『Marika’s Labo』Vol.1(前編)

伊藤万理華がパソコン音楽クラブに聞く、表現に対する思い 新連載『Marika’s Labo』スタート

 伊藤万理華が様々なジャンルのアーティスト/クリエイターに会いに行き、これまでのキャリアやクリエイティブについて聞く<インタビュー>と実際に彼女が創作に触れる<体験>を行なう連載企画『Marika’s Labo』がスタート。第1回は伊藤が出演した『MOOSIC LAB 2018』オープニング映像の音楽を担当したパソコン音楽クラブ。前編は、それぞれの活動に対する印象や、表現に対する思いなどを語り合うインタビューをお届けする。後編では、実際にパソコン音楽クラブが普段使用している機材を用いた体験の模様をレポートする。(編集部)【記事最後に“オリジナル動画”と“読者プレゼント”あり】

共通点は“周囲と協力して作ること”

伊藤万理華(以下、伊藤):初めまして。この連載は私が気になっているクリエイターさんなどにお会いして知識を深めるという企画です。初回はパソコン音楽クラブさんにお願いすることになりました。

西山:光栄です。びっくりしました。

伊藤:パソコン音楽クラブさんは2年前に私が出演した『MOOSIC LAB 2018』のオープニング映像の音楽を担当してくださって。私の兄がすごく音楽が好きということもあり、色々教えてもらって聴くようになりました。同世代でこういった音楽を作る方にお話を聞いたことがなかったから、すごく興味を持っていたんです。

音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB 2018」予告編!!!!!!!!!!!!

柴田:『MOOSIC LAB 2018』で使われたのは、元々自分たちのアルバムのために作っていた曲でした。

伊藤:それは監督さん(suzzken)からオファーがあったんですか?

西山:そうです。僕らのことを良く知ってくれている人が制作に携わっていて、僕らの曲が合うんじゃないかということで使ってもらえることになって。自分たちはこの音楽がそういう風に使われて、しかも伊藤さんが出てくださるなんて思っていなかったので、すごくびっくりしました。それに、伊藤さんとこうやってお話するなんて思っていなかったので、めちゃくちゃ嬉しいです。

伊藤:あの映像の撮影は振り付けが決まっていなくて、音楽に合わせて好きなように踊ってくださいと言われて。すごく楽しい撮影でした。その時はお会いできなかったのですが、私の知り合いの高田静流ちゃんがパソコン音楽クラブさんの「reiji no machi」のMVに出演されていたり、なんだかすごく身近で。いずれはどこかで会えるのかなと思っていたので、今回対談できるのは嬉しいです。私はクラブに全然馴染みがないのですが、クラブミュージックを聴き始めたきっかけがパソコン音楽クラブさんで。きっと、私みたいな人ってたくさんいるんじゃないかなと思うんです。

パソコン音楽クラブ − reiji no machi

西山:そうだとしたら嬉しいです。

伊藤:パソコン音楽クラブさんの音楽って色んな要素が入っていると思うんですけど、ご自身ではどういうジャンルだと思っていらっしゃいますか?

西山:一つの言葉でくくるのは難しいんですけど、ダンスミュージックでしょうか。クラブミュージック的な手法を使っている曲が多いのかなと思います。

柴田:そうですね。すごく広い言い方をすると、電子音楽かな。その中でテクノと言われるものだったり、より細かいジャンルがあるんですけど。クラブって、どんな音楽がかかっても全部受け入れてくれる場所なので、一つに括れない音楽、という意味でクラブミュージックと言うのかなと思います。

伊藤:お二人はそもそもクラブミュージックを作ろう、と音楽を始めたわけではないんですか?

西山:そうですね、そういうわけではなくて。でも、作っている音楽をクラブ以外でかけるのはなんだか恥ずかしいんですよ(笑)。ライブでギターを弾いたりドラムを叩いたりして、すごい熱量のある人たちの次に、パソコンから音を出すとなると、良い悪いじゃなくて温度感や内容にギャップがあって。そういう意味ではクラブで一緒にやらせてもらうのが、しっくりきたって感じでしたね。

伊藤:ライブの映像も観ましたが、そもそもセットリストってあるんですか? それとも、何を流すかその場で決めているんですか?

西山:あらかじめ今日のイベントはこういう感じっぽいな、と自分たちの曲を先にパソコンの中である程度準備しています。

伊藤:あとはその場に応じて、というわけですね。

西山:そうです。だから準備の方が大変です。自分たちの曲をちょっとずつアレンジを変えたり、音を繋ぎ合わせたりして、そのイベントにあったセットリストにする感じですね。ステージに出て、盛り上げたり、ちょっとゆったりさせたり、変化を楽しんでもらえたらな、と。

伊藤:ステージから観客の盛り上がる様子を見て流す曲を変えたりもするんですか?

