KOKIA、生配信ライブ『1 to 1 Live for you』で届けた音楽を通して人とつながるという温かい循環

KOKIA、生配信ライブで届けた温かい循環

 シンガーソングライターのKOKIAが4月25日、生配信ライブ『1 to 1 Live for you』を行った。4月4日、18日に続く3回目の生配信ライブが行われた25日は本来、東京オペラシティコンサートホールでの公演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響により中止に。その代わりとして行われた生配信ライブでKOKIAは、20年のキャリアのなかで生み出された名曲や人気曲、コロナ禍以降に制作された新曲も披露。ライブを視聴したファンを大きな感動で包み込んだ。

 まずはKOKIAのキャリアについて振り返っておきたい。幼少期から様々な芸術に触れて育ち、3歳のときからバイオリンを習っていた彼女は、高校、大学と桐朋学園で声楽を専攻。クラシックと声楽を本格的に学ぶ一方、オリジナル曲を通して自身の思い、メッセージを伝えることに強く惹かれ、大学在学中にシングル『愛しているから』でメジャーデビューを果たした。

 その後、「かわらないこと 〜since 1976〜」(ドラマ『愛しき者へ』主題歌)、「The Power of Smile」(花王『エッセンシャル ダメージケア』CMソング)がスマッシュヒットを記録。さらにアテネオリンピック日本選手団公式応援ソングとなったシングル「夢がチカラ」がヒットし、幅広いリスナーにKOKIAの名前を知らしめた。

 海外での人気も高い。シングル『ありがとう…』が香港でヒット。この曲をサミー・チェンがカバーしたことにより、中国圏での知名度を得た。

 2006年にはベスト盤『pearl 〜The Best Collection〜』が日本、フランス、スペインでリリースされ、ヨーロッパ圏でも高く評価された。また2009年には、フランス、アイルランド、ベルギー、ドイツ、ポーランドを巡る本格的なヨーロッパツアーを成功させている。

 クラシック、ヨーロッパのフォークロア、日本的な叙情性が自然に混ざり合うようなメロディ、ピアノ、ストリングスなどを中心にした洗練されたサウンドも魅力的だが、KOKIAの音楽の核にあるのは、もちろん彼女自身の歌。愛すること、生きることの本質をシンプルな言葉で射抜く歌詞、そして、声楽の素養に裏打ちされた、高い技量と豊かな表現力を備えたボーカルこそが、世界中のリスナーを惹きつける理由であり、その魅力は今回の配信ライブからもしっかりと感じ取ることができた。

 第3回目の『1 to 1 Live for you』は、20時にスタート。始まる前から、YouTubeのコメント欄には、日本語、英語、韓国語、フランス語などによる感謝の言葉が並んでいた。

「本当に大変なことになってしまって、どうしたものかなと、まだ自分の気持ちを言い当てる言葉がありませんが、それでも、いま、こうして歌を歌わせてもらえるということ、聴いてくれる人がいるということに、本当に支えられています。聴いてくれるみんなからの温かいメッセージをいただいて、また私が歌う。そうした素敵な素敵な循環が、素敵なことを生んできたと信じています。だから、この状況のなかでも、素敵な循環を生み出して、乗り越えていけたらいいなと思っています」

 というMCに導かれたのは、「Dear Armstrong」。ルイ・アームストロングに手紙を書くように綴られたこの曲は、“この世界は素晴らしい。すべてが輝いている”という思いを込めたバラード。美しく、神聖な響くメロディも強く心に残る。続く「Family Tree」は、クラシックと黒人聖歌などがナチュラルに混ざり合うメロディが印象的なナンバー。豊かな低音、解放的な高音のフェイクなど、KOKIAの卓越したボーカル力がたっぷりと感じられる楽曲だ。瀬田創太によるピアノ伴奏も秀逸。クラシック、ジャズに精通した瀬田は、約10年前から彼女のライブをサポートしている。

 最新アルバム『Tokyo Mermaid』の収録曲「私の中の獣」の後は、「前回の配信ライブでYouTubeを検索してみて、みなさんがたくさん聴いてくれてるんだな思いました」という初期の名曲「調和」。エキゾチックかつクラシカルな雰囲気の旋律、ひらがなで書いた文章を逆さから歌う後半の歌詞など、KOKIAの独創的な音楽性が詰まった人気曲だ。(ピアノと歌だけのアコースティックバージョンで披露されるのは、おそらく今回が初めて)

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