w-inds. 橘慶太×岡崎体育対談【前編】 DTMとの出会いが叶えた夢、“歌詞が脚本”スタイルの楽曲制作について聞く

橘慶太×岡崎体育対談

いろんなジャンルに挑戦できるのがソロ活動のメリット

橘:岡崎体育として始めたときから、今のようなエンターテイメント性の高い音楽性だった?

岡崎:最初のころは「盆地テクノ」というのを掲げて音楽活動をしてたので、テクノっぽいミニマルな感じ。MCも一切なしでした。でも途中で「このまま音楽やるのも楽しいけど、売れへんかもしれへん」って思って、「どうやったらレコード会社の人の目につくんやろ」って考えてたら、対バンしている中で面白いことをやってる人がいっぱいいることに気がついて、コミック的な要素を取り入れていくようになりました。活動し始めて半年経ったくらいですね。

橘:結構早かったんですね。

岡崎:そうなんです。ライブで真面目に作った曲をやりながら、ちょっとずつネタ曲を間に入れると、お客さんの感情の変化がわかるんですよ。お客さんも少ないし、箱もめちゃくちゃ小さいから笑い声も全部聞こえてくるし、ウケてるんだなっていうのをすごく感じることができて。で、ライブハウスのブッキングマネージャーの人とも相談して「そっちの路線で行った方が可能性あるかもね」っていうアドバイスをもらって。最初は奈良NEVERLANDっていうライブハウスでしか活動してなかったんですけど、その人の紹介もあって、大阪でもライブをやるようになって、ちょっとずつ活動の幅を広げていきました。

橘:メジャーデビューはいつ頃だったんですか?

岡崎: 2016年の5月です。ギリギリちょうど4年でできて。

橘:メジャーデビューのときに出した「MUSIC VIDEO」は、インディーズのときからあった曲?

岡崎:いや、なかったですね。ストックの曲を提出してアルバムでデビューすることになったんですけど、ちょっとパンチが足りないなと思って。「急ぎで一曲書くんで待ってください」って言って、決まっていたリリース日よりもずらしてもらったんですよ。その間にできたのが「MUSIC VIDEO」です。

橘:「MUSIC VIDEO」のアイデアはもともとあったんですか?

岡崎:なかったです。追加で一曲作ることになってから「やばい、どうしようかな、どんなんがいいかな」ってYouTubeでいろんなミュージシャンの曲を調べながら「あぁこういうのが今ウケてんのか」って最初は分析してたんですけど、見てたら「なんかみんな演出似てんな」って思って。で、似たようなMVを全部リストアップしていって「これを曲にしよう!」と。

橘:僕、「MUSIC VIDEO」のMVを見たとき衝撃的だったんですよ。面白すぎるし、すごいなって。どういう作り方をしたのか気になってたんですよ。

岡崎体育 『MUSIC VIDEO』Music Video

岡崎:曲先、詞先、とかではなく、まず最初にリストアップから始めました。白黒でとか、アナログテレビで砂嵐流しとくとか、いろんなMVの演出や技法をリストアップして。でもリストアップしただけだと歌詞にはならないから、なんとなく歌になるように助詞とか助動詞とかを調整してつなげていきました。あ、でも先に曲か。リストアップして、曲を作って、曲に合うようにリストを調整して作詞したっていう作業ですね。

橘:曲の展開も多いじゃないですか。それは最初からあの展開? 展開ありきで、その次にメロディラインを考えていった?

岡崎:この曲でMVを撮ることも決めてたんですけど、当時ヒャダインさんがドキュメンタリー番組で「今の若い子は移り気だから、展開をどんどん変えていかないと、すぐスキップとか戻るボタンを押してブラウザバックする」っておっしゃってて、たしかにそれも一理あるなと思いました。で、コロコロ展開を変えた方が最後まで見てもらえるかもしれないっていう考えに至って、曲の展開も多くしました。

橘:じゃあ曲ができたときには、MVを撮るイメージもかたまってたんですね。

岡崎:そうですね。今ヤバイTシャツ屋さんっていうバンドをやってるこやまくんが、僕がインディーズの頃から<寿司くん>という名前でMVを撮ってくれてたんですけど、彼も当時学生で、映像制作の会社もなかったから、こやまくんと僕と今の僕のマネージャーの3人であの映像は撮りました。僕がずっとレンタカーで車を出して、関西のいろんなところで撮って、4日半もかかったんですよ。スタッフが少ないっていうのと、カット数がむっちゃ多いっていうので。

橘:自分たちだけで考えてやったんですか? すごい……!

岡崎:そうですね。一切大人が絡んでないと言いますか。学生のノリで作った感じでしたね。

橘:そんなクオリティには見えないですね。

岡崎:いや、よく見ると粗があったりするんですよ。でもその手作り感もいいのかなと。当時はYouTuberが台頭しはじめていて、若い子たちがテレビみたいな作りこまれた映像ではなく、素人が頑張って作った映像でも抵抗のない時代に差し代わっていた時期でもあって。あれぐらいチープな映像でもみんなが受け入れてくれたのは、そういう時代の流れも影響しているとは思いますね。

橘:岡ちゃんは常に曲に新しい要素を入れてくるじゃないですか。口パクでライブする「Explain」で突然無音になったときも、大爆笑したんですけど(笑)。ライブの演出やMVをイメージして普段から曲を作ってるんですか?

岡崎:そうですね。僕が作るコミックソングって曲の歌詞がすでに脚本になってることが多いので。「MUSIC VIDEO」に関しても、なになにしがちって言ってるのをこやまくんが映像化してくれた感じですし。

橘:ちょっと変な言い方かもしれないですけど、個人的に好きな音楽性とは違うこともあるんですか?

岡崎:うーん、そうですね。「MUSIC VIDEO」は好んで聴いてた音楽とは違う方向性かもしれないですね。

橘:ちなみに、今自分の好きな音楽はジャンルでいうと?

岡崎:今かぁ……。今でいうと、イージーリスニングですかね。 GONTITIとか手嶌葵さんとかばっかり聴いてます。

橘:なにかあったんですか?(笑)。

岡崎:最近ちょっと音がしんどくなってきて。そういう時期があるんですよ。ドラムの音がしんどいみたいな。

橘:そんなタイミングに僕との曲(KEITA名義でコラボレーションした「Tokyo Night Fighter feat. 岡崎体育」)はゴリゴリになっちゃいましたね……(笑)。

岡崎:いや、移動中に聴いてる音楽はイージーリスニング系が多いんですけど、家では普通にゴリゴリのハードロックも聴くし、今流行りのヒップホップも聴きますよ。

橘:サウンドはいろんなジャンルを作ってみたいタイプ? SNSでもたまに曲をあげてるじゃないですか。そのときに流行ってるヒップホップ系のサウンドだったり、てっくん(岡崎体育が生み出したキャラクター)のソウルファンクっぽい「フェイクファー」だったり、いろんなサウンドに挑戦してるなと思っていつも見てるのですが。

てっくん 『フェイクファー』Music Video

岡崎:そうですね。今どんな音楽が流行ってるのかは常にチェックしてますね。DTMがあればいろんな音でいろんなジャンルの曲が作れる。アレンジャーさんに頼めばそのアレンジャーさんの得意な音楽ジャンルでアレンジしてもらえる。いろんなジャンルができるっていうのは一人で活動してるところのメリットですよね。

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