柴田:ベースになる音源を事前に作っておいて、盛り上がりや落ち着きを作っていく、みたいなことはしますね。

伊藤:私はもともとこういう音楽に馴染みがなくて、パソコン音楽クラブさんを聴き始めて、音楽を作れるアプリを試しに入れてやってみたんですけど、全然うまくいかなくて……(笑)。アプリとかではあまり作らないですか?

西山:スマホのアプリは使わないですけど、パソコンではやっていますね。

柴田:でも、今はスマホもすごいので、パソコンとは画面の大きさくらいの違いしかないときもあると思います。もっと若い世代は、スマホだけで複雑な曲を作っている人もいるので。

伊藤:今使っているような機械を知ったのは、お互いもともとそういう趣味があったからですか? どうやって活動がスタートしたんでしょう?

西山:パソコン音楽クラブを結成したのが大学生のころ、2015年の暮れでした。

柴田:そんな前か。

西山:今から5年以上前ですね。一緒にバンドをやっていたんですけど、その頃は僕は普通にギター、柴田はキーボードで、ポップな曲をやっていて。

柴田:音楽友達みたいな感じだったんですけど、毎日電話していて、ある日機材の話になって、2、3000円の機材が中古ショップで売っていたんですよ。電化製品のジャンク品みたいな。それを試しに一緒に買って曲を作ろうよ、と。お互い聴かせ合うだけだと交換日記みたいじゃないですか。だからネットにあげて、お互いのを聴ける状態にしようっていうノリで始まりました。

西山:ネットにあげるときはSoundCloudを使ってたんですよ。アカウント名をつけなきゃいけなくて、「パソコンで音楽を作ったから、パソコン音楽クラブでいいかな」って思って付けたら、5年も続くことになりました(笑)。

伊藤:すごいですね!  結成してユニット名をこれにしよう、じゃなくて、趣味みたいな感じで始まったんですか。

西山:最初はすごくゆるくて、部活みたいな感じだから“クラブ”なんですよね。

柴田:最初はライブすらやる予定はなかったんで。

伊藤:ライブは誘われて始めたんですか?

西山:音源を聴いてくれたイベンターの人が声をかけてくれて、「いっちょやってみるか」と思って。それで続いているような感じです。

編集部:クラブ、一度も行ったことないですか?

伊藤:行ったことがないんです。来ている方々はどういう感じですか? 踊りに来ているんですか?

西山:男女の出会いを楽しもうとしている人たちもいると思うし、純粋に音楽を聴きに来てダンスしようという人もいると思います。僕がクラブで一番いいなと思ったのは、別になにもしなくて良いことで。悪いことではないんですけど、ライブハウスにライブを観に行くとなると、しっかり音楽をしている人を観て、音楽に聴き入る感じですよね。でも、クラブってずっとステージを観なくても良くて。その辺で飲み物を飲みながら人と喋るような時間の使い方ができるのは、自分たちはしっくりくるなって。楽しみ方は色々で、来る人によってもそれぞれ違うし、クラブによってもどういう楽しみ方を提供しようとしているかも違うと思います。

西山:伊藤さんに対して、アイドルのイメージが強かったんですけど、改めてミュージックビデオや個展の映像を見たら、自分で表現をしようという気持ちや姿勢が強い方なのかな、と。自分で作っていきたい、というのはずっと思っていたんですか?

伊藤:自分で何かプロデュースしようとか、作ろうという意識が最初からあったわけではなく、周りの環境も影響しているかもしれないです。親がデザイナーなので、グラフィックデザインや音楽が身近にありました。昔から自分が表に出るということよりは、モノづくりをしている側の人に対してすごく興味がありました。そんな中、アイドルを経験して、自分が表に出る側になって。何かを作れる機会をいただけた時に自分一人では作れないので、馴染みのあるデザイナーさんやクリエイターさんにお願いしてその時の自分の心情や表現が一つの作品になるといいなという気持ちがあって色々やってみています。だから自分だけで何かを作り上げるというより、誰かの力を借りて一緒にやることが多いです。

伊藤万理華

西山:でも、僕らも自分たちだけではできないよね。

柴田:そうですね。アルバムとか、まとまった作品として何か一つのアイデアを音楽にするって自分たちだけじゃできないですね。色々な人と一緒にやるのは面白いです。

伊藤:確かに。それは一緒なんですね。良かった(笑)!

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