CAPSULE、サブスク解禁を機に振り返る音楽性 オリエンタルから実験的なダンストラックまで予想を裏切る進化の変遷

 2007年の『Sugarless GiRL』と『FLASH BACK』、そして2008年の『MORE! MORE! MORE!』は、それまでのエレクトロ路線をさらに推進。これらのアルバムには、「Sugarless GiRL」や「FLASH BACK」「MUSiXXX」「more more more」「JUMPER」など不動の人気曲が散りばめられている。この時期は、例えばMEGの『BEAM』(2007年)や、Perfumeの『GAME』(2008年)『⊿』(2009年)を手がけるなど、中田のプロデュースワークも多忙を極めるようになってくる。個人的な印象では、中田が自分のやりたいことを、やりたいように試せる「実験所」がCAPSULEであり、そこでの成果を「ポップス」のフォーマットに落とし込んだのが、Perfumeを始めとするプロデュース作品、という関係性が成り立っているのではないかと思っている。実際、それぞれを聴き比べてみると、フレーズや音色、コード進行、メロディラインなど様々な要素が響き合っているのだ。

Sugarless GiRL / capsule
Starry Sky
JUMPER / capsule

 中田がプロデュースを手掛けた『LIAR GAME 2 ~シーズン2 & 劇場版 オリジナルサウンドトラック』と同時にリリースされた、通算11枚目『PLAYER』(2010年)を経て、『WORLD OF FANTASY』(2011年)、そして『STEREO WORXXX』(2012年)では、こしじまの歌うメロディが、アンサンブルの中のフレーズとしてさらに抽象度を帯びてきている。例えば『STEREO WORXXX』収録の「Transparent」など、かなり風変わりなコード進行で、「歌があるからこそ、なんとなく最後まで聴かせる。そういう意味で、こしじまさんの役割はデカい」と中田はインタビューで述べているくらい(参考:各種プロデュース・ワークも引き続き絶好調のなか、中田ヤスタカのいまのモードを全開にした刺激的なアルバムが早くも到着です!)、掴みどころのない楽曲に仕上がっている。とても「ポップ」とは言い難い、それでいて強烈な印象を残す曲だ(おそらくこれをギリギリ「ポップス」として落とし込んだのが、Perfumeの「スパイス」ではないだろうか)。こしじまの歌声「ありき」で作られながらも、決して「歌モノ」に帰着させないところがCAPSULEのCAPSULEたる所以だ。

中田ヤスタカ「LIAR GAME - Season2 edit」
CAPSULE「Transparent」

 2013年の『CAPS LOCK』は、レーベルを<contemode>から<unBORDE>へと移籍して作られた初のアルバム。本作からユニット名も、小文字から大文字の「CAPSULE」へと変更され、それにより新たに作られたロゴマークがアートワークとして採用されている。プロデュースワークで多忙な中、「CAPSULEの曲しか作らない期間」を設け、全曲を同時進行で完成させた『CAPS LOCK』は、これまで以上に統一感のある作品となっている。水の音や時計の針の音などを取り入れたり(「ESC」)、機械の作動音をループさせたり(「12345678」)、アンビエントミュージック的なアプローチの曲もあれば、スティーヴ・ライヒにも通じるようなミニマルミュージックっぽい曲もある。

CAPSULE「ESC」
CAPSULE「12345678」

 続く『WAVE RUNNER』(2015年)は、現時点でのCAPSULEの最新作だが、アートワークを見ると『CAPS LOCK』と対をなすアルバムのようだ。実際、中田自身も「前作がインドアな作品だとすると、今作はもっと開放的な作品になっていると思います」とインタビューで答えている(参考:CAPSULE『WAVE RUNNER』インタビュー)。いわゆるEDMに真正面から取り組みつつも、ダンスに特化した「機能的」なものではなく、家でじっくり聴き込むことにも耐えうるような、ディティールにこだわり抜いた仕上がりなのが中田らしい。なお、このアルバムにはこしじまが珍しく情感たっぷりに歌い上げる楽曲「Dreamin' Boy」も収録されていて、それも聴きどころの一つと言えよう。

Dreamin' Boy

 さて、来るべきCAPSULEのニューアルバムは一体どのような内容なのだろうか。冒頭でも紹介したように、中田は以前のインタビューで自分のことを「読み切りマンガ家」に例えていた。きっとこれまでと同じように我々の予想を裏切り、期待を遥かに超える作品を届けてくれるに違いない。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。ブログFacebookTwitter

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