フレデリック、クリエイティブなライブで会場を掌握 『終わらないMUSIC』ツアー横浜アリーナ公演レポート

(写真=佐藤広理)

 アルバム『フレデリズム2』を携え1年をかけて全国のライブハウスをまわり、また対バンツアーやZepp Tour、初のワンマンライブをした思い出のハコ、神戸VARIT.をめぐるロングツアーを行ってきたフレデリックが、2月24日に旅の最終地点である横浜アリーナ公演『FREDERHYTHM ARENA 2020~終わらないMUSIC~』にたどり着いた。迎えるのは、満員の観客だ。オープニングで前回のアリーナ公演である神戸 ワールド記念ホールからこの1年間の軌跡のフィルムが流れると、会場を埋める観客のボルテージがグッと上がる。そして、1曲目「飄々とエモーション」のリズミカルなリフとビートに合わせて、レーザーが会場を射抜くと、観客が大きく興奮の声をあげた。

三原健司(写真=渡邉一生)

 三原健司(Vo/Gt)は、その声を掴んで指揮するようにシンガロングを煽り、またアカペラで歌声を会場中に響かせる。きらびやかでボリュームのあるアンサンブルもまた、気持ちがいい。〈エモーション 僕のさいはてに最後まで付き合って〉という歌のままに、観客が一体化して会場内の空気が密になるのが伝わり、開始早々フレデリックはアリーナという大きな会場を掌握していった。続く「シンセンス」でBPMを上げて、「俺たちだけの遊び場を作ろうぜ」(健司)という声とともに観客を踊らせて、その勢いのまま「VISION」で昇天させていく。昨年秋にリリースした2nd EP『VISION』は、彼らが培ってきたニューウェーブと、4人で生み出してきたフレデリック節と言える独自のリズムを深め、進化させた作品だ。この長いツアーが、単なるアルバム『フレデリズム2』のお披露目的なものでなく、いかに感性を研ぎ澄ませたクリエイティブなツアーだったかがわかるのがEP『VISION』であり、鮮烈なサウンドと強靭になったバンドアンサンブルとで、さらにクリアで鋭利な視界となっているフレデリックを伝えるものになっている。続けて演奏したおなじみの「オンリーワンダー」もまた、新たなものに聴こえてくるような印象だ。

赤頭隆児(写真=ハタサトシ)

 「この中に、音楽大好きって人はどれくらいいる?」という健司の問いかけでスタートした中盤は、新旧の曲を織り交ぜた流れになった。「夜にロックを聴いてしまったら」「スキライズム」という『フレデリズム2』の曲から、レゲエ調のビートを取り入れた「シンクロック」、そして80’sフレイバー溢れる「真っ赤なCAR」へと続き、そのエンディングが転調して「LIGHT」へとスムースにつながる流れは心地よい。ミラーボールがきらめいて、ファンキーな三原康司(Ba)によるベース~赤頭隆児(Gt)のギター、そして高橋武(Dr)のドラムとソロを披露していき、ショーアップされた華やかなステージだ。熱量の高いバンドに応えるように、「NEON PICNIC」では観客が一斉にスマホのライトを灯した。これはメンバーへのサプライズ演出となっていて、その光景を目の前にした健司は、「感動した、ありがとう」と喜びを伝える。曲中、大型ビジョンに映った彼は目を潤ませていたようにも見えた。ステージから見える景色は、きっとまた格別なものだろう。

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