コロナ禍のなかで生まれた新たな音楽体験ーートラヴィス・スコット『Astronomical』を機に考えるライブの可能性

コロナ禍が続く中で実現した、久しぶりの光景

 著名アーティストのライブパフォーマンスが決定してからというもの、ライブが行われる会場の周辺にはアーティストのアートワークを模したオブジェが配置され、イベントへの期待感を煽るようになった。そのアーティストが着用しているシューズ(Air Jordan!)やグッズ等の販売も始まり、ファンや、ファッションに目が無い人々がこぞってそれを購入し、友人に見せて自慢するという光景も多く見る事が出来た。そしていざパフォーマンスが始まると、一緒に参加した友人同士とその内容に大いに興奮し、目の前の光景を撮影してSNSにどんどんアップし、タイムラインがその内容で埋め尽くされていく。

Travis Scott『ASTROWORLD』

 コロナ禍が続くなかでは、もはや懐かしさすら感じるこれらの光景だが、実はその全てがつい最近の出来事である。実はこれは現実世界ではなく、オンラインゲーム『フォートナイト』上で実現した内容なのだ。

 4月23日(日本時間では4月24日)、オンラインゲーム『フォートナイト』上で、人気ヒップホップアクトのトラヴィス・スコットがおよそ10分間に及ぶパフォーマンス『Astronomical』を実施した。同パフォーマンスは約1200万人以上のプレイヤーが目撃したとされており、その画期的な内容に国内外のメディアが様々な感想や評価を寄せている。何より興奮したファンやプレイヤーの投稿でSNSは埋め尽くされ、トレンドはトラヴィス・スコット一色になってしまった。間違いなく2020年において最も注目されたライブパフォーマンスと言えるだろう。

急激に加速するゲーム×音楽のクロスオーヴァー

 近年、ゲームカルチャーは技術の進化に伴う表現力の拡大、あるいはeスポーツの普及やTwitchなどの配信サービスの進化によって、映画や音楽と並ぶ程に巨大な存在となっている。影響を受けているミュージシャンも非常に多く、Chvrchesや星野源といった国内外の豪華アーティストが楽曲を提供した、小島秀夫による最新作『DEATH STRANDING』(2019年)はそういったクロスオーバーの一つの象徴でもあった。

 そのなかでもここ数年で急速に拡大したのが実際の友達とネットで繋がりながら遊ぶことが出来るオンラインゲーム。特に『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』や『Apex Legends』に代表されるバトルロイヤル形式のゲームは勢いが強く、その中でも『フォートナイト』はCGアニメのようなポップなビジュアルと基本無料というハードルの低さ、ファッション性の高いキャラクター衣装(スキン)を武器に世界中で爆発的なヒットを記録した。日本でも小中学生を中心に凄まじい人気を誇っており、友達同士で、それぞれの自宅でボイスチャット等をしながら『フォートナイト』を楽しむという光景も今では特に珍しいものではない。特に最近はコロナ禍の影響で学校に通えないことから、もはや『フォートナイト』がコミュニケーションの中心になっているという人々も少なくないであろう。今ではそのプレイヤー人口は2億5千万人以上に及ぶと言われている。昨年公開された映画『アベンジャーズ エンドゲーム』にも登場するほど、その影響力は圧倒的である。

 『フォートナイト』にはアーティストのファンも多く、アーティスト同士でこのゲームを楽しんだりプレイ動画をネットにアップしたりする例も多い。この流れを受けて、元々お祭り的なイベントが多いゲームということもあり、昨年からはアーティストとコラボレーションしたゲーム内音楽イベントを実施するようになっている。その始まりは、2019年2月に行われた人気DJのMarshmelloによるライブパフォーマンスだ。『Astromical』とは異なり、あくまで既存のゲームフィールド上に巨大なDJブースを用意し、その上でパフォーマンスを行うという内容だったが、この時点ですでに1,000万人近くという驚異的な人数が参加している。

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