BLUE ENCOUNT、SHISHAMO、coldrain......初の武道館ライブがバンドにもたらすもの
話を少し戻して、なぜ武道館ライブは通常のライブと違うのかという点を考えていくと、ライブハウスのライブとは違う演出を組み込むことができる、という点が挙げられる。オープニングに映像を使う、というのもそのひとつ。実際、冒頭のメンバーが登場するまでのオープニング映像には、この日のライブに対するバンドの想いが詰まっていることも多い。coldrainの武道館ライブもまた、オープニングに映像が使われていた。coldrainのオープニングムービーでは、バンドの過去のライブ映像を使ったり、過剰にバンドの歴史や物語を語るようなことはせず、シンプルに今のcoldrainのメンバーを紹介するコンパクトな内容になっていた。また、当日のライブのセットリストを振り返ると、「今」を重点的に強調するかのように、当時の新作『FATELESS』(2017年)を軸にしたものになっていた(あくまでもアルバムのツアーファイナルという位置づけだったからであるが)。こういう形で収まったのも、新作の楽曲を披露することが、自分たちが信じてきたロックの歴史を反映していたからだったように思うし、時期ごとに鳴らすジャンルを変えるのではなく、自分が影響された一本のロックを見せつけることが、coldrainの他ならぬメッセージだったわけだ。こういう音楽なら売れないと言われたけど、それでも自分たちはやり続けたとMCでことあるごとに語ったのはその表れであろう。
全てのバンドに共通しているのは、武道館ライブは大きな目標であってもゴールではないということだ。もっと大きな夢に向かって突き進むための通過点でしかない。もちろん、次の大きな目標が何なのかはバンドによって違う。もっと大きなキャパでライブをやることが目標かもしれないし、世界で名を馳せることが目標なのかもしれないし、楽しくバンドが続けられたらそれで十分と思っている人もいるかもしれない。ただ、少なくとも2020年からそれぞれの武道館ライブ後を振り返ってみると、BLUE ENCOUNTもSHISHAMOもcoldrainも意欲的に作品をリリースをして、自分たちが成し遂げたい夢をどんどん叶えている、そんな印象を受ける(特にcoldrainは『BLARE FEST』が重要なトピックになることだろう)。
もう少し言えば、日本武道館で提示したメッセージが以降の進路に繋がっている印象もある。coldrainでいえば、武道館ライブは自分たちのこだわったロックを鳴らし続け、これからもそのロックを鳴らすことを宣言するようなものだった。だからこそ、その後、Pay money To my Painをはじめとするラウドなロックバンドが集う伝説的な『BLARE FEST』を開催する未来に繋がった。そこまで踏まえて考えると、やはり言葉として落ち着くのは、どのバンドにとっても、日本武道館は“通過点”でしかないというものだ。ただし、武道館ライブでどのようなメッセージを提示するのか。それが今後、バンドがどのような飛躍をするのかを想像するうえで、重要な指標になるということもまた、改めて感じる次第である。
■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。