連載「Signal to Real Noise」第七回:TAWINGS

海外公演も成功、気鋭の3ピースバンド TAWINGSインタビュー 「常に作りたいものを作ること自体が目標」

「いい音楽を作ってバンドを続けられれば、がずっと最優先」(eliy)

ーーだんだんバンド活動に本気になってくるタイミングはいつごろでした?

Cony:最初はやっぱり、本当に趣味の延長だったよね。ただ、ライブをしてみたら少し反響があって、「音源をリリースしてほしい」と言われることが多くなりました。加えて、大人の人たちから声をかけられるようになりました。そうなってくると色々考え出すじゃないですか。「これからどうしていこうか、何が一番大事なのだろう」って。でもやっぱり、いい音楽を作ることが一番重要なことだと思ったので、大人のお話は全部断り続けてきました。なのでつい去年まで自分たちだけでずっとやってきました。

ーー周りの大人たちの言うことを聞きたくなかったというのは?

Yurika:なんだろう、まだ準備できてないっていう感じもあったのかなぁ。

Cony:そう、準備できてない。

Yurika:あと、The Lemon Twigsとかの前座に呼ばれるようになって、会場もどんどん大きくなってきたりすると、意識せざるをえないというか。

Cony:見られる意識がね。

eliy:手に負えなくなったというか。

Yurika:曲も集まってきたし、みたいな話になって。

Cony:純粋に自分たちの音楽を守り続けていようと思うと……いろんな話も聞いたりするんです。周りがインディーの界隈だったので「気をつけて」みたいなことをずっと言われていて。

eliy:やりたいことができなくなっちゃう、っていうのが多分心のどこかにあって。

Cony:やっぱり自分たちで慎重にやっていく自主制作の方が自由にできるのかなと思って、昨年まではそうやってきました。本当に一緒に頑張りたいと思える人が現れたときに、一緒にできたらいいよねっていう話をしていました。今は(レーベルの方々に)お手伝いしてもらうようになって、結果的には音楽にもプラスになったな、って思っているんですけど。

ーーなるほど。バンドを始めたころ、バンドとしての目標とか、ここまで行きたいっていうビジョンは何かあったんですか?

Cony:正直、成し遂げてやろうとか、そこまでは思ってなかったと思います。私は電車が嫌いだったので、なんとしてでも就職はしたくなくて、それで「何かならなきゃなぁ」と思っていたんですけど、バンドを始めて、曲を書いてみたら「できるじゃん!」って。今は、好きなことを一生の仕事にできるように日々頑張っています。

eliy:バンドとしての目標は、いい音楽を作ってバンドを続けられれば、ということがずっと最優先ですね。

Cony:それもそうだし、あとはこれからものづくりを始める人に勇気を与えたいっていうのも、最近だんだん出てきました。やっと自分がミュージシャンでいるという状況を客観視できるようになってきて、周りがだんだん見えるようになってきた。そこで自分の存在理由を考えたら、これから何か始めたい人に(自分たちを)見てもらって、勇気づけたいと思ったんです。もちろん、日本では音楽で稼いで食べていくのがなかなか難しい現実もあると思うんですけど。女の子って輝いている女性に憧れるっていうのは結構あると思うんです。自分たちもみんなそうだったし、周りのミュージシャンもみんな思っていて。

ーーたとえばどういう女性に憧れました?

Cony:最初に曲を作ってみたいと思ったのは、Grimesを聴いた時ですね。自分もできるんじゃないかって思わせてしまう存在ってすごいなって思いました。YouTubeで見かけたんですけど、難しいことをやっているように見えない。よく見るシンセサイザーで、パソコンを使って、マイク持って、着飾るわけでもなくラフな状態で座ってやっている。でもかっこいいっていうのが、多分これから何かを始めたいって思っているたくさんの人に勇気を与えたのではと思います。

ーーでも、自分一人で打ち込みでやろうとは思わなかったんですね。

Cony:最初は思っていんですけど、やっぱりバンドが好きだなぁと思って。それまでバンドの音楽をたくさん聴いていたこともありましたし。それに、ガールズバンドになぜかすごい憧れを持っていたこともあります。

ーーバンドの良さ、楽しさとは?

Cony:私がデモを作ってくるんですけど、デモとライブの音源って、全く変わってしまうものもあって。やっぱり二人が弾けば二人のグルーヴになったり、自分が想像もしなかった曲になったりとか、それが楽しいところです。あとは、やっぱりソロだと良い意味でも悪い意味でも選択肢が多すぎて迷ったまま、一人で決めきれずに終わっちゃったりすることがあるので。バンドは、自分の中のたくさんのものを二人に選んでもらえるような感じがいいのかなと思います。自分っていうものを気付かされたなと。

ーーおふたりから見るとConyさんはどういうミュージシャンですか?

Yurika:その時の気分の曲が出てくるので、そういうところがすごく楽しいですね。ポストパンクっぽい音楽を作っている時期もあれば、すごいメロディアスな曲を作ってきたりとか。いきなりポップな曲が出てきたりもします。でもそれが全部面白くて。

eliy:そうだね。私はもともと音楽をやる前から友達だったので、いろんな先入観があるんですけど……飽き性だけど、元々の好みや感性が本当に近いので、一緒に何かを考えたり作ったりすることもとても楽しいです。

Cony:ずーっと飽き性だなって思っていたんですけど、今考えたらTAWINGSが初めての作曲だったので、自分にはどんな曲ができるのか、この活動の中で探っているっていうのもあると思います。

ーー自分のスタイルをバンドで模索している。

Cony:はい、どれが一番TAWINGSに合っているのかとか、自分が書きやすいのかとか。まだまだ手探りでわからない状態なので、効率よく戦略的に曲を作ることはできないんですけど、本当に体当たりで全部やっているという感じなんです。

ーーつまりバンド作ったときに「こういう曲を作っていこう」っていうサウンド的なスタイルを決め込まずに始めたっていう感じ?

Cony:最初は大まかにポストパンク/ガレージで決まっていたんですけど、曲を作り始めてからいろんな音楽を聴いて、どんどん「あんなこともやりたい、こんなこともやりたい」が毎日続いてきた感じです。

ーーじゃあ、楽しいじゃないですか。

Cony:そうですね!

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