新田真剣佑×北村匠海W主演映画『サヨナラまでの30分』を支える、劇中バンドECHOLLのボーカル力と存在感

 そして何より、新田真剣佑と北村匠海の存在感が映画を支えている。

 特に、ミュージシャンとしてのキャリアを重ねてきたわけではない新田にとっては、今回の役柄は新境地だっただろう。バンドのボーカリストとしてのレコーディングも初めてだったはず。けれど、おそらくこの先、彼は歌手としてほうぼうから求められることになっていくんじゃないだろうか。そう感じさせるほど、その歌声には表現力と色気がある。

 一方、北村はさすがDISH//でステージ経験豊富なだけに、バンドマンとしての骨のようなものを声にも感じる。役柄では内向的な性格だが、劇中でも歌い始めた瞬間に場を掌握するようなパワーを感じさせる。俳優と歌手というのはシームレスな存在であるけれど、二人の歌声からは「俳優が歌う」ということの必然も感じる。

 6曲それぞれにバンドのカラーが出てきているのも面白い。mol-74が手掛けた「目を覚ましてよ」は、シンプルながらアコースティックギターと歌だけで掴むフックを持った曲。雨のパレードが手掛けた「もう二度と」は、劇中で「アキ」が思いを寄せる「カナ」に贈ったという設定の曲なのだが、その向こう側にソングライター福永浩平の情緒的なメロディセンスが透けて見える。

 Ghost like girlfriendが手掛けた「stand by me」は、いわゆるギターロックとちょっとテイストの違いを感じる曲になっていて、それが「颯太」が加わったことで変わっていくECHOLLというバンドの表現になっていることも上手い。そして物語ではロックフェスのステージが一つのクライマックスになっているのだが、Michael Kanekoによる「真昼の星座」もまさにそれをイメージさせる半径の大きな曲になっている。劇中で「アキ」がしっとりと歌い上げるピアノバラードの「風と星」も含め、作曲者が異なることで生まれる幅の広さをストーリーと絡めていくような構成だ。

 そして、エンディングで流れる「瞬間(sayonara ver.)」が効いている。スネアの連打から始まるこの曲だけは内澤ではなく楽曲を提供したodol自身がアレンジを手掛けていて、エッジの立った聴き応えを感じさせる。昨年に配信リリースした「身体」もすごくいい曲だったし、odolはもっと飛躍していくと思っている。

 ECHOLLは、あくまで「劇中バンド」だ。パーマネントな活動をしていくわけではない。でも、関わったそれぞれにとって、今後に向けての一つのターニングポイントになるかもしれない。そんな予感もする。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。

■サウンドトラック・アルバム情報
ECHOLL/Rayons『サヨナラまでの30分』
1月22日(水)発売
初回生産限定盤(CD+フォトブック)¥3,300税抜
通常盤(CDのみ)¥3,000税抜
完全生産限定カセット¥3,000税抜
※映画公開劇場とSony Music Shopでの限定販売

■配信情報
「もう二度と」ダウンロードはこちら

ECHOLLオフィシャルTwitter
SONY MUISC オフィシャルHP

■映画情報
新田真剣佑 北村匠海
久保田紗友 葉山奨之 上杉柊平 清原 翔
牧瀬里穂 筒井道隆 / 松重豊
監督:萩原健太郎 脚本:大島里美  
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、茨木政彦
企画・プロデュース:井手陽子 
音楽:Rayons 音楽プロデューサー:内澤崇仁、安井 輝
制作・配給:アスミック・エース 
©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会
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