高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第17回

Mrs. GREEN APPLE、フレデリック、あいみょん……横浜アリーナで見せた三者三様のパフォーマンス

 最後は7月8日にリリースされたあいみょんの『AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY IN YOKOHAMA ARENA』。彼女自身最大規模となったワンマンツアーの本公演ファイナル、2019年12月18日の横浜アリーナの模様がノーカットで収録されている。 “あいみょん現象”と言っても過言ではないくらいの人気を誇るアーティストであり、このツアーも追加公演含む26公演がソールドアウトとなった、そういう意味でも待望の映像作品だ。

あいみょん – 今夜このまま 【AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY- IN YOKOHAMA ARENA】
あいみょん – 君はロックを聴かない 【AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY- IN YOKOHAMA ARENA】

 とは言え、ここに収められている彼女の姿は、限りなく素のままのように感じる。「あ~、間違えちゃった!」とポロっと叫んでしまうところ、自身を指し「あいみょんです!」とアピールするところ、だいぶ後方のオーディエンスとも会話するようなところからは、きっと彼女のこういうスタンスはこれからも変わらないんだろうな、と思えるのだ。それでいて、ひとたび演奏がはじまり、伸びやかでブレのない歌と、身体に張り付いたように自然なギターで、大観衆を惹きつけていく様子は、やはり只者ではない感に溢れている。ただ、そのすべては地続きに感じられるのだ。もっと言えば、生も死も性も家族も友達も歌う彼女の楽曲は、バラエティに富んでいるというよりは、全部あるじゃん、人間だものと物語っているように思える。裏表のない彼女の世界観は、ライブでより明白になるということなのだろう。

あいみょん – ハルノヒ 【AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY- IN YOKOHAMA ARENA】

 とは言え、この春に予定されていた彼女のツアーは、コロナウイルスの影響で見送りとなった。改めて思ったのは、アーティストの本質を紐解くうえでライブがいかに大切かということ、そして音響や照明や演出が、その大きな手掛かりになるということ。さらに、ライブにおけるアーティストとスタッフの相互作用によって、様々なテクノロジーが進化してきたところも大いにあると思ったのだ。今それらは、配信や映像に場所を移して新たな進化を遂げているという、たくましい事実もある。しかし、いずれはまた、これらの作品に映し出されているように、生で進化を堪能できる日がくることも待ち望まずにはいられない。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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