UNISON SQUARE GARDENはバラードも名曲揃い サブスク解禁を機に紐解くバンドの姿勢
2015年の「シュガーソングとビターステップ」で知名度を一気に上げた後に制作された、2016年の6thアルバム『Dr.Izzy』は、ヒット曲の存在に浮かれずに自分たちの信じる“良いバランス”のアルバムを研ぎ澄ませた、ユニゾンのブレなさを証明するような傑作だ。
「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」は、同作唯一のバラードだ。他の多くの収録曲が、ユニゾンらしいセンスを展開する中、跳ねるリズムとしなやかなフレージングがまどろむように響く。恋愛とも音楽とも取れるような絶妙なラインで、“思いが届く”場面を描いたピュアな思慕が零れる1曲だ。この何気ない曲も、アルバムの濃密な流れの中でひと休みできるような抜群の役割を果たす。必要なピース以外一切の不純物はいらないという、ユニゾンのアルバム哲学は徹底されている。
現時点での最新オリジナルアルバム、2018年の『MODE MOOD MODE』は遊び心にも富んだ彩り豊かなアルバムで、ここにもバラードは1曲。8分の6拍子で刻むドラムに合わせ、感傷が降り積もっていくような悲恋の歌「夢が覚めたら(at that river)」だ。歪んだギターと熱のあるボーカルで別離する2人を映し出していくこの歌は、田淵智也が「フッとメロディが湧いてくるシチュエーション」があって閃いた曲とのこと(『MUSICA』2018年2月号より)。バンドストーリーや主義を描く曲ではない作家性の強い楽曲だが、こういったプロダクションも作品の一部に織り込む今のユニゾンの強さが伺える。
ちなみにこの楽曲はリリース後、今に至るまでライブでは未披露となっている。『CIDER ROAD』収録の「お人好しカメレオン」がリリースから7年後の15周年ライブの1曲目を飾ったように、この曲もまた然るべきタイミングでプレイされるのを待っているはず。
ユニゾンのバラードは、例外はあれど多くが“比較的分かりやすい言葉”で“強い純粋さ”を持った楽曲が多い。シングル曲である「harmonized finale」や「春が来てぼくら」ももれなく素直に背中を押してくれる。ボーカル、ギター、ドラム、ベースがせめぎ合うカオティックでスピーディーな楽曲や、どこから飛び出るか分からないワードセンスがユニゾンのパブリックイメージである一方、静かに、それでいて確かな存在感を放つバラード曲にもまた、彼らの美学が宿っている。今回のサブスク解禁を機に、より多くの人にこのバンドの奥深さが届いて欲しい。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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