シングル「We’ll be fine」インタビュー

ReNが語る、「We’ll be fine」言葉に込めた思い 「少しでも希望を見出す気持ちが大切」

 シンガーソングライターのReNが、ニューシングル「We’ll be fine」を6月12日に急遽デジタルリリースした。

 この曲は、新型コロナウイルスが世界的に流行する中、先の見えない状況に不安を抱く人々に向けて送るメッセージソング。〈大丈夫のひとことで 全てうまくいく気がしたよ〉、〈You’ll be fine I’ll be fine Everything is alright 必ず明日は来るから〉と呼びかけるポジティブな歌詞には、こんな状況だからこそ人と人とのつながりや思いやり、寄り添う言葉の必要性を訴えるReNの気持ちが込められている。多くのアーティストが作品のリリースを先送りする中、あえてこの時期にファンへ届けることを決めたReN。そこに至るまでには、一体どのような気持ちの動きがあったのだろうか。

 ツアーファイナルがコロナにより延期になるも、ライブ配信などを通じて積極的にファンとコミュニケーションを取り続けてきたReNに、楽曲制作のエピソードはもちろん自粛期間中の過ごし方、インターネットやSNS上で起きている「対立」や「分断」についてなど、様々なトピックについてたっぷりと話してもらった。(黒田隆憲)

自分のこの状況を、分からないなりに曲にしてみたい 

ーーまずは今回、新曲「We’ll be fine」を急遽リリースすることになった経緯から聞かせてもらえますか?

ReN:昨年スタートした『HURRICANE』ツアーを、ファンのみんなと本当にいい形で作り上げてきて。3月1日のファイナル公演が総仕上げになるはずだったんですけど、それがコロナによって9月まで延期になってしまったことは、喩えるなら富士山の9合目まで登ったのに引き返してくる気分というか。その喪失感はとても大きかったです。

 ただ、その日のためにスケジュールを確保して待っていてくれた人たちが大勢いるわけだし、もちろん僕自身もその日に向けてずっと頑張ってきたわけだから、何かケジメになるようなことがしたくて。

ーーそれが、ファイナル公演を行うはずだった日の配信ライブだったわけですね。

ReN:はい。ネット上では会場のキャパを超える人たちがアクセスしてくれて。本当に盛り上がって楽しかったんですけど、それでもやっぱり「ライブは生が一番いいよな」と思ってしまいましたね。客席にいるみんなの顔を思い出しながら、「歌えることのありがたさ」みたいなものを実感しましたし。

ーーただ、そのあとコロナの状況はさらに深刻になっていきました。

ReN:緊急事態宣言が発動され、みんなが外に出られなくなり、仕事も思うように進められなくなって。僕自身も正直、思考が追いつかなくなったというか。もちろん、そんな簡単に「答え」を出せるような状況ではなかったけど、「一体どうしたらいいんだろう」「この状況を、どう考えたらいいんだろう?」と、家の中で悶々とした日々を送っていました。

 元々、ツアーが終わったこの期間は制作に充てていたので、少しずつ曲作りを進めたり、物事をゆっくり考えたりしていましたが、そのうちに「ひとまずは自分のこの状況を、分からないなら分からないなりに曲にしてみたい」と思うようになって。それまで進めていた曲作りを一旦ストップして、新たに取り掛かったのが今回の曲でした。それが5月の半ばくらいの話ですね。

ーータイトルの「We’ll be fine」は、決して能天気に「大丈夫だよ」と言っているわけではなくて。ブルースやレゲエの曲で、辛い時こそ「It’s gonna be alright」と歌っているのに近いというか。先が見えない状況の中、不安に苛まれている人に優しく寄り添う言葉のように聞こえました。

ReN:「大丈夫」という言葉の力を信じたかったというか。捉え方によっては軽い言葉でもあるんですけど、自分自身がそういう言葉をかけてもらって救われたこともあるし、僕自身も誰かに同じ言葉をかけたこともあって。理論立てた「これこれこうだから、今はこういう状況だ」みたいな言葉よりも、答えがない不安な状況だからこそ、それをみんなで共有しつつ、励まし合えるような言葉が求められているんじゃないかなと。「We’ll be fine」を聴いたり口ずさんでもらったりすることによって、「そうか、大丈夫なのかもしれないな」と思ってもらいたかったんですよね。

ーー実際のレコーディングはどのように行いましたか?

