高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第13回

サカナクション、ゆず、04 Limited Sazabys……アリーナ/ドームライブから見えるそれぞれのスタンス

 最後は04 Limited Sazabysの『YON EXPO』。2019年9月29日にさいたまスーパーアリーナで行われた、彼ら史上最大の単独公演『YON EXPO』の模様を収録した映像作品だ。いつもはライブハウスを行脚している彼らが、アリーナという異例の大舞台に立つうえでこだわりにこだわりぬいた仕掛けが散りばめられたライブ……に留まらない一日が記録されている。というのも、この日は、ライブ前からゲームや写真展、飲食が楽しめる「YON PAVILION」エリアが設けられており、今作にはその様子も収められているのだ。ライブそのものも、メンバーの演技した映像や早着替え、歌い鳴らしながらの客席エリア練り歩きなど、エンターテイナーな魅力が光っていた。メロディックパンクを出自とするバンドのアリーナの立ち方として、とても新鮮だったし、ひとつ道を切り開いたところはあると思う。なお、彼らは現在『MYSTERY TOUR 2020』と題した、全箇所シークレットゲストを招くライブハウスツアーを行っている。“楽しませたいし、楽しみたい”センスは、ますます磨かれているようだ。

04 Limited Sazabys「Cycle」LIVE (YON EXPO @2019.9.29 さいたまスーパーアリーナ)

 三者三様ながら、オーディエンスと共に挑戦を重ねていくというスタンスは、アリーナライブを行うアーティストに共通していると思う。現場ではあなたも“一員”になるわけで、映像作品で客観的に見えてくるものもあるだろう。ぜひ、この機会にじっくりと向き合ってみて欲しい。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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