B’zがライブで打ち立てた伝説の数々ーー『LIVE-GYM』映像で辿るロックバンドとしての凄み
ライブだからこその生の表情
また、1993年に静岡県浜松市にある渚園に2日間で10万人を動員した『B'z LIVE-GYM Pleasure '93"JAP THE RIPPER"』は、非常に見応えがある。『FUJI ROCK FESTIVAL』もまだ始まっていない時代に、この規模で行われたライブは類を見ない。まるでジャングルジムのように組み上げられた巨大なイントレや爆音のサウンドとそれを掻き消すような大歓声は、まるで海外のロックスターのステージをほうふつとさせる。同映像にはリハーサル風景などステージの裏側の様子も収録され、メンバーの真剣な表情は一見の価値ありだ。
B’zはメディアに滅多に登場することがなく、生の声や人となりが感じられるのはライブだけだ。例えば「B'zのLIVE-GYMにようこそ!」という稲葉の決まり文句は名物で、毎回それをどう言うかにも工夫が凝らされている。例えば、『B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-』ではステージ上に登場した巨大ブラジャー(EPICブラ)が回転するとその裏に書いてあったこともあったり、稲葉のお茶目さが感じられる瞬間だ。『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』では、さいたまスーパーアリーナの観客と「見えてますか? 見えてない?」といったユーモアたっぷりのやりとりで楽しませる。
ハードロックやファンクをベースにJ-POPと融合させた音楽性で人気を博した90年代。キャッチーなメロディや言葉のインパクトはそのままに、よりハードなサウンドを指向するようになった2000年代。楽曲の変遷はそのままJ-POPの歴史を見ているようであり、ロックをベースにしたJ-POPの進化の過程を見るようでとても見応えがある。サポートメンバーのクオリティも非常に高く、バンドの演奏は世界レベルで一分の隙も無い。ロックバンドとしてのB’zのすごさを改めて実感するだろう。
また、楽曲からだけでは感じられない2人の素の表情も魅力で、2人の表情がこんなにもたくさん見られるのは貴重だ。いつもは渋い表情の松本のコール&レスポンスの時の笑顔や、最後の「おつかれ〜」を言うときの稲葉の柔和な笑顔。『B'z LIVE-GYM 2011 -C'mon-』の最後の稲葉の「気持ち良かった〜」も心からの声という感じだ。この機会にB’zのライブをたくさん見て、彼らのたくさんの魅力に気づいて欲しい。
■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。