米津玄師、サブスク解禁でバイラルチャート独占 思わず惹かれる言葉のフックと飽きさせないタイトな楽曲を分析

参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(8月6日公開:7月30日~8月5日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:米津玄師「Lemon」
2位:米津玄師「馬と鹿」
3位:米津玄師「パプリカ」
4位:米津玄師「Flamingo」
5位:米津玄師「海の幽霊」
6位:米津玄師「LOSER」
7位:米津玄師「ピースサイン」
8位:Tani Yuuki「Myra」
9位:米津玄師「TEENAGE RIOT」
10位:米津玄師「ゴーゴー幽霊船」

STRAY SHEEP
米津玄師『STRAY SHEEP』

 今週のバイラルチャートは“歴史が動いた”と言えるのではないだろうか。チャートが米津玄師の曲で埋め尽くされた。ハチ名義の作品も含めて、50位以内に40曲もランクインしたのである。ニューアルバム『STRAY SHEEP』のリリースに合わせた全曲サブスク解禁についてはトップニュースにもなっていたので、多くの曲がランクインすると想像していたが、これほどまでとは思わなかった。

 この1~2年の間に、ライブ動員がドームクラスのビックアーティストのサブスク解禁が相次いだ。もちろん解禁後は上位に何曲もランクインしていたが、ここまで一色になることはなかった。YouTube再生回数1億回越えの曲が何曲もあったり、「Lemon」が2年連続で「Billboard Japan Hot 100」年間チャート首位を記録したり。米津が実績として叩き出してきた数字は、いつでも桁違いだった。その桁違いな記録に、今週のバイラルチャートの結果もきっと仲間入りすることだろう。

 さて、50位以内にランクインした米津の楽曲を見ていこう。1位~5位を独占しているのは、誰もが知るヒット曲ばかりだ。これは、普段他のアーティストやアイドルの曲を聴いている層が、米津の“あの曲”を聴きたくて再生したからではないかと思う。つまりこの結果は、それだけ彼の曲が世の中で何度も鳴り響き、多くの人の琴線に触れ、それぞれの中に爪痕を残してきた証拠である。

 次に15位以降を注目したい。彼の存在感を音楽ファンの中で不動のものにした『BOOTLEG』(2017年)よりも前のアルバム、さらにシングルのカップリング曲、ハチ名義時代の楽曲が、まんべんなくランクインしている。これは、すでに米津玄師の楽曲に魅了された層が、過去作品を一気に掘り起こしているからだろう。そして、この“米津ディグ現象”にはある傾向があると思う。15位~35位くらいまでの楽曲タイトルにいくつかパターンがあるのだ。「Lemon」や「パプリカ」ような、少し愛嬌あるシンプルな単語(しかも食べ物)のパターン。「海の幽霊」のようにホラー感が匂う物語を彷彿させるパターン。「馬と鹿」のように字面のインパクトでイマジネーションを刺激するパターン。「LOSER」や「TEENAGE RIOT」のように、青さを残してメッセージ性を予感させるパターン。「感電」や「春雷」のように、無骨な字面と語感の柔らかさが同居した、言語チョイスの才能が光るパターン。細かく見ていけば、もっとあるのだろうが、分析はこれぐらいにしておきたい。何が言いたいのかというと、ヒット曲のタイトルと同様の趣を持つタイトルの旧曲が目立つということ。ここに、リスナーが直感で操作できるサブスクならではの傾向が表れていると思う。フィジカルで“ジャケ買い”するような感覚で、サブスクでは“タイトル買い(=再生)”しているのではないか、と。

米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea
米津玄師 MV「TEENAGE RIOT」
米津玄師 MV「春雷」Shunrai

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