作品ではがっちり作り込んだぶん、ライブ映像ではバンドさんとのちょっとしたやり取りや楽器隊のバトルなどが楽しめるのも醍醐味ですよね。

南條:そこも楽しんでほしいですね。バンドさんとはレコーディングも一緒だったので、そのライブの空気感みたいなものが出ているといいなとは思うんですけど、みんなもレコーディングのときに会うのが久しぶりだったので、自粛明けにレコーディングが始まったときは人と会うのも久々、音楽を一緒にやるのも久しぶりでじんわり感動したんです。「バンドさんたちもそんな気持ちだったらいいな」と思いつつ2、3曲やってみたら、いつもの感じに戻っていて、「お前、あそこああだったろ!」みたいなにやりあって。どう頑張ってもこういう空気感になるんだなというのが、このCDにも入っているといいなと思います(笑)。

「頑張って!」をみんなに伝えるには、私は作品を作るしかない

ーー今回は期せずしてアコースティックアルバムを作ることになりましたが、ここから音楽の届け方にも変化が伴うと思います。南條さん自身はこれから、どんな形で音楽やメッセージを届けていきたいですか?

南條:私はこの状況によって、いろいろなことが初心に戻ったような気がしています。活動年数を重ねれば重ねるほど「どういう仕掛けをしたら楽しんでもらえるのか?」とか「どう派手に見せたらいいんだろう?」とか、そういうことも考えなきゃいけないなと思っていたんですけど、人に会えなくなったりファンの皆さんと交流できる機会がほぼなくなってしまったことで、根底にあるのは何を大事にしているかという気持ちだったり、人に対しての優しさだったり温かい気持ちだったり、音楽だけじゃないですけど、それに勝るものはないし、それを一番大事にしないと人間的にダメだと、この時期を通して実感したんです。それが今後の表現の仕方とか届け方にどう反映されるかは、まだ自分の中には現れていないですけど、毎日忙しくしていると忘れがちになってしまうことを振り返る時間も結構あったので、そういうことを改めて忘れずにしたいなと。私、わりとせっかちなんですけど(笑)、「そういう気持ちがまだ自分の中にも忘れずに残っていてよかった」と思ったので、そういうものを抽出していけたらいいなと考えています。

ーー特に音楽を作って発表している人間としては、それを受け取ってくれる人の大切さも改めて感じる期間でもあったのかなと。

南條:そうですね。SNSがあるといくらでも発信はできるし、言葉は伝えられるんですけど、でも「1対大勢」になると言葉の選び方も難しいし、受け取る人によっては違う解釈をされてしまうこともある。そこの言葉選びもすごく難しいなと思っていたので、やっぱり届けたい人にちゃんと届けるには自分が真面目に作品作りをするのが一番なんだなと実感しました。

ーー先ほど、今回の『Acoustic for you.』というアルバムは「『みんなに』というよりは『あなたに』届けたい」という思いを込めたとおっしゃっていましたが、そこも初心に戻ることに関係していますよね。

南條:まだファンの方が少なかった頃って、1対1は無理ですけど、小さいコミュニティの中でのやり取りをしやすかったんですけど、今はなかなか難しいですよね。SNSを見ていたり、サイン会とかファンの方と交流する機会を得て、ファンの方の中に医療関係で働いている方がいるというのも知っていたり、「この子はこういう仕事をしている」というのが結構頭の中に入っているんですけど、この時期に「頑張って!」と思っていてもなかなか言えないじゃないですか。もし私が「頑張って!」と特定の方に言ってしまうと、「なんで私には言ってくれないんだ?」みたいになるから、その「頑張って!」をみんなに伝えるには、私は作品を作るしかないんだなと。今はそういう形で持ちつ持たれつ活動していけたらいいなと思っています。

■リリース情報
『Acoustic for you.』
9月2日(水)リリース
初回限定盤<CD+特典Blu-ray+フォトブック>
¥5,500
初回限定盤<CD+特典DVD+フォトブック>
¥5,500
通常盤<CD>
¥3,000
<CD収録内容>
1.believe in myself
2.黄昏のスタアライト
3.今日もいい天気だよ
4.サクラタイマー
5.リトル・メモリー
6.一切は物語
7.OTO
8.サヨナラの惑星
9.君が笑む夕暮れ
10.0-未来-
11.スキップトラベル
12.and I

<初回限定盤特典>
特典映像ディスク
・believe in myself -acoustic arrange making MV- 
・南條愛乃 Birthday Acoustic Live 2019 < TOKYO DOME CITY HALL >2019.7.7(sun)
・撮り下ろしフォトブック 

■配信情報
アルバム発売記念特番
animelo mix presents『南條さん、ニコ生する!!!』配信
出演者:南條愛乃
放送日時:2020年9月6日(日)
20:30~ 映像パート
21:00~ 本人出演パート (予定)

番組ページ
ニコニコ動画
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■関連リンク
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オフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」
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公式Instagram

ライブ写真=『南條愛乃 Birthday Acoustic Live 2019』より

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