HIROOMI TOSAKAが名実ともにトップアーティストへと成長した姿ーーナゴヤドームでのソロステージをレポート
HIROOMI TOSAKAは、最新のダンスミュージックに様々な角度からアプローチする挑戦的なボーカリストとして、そのアーティスト像を築き上げてきた。月をコンセプトに据えることで、三代目 J SOUL BROTHERSとは好対照となる妖艶かつダークな世界観を、先鋭的なトラックやビジュアルでも表現してきた。中でも特筆すべきは、リズムに対するボーカルの乗せ方だろう。HIROOMI TOSAKAの楽曲は、ライブの序盤ですでに明らかなように、BPMがかなり早い楽曲から遅い楽曲まで幅広く揃っていて、LDHアーティストの楽曲としては珍しい帯域の楽曲もある。
4曲目「OVERDOSE」はその意味で象徴的で、トラップのハイハットがかなり細かく入っているため気付きにくいが、BPMは70後半とかなりゆったりしたダウンテンポの楽曲だ。HIROOMI TOSAKAは、そのトラックにゆとりのあるグルーヴィーな譜割で、自身の声がもっとも豊かに響くアプローチをしているのである。時に音サビを効果的に活用しながら、バラエティーに富んだ楽曲をものにするセンスは圧巻で、そのクリエイティビティこそがHIROOMI TOSAKAの表現を多彩にし、ソロでコンセプチュアルなSHOWCASEを構築することを可能にしているのだろう。
重低音が強烈な「WASTED LOVE」、盟友CrazyBoyとフィーチャリングした「LUXE」とスタイリッシュな楽曲が続いた後は、HIROOMI TOSAKA流のトロピカルハウス「BLUE SAPPHIRE」へ。幻想的なスモークが立ち込めるステージの上、ミドルテンポの心地よいグルーヴで桃源郷へと誘うようなパフォーマンスだった。
後半は、HIROOMI TOSAKAの繊細な歌声を存分に聴かせるバラードコーナーへ。片思いの切ない気持ちを歌った新曲のピアノバラード「One Way Love」に始まり、「With You」や「One Last Time / HIROOMI TOSAKA feat. BENI」といった楽曲で、ドームをロマンチックなムードに染めていく。アコースティックギターの旋律に優しく寄り添う「Not For Me」では、ファンたちがハンドクラップで応える温かな一幕もあった。
そして、世界的DJ / トラックメイカーであるAfrojackとタッグを組んだEDMナンバー「HEY」では会場中を巡って一体感を作り上げ、ノンストップミックスで繋げた「DIAMOND SUNSET」で、HIROOMI TOSAKAのSHOWCASEは多幸感に溢れる終幕を迎えた。デビューから10年、かつて「経験値0のシンデレラボーイ」と呼ばれた青年が、名実ともにトップアーティストへと成長した姿がそこにはあったーー。
なお、リアルサウンドでは同日、ライブ直前のHIROOMI TOSAKAの楽屋を直撃取材している。その貴重なインタビュー記事は追って公開する予定だ。