米津玄師「感電」とドラマ『MIU404』に通じるバランスとセンス 主題歌として流れるタイミングにも注目
「感電」が流れたのは、ラスト5分に迫ったところ。物語のクライマックス、伊吹&志摩が犯人と対峙する――というよりは、天使と悪魔を一つの身体に住まわせた人の心のメタファーかのように、犯人を挟んで伊吹と志摩が対峙する場面の直後だった。BGMのないシーンが続いていたことも相まって、まず、出だしのホーンセクションに驚かされる。米津の曲でホーンが鳴っているのは初めてではないが、こういうポップファンク調の曲はこれまでになかったのではないだろうか。第一印象は、肩の力が程よく抜けた洒脱な曲。しかしよく聴くと、犬と猫の鳴き声をサンプリングする遊び心も見受けられる(「いぬのおまわりさん」からの連想?)。2番サビのあとに予想外の展開が待ち受けているのも楽しいし、ジャズドラムも最高。全体を通じて、色気とユーモアの配分が絶妙で、シングル曲とカップリング曲のいいとこ取りのような温度感がある。このバランスとセンスはドラマ自体にも通ずるもの。それは、米津とドラマの制作陣、それぞれの創作活動を経て、今再会したからこそ実現したものではないだろうか。
歌詞は公開されていないため、聞き取れた限りの言及になってしまうが、信じるものに人が熱くなり、スイッチの入る瞬間が“電撃”というモチーフに託されているように感じた。そうなると、タイトルに掲げられた“感電”(=自分の発した電流が相手の体内に流れる)とは、伊吹と志摩の、そしてドラマ『MIU404』と主題歌「感電」の関係性を表したワードとしても受け取れる。要所要所の言葉選びからは、既存曲に通ずる米津らしさを読み取ることができた。
『アンナチュラル』における「Lemon」がそうだったように、主題歌が流れるタイミングさえも作品における重大なメッセージになっているのがこのチームの特色だ。「感電」が流れるタイミングに注目しながら、今後の放送回も楽しみたい。
■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。