欅坂46、“破壊と再生”によって進化していくグループに 東京ドーム公演から現在までを振り返る

 『欅坂46 LIVE at 東京ドーム 〜ARENA TOUR 2019 FINAL〜』が1月29日に発売される。欅坂46のライブ映像が商品化されるのは2017年と2018年の『欅共和国』に続く3作目。昨年9月に開催されたこのライブはグループにとって初の東京ドーム公演だったため、今回の商品化には高い期待が寄せられている。久々の「不協和音」も飛び出し話題となった同公演(欅坂46が東京ドームで「不協和音」を披露した意義 様々な思いが交差した圧巻のステージを見て)。本作の発売を機に、このライブがグループにとってどういうものだったのかを考えてみたい。

欅坂46《欅坂46 LIVE at 東京ドーム ~ARENA TOUR 2019 FINAL~』(初回生産限定盤)

 多くのアーティストにとって夢の舞台である東京ドーム。それは欅坂46にとっても同様だった。キャプテンの菅井友香は自身のブログに「東京ドームでのライブは大きな夢」だったと書いている(参照)。佐藤詩織も同様に「自分が東京ドームに立てる日が来るなんて思っても居なかったです」と綴っている(参照)。しかし彼女たちは、そんな夢の舞台に立つことをいわゆるパーティー感覚で祝うようなことはしなかった。むしろ、今まで彼女たちが挑戦してきたような、グループ独自の路線を貫く姿勢を見せたのだ。「ガラスを割れ!」に始まり「不協和音」で爆発させ「角を曲がる」でおだやかに締めくくる、デビューからの4年間が凝縮されたような集大成的なセットリストだ。

 そんな公演のテーマは“破壊と再生”。ステージセットには過去のライブやMVを彷彿とさせるアイテムが、壊されたり錆び付いた状態で再利用されている。「役目を果たしたと思われたものたちが再び意味のあるものとして再生し、ステージを飾ってくれました」と菅井は説明する。初めてのワンマンライブであった有明コロシアムのセットや、「もう森へ帰ろうか?」のMVを連想させる排水管、全国ツアーで使われていたもの、「黒い羊」をイメージしたロッカーなど、欅坂46の過去の作品やライブを蘇らせたような装飾が印象的に施されていた。(参照:「9月21日(1269)【ステージセット】」9月22日(1270)【ステージセット2】

 こうしたテーマやステージからは、グループの歴史をそのままその通りに残していくわけではなく、作り変えて利用することで進化していこうという意志を感じ取れる。いわば“スクラップアンドビルド”を繰り返すことで発展しようという、グループの在り方に対するある種の宣言のようなものだ。これは欅坂46のこれまでの楽曲にも通ずるものがある。わかりやすい例で言えば、「サイレントマジョリティー」で一世を風靡したその後に、まったく路線の異なるシングルを2作リリースし“破壊”したところで、似たような路線でありつつも決定的にどこかが変化している「不協和音」でまたさらなる飛躍を遂げて“再生”したように、クリエイティブ面においても共通する姿勢なのではないだろうか。

 さて、この公演以降グループはどう変化していくだろうか。その手掛かりとなるのが年末の音楽番組での取り組みだ。代表曲や最新作を披露するアーティストが多い中で、欅坂46は過去のカップリング曲やアルバム曲なども繰り出しながら独自の世界観を突き詰める姿勢を見せた。シングルの表題曲よりもグループカラーが色濃く出るのがカップリング曲だ。「避雷針」や「月曜日の朝、スカートを切られた」といった表題以外の楽曲で見せたパフォーマンスは、多くの視聴者にインパクトを残したことだろう。まさに、過去の楽曲たちをグレードアップして今に蘇らせている。

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