ジェイ・コウガミ氏に聞く、コロナ以降の音楽エコシステム 配信&ライブビジネスから考える課題と今後

コロナ以降の音楽エコシステム

 コロナの影響で、これまで以上に注目を浴びたのがクラウドファンディングの活用だ。特にライブハウスやミニシアターを中心とした経済的支援、またはライブや映像作品の制作面でのサポートなど、その活用方法は様々。3月に行われたBAD HOPによる無観客ライブへの支援を目的としたクラウドファンディングでは、結果7,900万円近くの支援金を集め、アーティストとファンの強いつながりを感じることができた。

 クラウドファンディング自体はすでにあったシステムで、これまでの音楽におけるエコシステムとは異なるが、コロナの影響もあり、アーティストやイベンターがファンに向けてダイレクトに支援を求めることができる貴重な仕組みとして、おそらく今後も活用されていくだろう。海外ではより多様化しているというクラウドファンディングの動きについても、ジェイ氏はこう語る。

「クラウドファンディングも素晴らしい仕組みだと思います。日本でも多くの企業や個人が利用しましたし、海外でもGoFundMeやKickstarterなどクラウドファンディングが活用されています。一方で、日本ではアーティストを支援する仕組みはまだまだ足りません。例えば、海外ではPayPalやVenmo、Cashなど、決済アプリで直接アーティストに寄付する方法が広がっています。また、ストリーミングのロイヤリティを担保にアドバンス資金を得る音楽投資サービスも、インディーアーティスト向けにあります。加えて、アーティストやイベントプロモーター、ライブ事業者が資金繰りのアドバイスを得るサポート団体が数多くあります。こうした団体が精力的に、音楽コミュニティを支援していることが印象的でした。アーティストやクリエイターが使える、ファンクラブのような形式のPatreonなどのサブスクリプションサービスもあります。アーティストはこうしたサービスを作品発表の場として使ったり、ファンとのコミュニケーションに使っています」

コロナ以降のエコシステムで鍵となるもの

 最後に、コロナによって感じた「従来の音楽におけるエコシステムの欠点」についてジェイ氏に聞くと、「デジタル領域での契約問題、著作権ビジネスの環境整備の遅れ、マネタイゼーションの選択肢不足」と答えてくれた。さらに、アーティストへの収益に関しては「(日本では)インディーアーティストやDIYアーティスト、中堅アーティストの音楽ストリーミング戦略とデータ活用」がコロナ以降のエコシステムで重要になるという。

 ソーシャルディスタンスやテレワークなどにより、人々は物理的に距離を取りながら物事を進めていかなければならなくなった。上記の欠点は、まさにオンラインを主とした、コロナ以降の新しい時代に向けてクリアすべき課題とも受け取れる。2020年も折り返しを迎えた今、音楽におけるエコシステムは大きな改革を求められているのかもしれない。

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