米津玄師のライブは複合的なパフォーマンス発表の場に 『STRAY SHEEP』付属映像で堪能する貴重なステージ
米津玄師の新作『STRAY SHEEP』が発売され、各種サブスクリプションサービスでの配信も解禁。瞬く間にチャートを席巻するなど”米津旋風”が吹き荒れている。アルバムの評価も高く、CD不況のこの時代に出荷枚数はすでにミリオンを突破したというのだから驚きだ。
本作で注目なのは、その楽曲もさることながら、昨年開催されたツアー『米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃』の模様が収録されたDVD/Blu-rayが付属している点である。ライブ映像が収録されるのは、ティザー映像を除けば2018年のシングル『Lemon』以来で、いまだライブ映像作品を単体でリリースしていない彼の貴重なステージパフォーマンスを、ライブ一本ほぼ丸々じっくりと堪能することができるのだ。
ここ数年で彼を取り巻く環境は激変している。それについては彼も「バケツ一杯の水を持ちながら山火事を呆然と眺めているよう」と形容していたが、その急激な変化を最もよく感じられるのがライブだ。もちろん動員や会場の規模もそうだが、それに伴って拡張した演出面であったり、楽曲の見せ方の面でも大きな飛躍が確認できる。
たとえば、『Lemon』に収録された2018年1月の武道館公演では、ドーム状に骨格が組み立てられたステージの床面にまでスクリーンが施されていて、その中で時おり彼特有の身体表現を見せつつも、あくまで演奏を中心に、いわゆるバンドパフォーマンスを見せていくスタイルだった。
一方で、今回収録された幕張メッセ公演は楽曲によって演奏中心のときもあれば、がっつり演出を見せていく曲もある。特に後者の作り込み方は圧巻で、映像作品として残っていることが有難い。
ステージは客席に向かって逆V字状にせり出していて、武道館公演では基本的に舞台で歌うだけだった「LOSER」や「砂の惑星」も、前に尖った花道を進んでみたり、横に広いステージを練り歩くなど、会場の広さを活かした動きを見せていく。ギターを担いだ「飛燕」以降は3つの巨大なバックスクリーンが効果的に機能。映し出されるアニメーションもかなりこだわっている。
そして最も注目すべきは、天井から吊るされた20メートル以上あるV字の大型構造物である。筆者もこの公演には足を運んでいたが、開演前からその異様な存在感に圧倒されていたのを覚えている(まさか動くとは思わなかった)。それがライブ中盤の「fogbound」で本格的に駆動し始める。ゆっくりと下へ降りてきて煌々と光り出し、まさに“脊椎”のような造形へと変形。