ヴィジュアル系シーンとメロコア/パンクの関係性 MUCCからR指定 七星によるgivesまでを整理

 MUCC以外にも、ヴィジュアル系シーンでメロコア/青春パンク要素を取り入れた曲は珍しいものではない。MUCCのもつラウドや歌謡といった要素に近しいものだと、ぞんび「クソったれが」(2018年)がわかりやすい。メタルコアにメロコア調のサビをかけあわせた、欧米でいうイージーコアに近いサウンドに、いわゆるヨナ抜き音階のメロディをのせた一曲だ。歌謡+メロコアという点では、R指定「修羅場」(2010年、『人間失格』収録)も挙げられる。メタリックなギターフレーズが頻出するのがヴィジュアル系ならではだ。2000年という、シーンの変換期に結成されたWaiveの「いつか」(2004年、『INDIES』収録)は青春パンクを思わせる曲で、時代の影響が感じられる。影響という意味では、Hi-STANDARDのカバー経験がある西條洋介.(Gt)が創設メンバーのケミカルピクチャーズがいる。バンドとしての音楽性は広く、メロコアが核ではないものの、「溺れる魚」(2012年、『世界を撃った男』収録)という高速ツービートのメロコア曲もある。BEE-315は見た目も音楽性もメロコア/メロディックパンクバンドだが、ヴィジュアル系バンド・メトロノームのリウ(Ba/Vo)が在籍している。

ぞんび「クソったれが」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.] 】

 他にも例はあるが、とはいえ、メタルなどに比べると、メロコアはヴィジュアル系でメジャーな要素とはいえない。こうした状況に、givesが加わることになる。七星はgivesのコンセプトについて、こう述べている。

「なんか現代の音楽って隙間なく音符を埋めてやるぜみたいな音楽になってきてると思うんだ体感上。でもなんか自分が好きだったルーツとかそういうことを考えたときにもっと音数少なかったな。って思っちゃってどうしても」(引用:YouTube

「激しいロックとかよりは、ポップなものが好きでした。(中略)キャッチーでメロディアスなものが好きで、それは今でも変わらない」(引用:club Zy.

 2010年代後半、ヴィジュアル系ではシーンの縮小が話題にあがることも少なくなかった(参考:Real Sound)。一方で、メロコアシーンからは、WANIMAや04 Limited Sazabys、ヤバイTシャツ屋さんなど多くの人気バンドが生まれた。もちろん、音楽性だけがシーンの動向を決めるわけではない。たとえば、彼らの人気を後押ししたフェス文化が『AIR JAM』と通じていたというのもあるだろう。それでも、その雑食性で1990年代から音楽性を大きく拡張しながらも、一定の音楽的なトレンドがあるヴィジュアル系で、改めて“スリーピース”と“メロコア”に正面から向き合うことで見えてくることもあるはずだ。

■エド
音楽ブログDecayed Sun Recordsの管理人でバンドマン。ヴィジュアル系とメタルをよく聴く。

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