ReN:まず僕が曲を作り、それを前回のEP『Fallin’』で一緒に作業をした、デイブというLAのプロデューサーにすぐに聞かせて、アレンジを詰めていきました。そのあとは、必要最小限のクルーとスタジオに入って歌録りを行いましたね。

ーーこの厳しい状況の中、そうやってポジティブに物事を進めていくモチベーションはどのように生み出していったのでしょうか。

ReN:いや、全然ポジティブではなかったんですよ。だからこそ、ポジティブな曲が書きたいと思ったのかもしれない。僕が今まで歌ってきたことは、大抵がパーソナルなことや等身大のことで、それをメロディに乗せて、みんなと共有してきたわけだけど、今回はもっと普遍的なことを歌っているんですね。さっきも言ったように、それは「結論を出す」ということではなくて、例えば家にいて、そこに音楽が鳴っているだけで一人じゃない気持ちになることってあるじゃないですか。今だからこそ、そういう楽曲が求められていると思ったんです。とにかくメロディも言葉も、自分の中から出てきたシンプルで飾り気のないモノを、そのまま並べてみることにしました。

ーーちなみに自粛期間中、制作以外のプライベートな時間は何をしていました?

ReN:ツアー中はやりたくても出来なかったことが溜まっていたし、家の中もずっと掃除ができずに汚かったんですよ(笑)。最初はずっと家にいることも「つまんねえなあ」と思ってたんですけど、「今しか出来ないことをやろう」と思って家中をしっかり掃除してみたり、暇を持て余してゲームに興じてみたり。とにかく、とことん「暇な時間」を味わい尽くしましたね。

 でも、そこで生まれてきた感情は「虚しさ」だったんです。どんなに時間があって、好きなことに没頭できたとしても、人に会えない寂しさは大きくて。それは、自分にとって必要なものと、必要ではないものをよりはっきりさせてくれた経験でもありました。そういう意味では「学び」も多かったというか。家の中にいながら頭の中はフル回転だったと思う。それはきっとみんなも同じなんじゃないかな。

ーー「We’ll be fine」のMVでも、部屋でゲームをやったり掃除をしたり、コーヒーを入れたりしているReNさんの様子が映し出されていますよね。友達とリモート飲みで盛り上がりつつも、どこか寂しい様子なども描かれています。

ReN:そうなんですよ。リモート飲みの時とか、PCの画面越しだと普段よりも頑張っちゃう自分がいたりして(笑)。その分、終わった後の虚しさが押し寄せてくる。僕があのMVで表現したかったのは、一人きりの生活の中で、人はやっぱり誰かとのコネクトを求めているし、それがないと寂しいし虚しいんだなということ。それでも一人で楽しむ方法を模索していくという、一人の人間の「生態」を映像に納めてみたんですよね(笑)。

ReN 「We’ll be fine」MV

ーー実際に映画を観たり、本を読んだりする時間は増えましたか?

ReN:映画はたくさん観ました。元々ドキュメンタリーが好きなので、『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ』とか。最近だとトム・ハンクス主演の『キャプテン・フィリップス』もよかったです。あと、クリント・イーストウッドの映画が僕は本当に好きで。彼の撮る作品は、例えば戦争映画でも敵味方両方の視点が必ず描かれるんですよ。アメリカ社会の人種的マイノリティを描いた『グラン・トリノ』もそうですね。なぜ、この主人公はこんな差別主義者になってしまったのか、それには実はこういう過去があって……みたいな。背景をしっかり描き、それぞれの「正義」をちゃんと描きこんでくれるからこそ信頼できるんです。

 あ、ふざけた映画も大好きですよ(笑)。『FはFamilyのF』(Netflixで配信中のアニメ)も最近観てすごく面白かったです。

ーー先日ラジオでお話しされていた、「段ボール映画館」がとても気になります(笑)。

ReN:あははは。段ボール映画館オススメですよ!(笑)。まず、頭がすっぽり入るくらいの大きさの段ボールを、被れるようにカッターでくり抜くんですね。その中にiPadを入れて映画を観るんです。最初の10分くらいは「俺、何やってるんだろう」という気持ちになるんですけど(笑)、気がつけば映画館で観ているかのように没頭できる。しかも、段ボールの中に人のフィギュアとか入れておくと、観客と一緒に観ている気にもなれるんですよ。ちなみに僕は、『トイ・ストーリー』に出てくるリトルアーミーメンを並べて一緒に観ています。

ーーそんな凝ったことまでしているんですか!(笑)。

ReN:昔、ガシャポンで「映画館の椅子」シリーズがあったんですけど、強者はそれを並べておくらしいです。さらに非常出口のマークも作っておく(笑)。画面の比率とかも計算して、TOHOシネマのスクリーンを再現する人までいるんですよ。

ーーはははは、すごい!

ReN:僕はそこまでやってないですけど、楽しかったですねえ。

ーー他にはどんなことをしていましたか?

ReN:音楽仲間とリモートセッションもしましたね。タイムラグがあるから同時には出来ないので、データのやり取りで音源を作るなどしました。ただ、やっぱりセッションの醍醐味は削られるし、直接一つの空間に集まって音を出すのは単に「楽しい」だけじゃなくて、必要なことだなって改めて思います。