『芽ぐみの雨』インタビュー

やなぎなぎに聞く、『俺ガイル』登場人物の“未来”を願う「芽ぐみの雨」制作秘話「完結してもキャラクターの物語は続いていく」

自分たちで上げたハードルをまた超えていかねば……

ユキトキ

ーーその第1期のオープニングテーマ「ユキトキ」は、当時どのようなイメージで作られましたか?

やなぎ:「ユキトキ」はタイトルに集約されていますが、雪解けをイメージして書いた曲になります。作中ではいろんなキャラクターたちがそれぞれに悩んでいますけど、みんなまずは壁を壊して、心を開いて飛び出していきたい気持ちがあると感じたんです。それを、自然の雪解けみたいに誰かの助けを待つのではなく、自分で雪を溶かして、誰かの手を取っていく、ということを意識して書いた歌詞でした。

ーー「雪」という言葉からは、本作のメインヒロインの一人、雪ノ下雪乃のイメージも浮かびますが、それも意図してのことでしょうか?

やなぎ:そうですね。作品のテーマ曲を作るときはいつも、特定のキャラクターだけの曲にはしたくないと思っていますけど、この曲では「雪」というワードを積極的に取り入れて、作品とのリンクを図ろうという部分はありました。

ーーまた、なぎさんはこの楽曲で初めて北川勝利さんに楽曲提供を受けましたが、北川さんとご一緒しようと思ったきっかけは?

やなぎ:北川さんの曲は私もずっと聴いていたのですが、その頃、北川さんはアニメの楽曲もたくさん手がけられるようになっていて、北川さんがもともとやられている渋谷系のサウンドと、それがアニメの曲になったときの独特の爽やかさが、すごくうまく融合しているなあと感じていたんです。お洒落だけど、アニメにもちゃんと寄り添ったポップさがあって。『俺ガイル』は学園ものの作品ということで、どこか間違った部分はありますけど、青春の要素もちゃんとあるので、北川さんの持つサウンドがオープニングとしてしっくりくるのではないかと思って、自分からお願いした経緯がありますね。

春擬き

ーー2015年放送のTVアニメ第2期『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』では、引き続き北川さんとのタッグで「春擬き」をオープニングテーマとして制作されました。

やなぎ:2期では、キャラクターそれぞれがどこに辿り着きたいのか? という、物語の核の部分がちょっとずつ見えてきたので、「ユキトキ」の流れに沿いつつも、物語に寄り添うものとして作りました。歌詞にも取り込みましたけど、「本物」というテーマが物語の中心になりそうだと感じたので、その部分から広げていきました。「本物って一体なんだろう?」とか「本物って本当にあるのか? 今持っているものは偽物なのか?」っていう。

ーー作中の重要なシーンで八幡が吐露する「本物がほしい」という願いとシンクロさせたわけですね。だからこそ曲名も「春擬き」になっていて。

やなぎ:「本物の春は一体どこに?」という感じにしました。

ーーサウンド的には、「ユキトキ」の爽やかな雰囲気を継承しつつ、よりロック色が強まって、ドライブ感のある曲調になりました。

やなぎ:「ユキトキ」が『俺ガイル』のファンの方にもすごく受け入れていただきましたし、私の楽曲を普段聴いてくださっている方にも好評だったので、それに続く曲ということで、「ユキトキ」以上のものを作りたい! という気持ちが、私にも北川さんにも強くあって。なので「春擬き」はドライブ感だとかエモーショナルな部分をプラスしてもらいました。

ーーその意味では、今回の「芽ぐみの雨」は、前の2曲をさらに越えなくてはいけないという、ある種のプレッシャーもあったのでは?

やなぎ:自分たちで上げたハードルをまた超えていかねば……というのはありましたね(笑)。「春擬き」を作った時点では、アニメの3期が制作されるのかもわからない状態だったので、結果的に3部作みたいになりましたけど、今回が完結編になるということで、結構悩みながら作りました。

「芽ぐみの雨」は登場人物たちの完結後の“未来”をイメージ

やなぎなぎ/芽ぐみの雨(MV short ver.)

ーー「芽ぐみの雨」は、その前2曲を踏まえつつ、どういうとっかかりで作り始めたのでしょうか?

やなぎ:歌詞に関しては、私にとって『俺ガイル』は、自分のメジャーデビュー後の活動の軸になっている部分があって、その物語がこれで終わってしまうということで、自分の中で「完結」というワードがズーンときたんですよね。なのでそこから「物語が終わってしまうならば……」ということで、世界を広げていきました。

ーーこの曲では「物語が終わったその先の話」がテーマになっていますが、例えば「ユキトキ」が雪ノ下雪乃、「春擬き」が比企谷八幡をモチーフにした楽曲だとしたら、この「芽ぐみの雨」はもう一人のメインヒロイン・由比ヶ浜結衣をイメージした部分もあるのかなと思いまして。

やなぎ:うーん……もちろんそういう部分もありますけど、物語の中には、結衣だけではなく、他のヒロインやキャラクターもたくさん登場しているので、自分の中ではその子たちの気持ちも取り込んで書いたつもりではあって。やっぱり物語に登場する全員分のハッピーエンドな結末というのは、どうしても見ることができないので、その意味では、物語はここで終わってしまいますけど、もしこの子たちの人生がその後に続いていくとしたら? ということは、今回の歌詞ですごく考えたところです。

ーー『俺ガイル』の全ての登場人物たちの未来に捧げる歌、でもあると。

やなぎ:そうですね。物語が終わった時点では、もしかしたらその子が望む結末ではなかったかもしれないけど、もしそこから続いていくとしたら、その頃の思い出とかも笑って話せるようになったりして、自分は自分なりのハッピーエンドを見つけにいける、いってほしいなっていう。

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