『BORDERLESS』インタビュー

雨のパレード、『BORDERLESS』で見出したバンドのアイデンティティ「僕らはどこにでも属せる」

ライブを通じて感じたファンの反応と個性の打ち出し方


ーー蔦谷さんとの5曲が終わった時点でアルバムのことを考え始めたということですが、どんなところから構想は始まったんでしょうか。

福永:5曲目の「BORDERLESS」の完成が見えてきたあたりで、もう(アルバムのことを)考えていたんです。夏が終わったあたりかな。以前からずっと作りためていた音のネタも含め自分たちの今を最大限に表現できるような11曲になるように。

ーーDos Monosとの曲(「惑星STRaNdING(ft. Dos Monos)」)はいつごろの曲なんですか。

福永:一番最後ですね。

ーーDos Monosとはライブでも共演していますし、前作収録の「Hometown」の荘子itリミックスもある。彼らとの出会いは大きかったんじゃないでしょうか。

福永:そうですね。蔦谷さんがオーバーグラウンドの方だとしたら、荘子itはアンダーグラウンドの人だと思うんですけど、そういう意味で僕のなかではアイコニックな2人と一緒に楽曲を制作できてアルバムを作れるバンドは、たぶん僕らしかいないのではないかな、と思います。

ーー「Ahead Ahead」「Summer Time Magic」「Story」みたいなものすごくポップな曲のあとにこの曲を配信したあたりに、すごく意図を感じました。

福永:(笑)そうですね。まさに“ボーダーレス”という感じですね。「Hometown」のリミックスがすごくいい感じだったので、アルバムでも一緒にできるといいなと思っていて。それでどんな楽曲がいいか2人(福永と荘子it)で話し合って、自宅に来てもらってトラックを作ったんですけど、この形のままでやるとちょっと歌が乗りにくいしDos Monosの曲になってしまうと思って、どうやるのが一番いいか考えたんです。なので、僕らがスタジオに入って、コード進行も譜割も決めて、楽器を弾いて録って、それを送ってサンプリング用の素材として使ってもらいトラックを作ってもらった。それを元に意見を交わしながら作りあげていったという感じです。

ーーなるほど。そのほかの曲は3人だけの作業だったわけですね。

福永:そうですね。自宅で3人でDAWに向かってだいたいのデモを作り、使えるトラックはそのまま活かし、レコーディングに入ったら生ドラムに差し替えるものは差し替えたり、ギターを入れるものは入れて。

ーー蔦谷さんとDos Monosという対極にある人たちとの共同作業の曲があって、そのいずれでもない3人だけでやる曲の個性の打ち出し方については、どう考えましたか。

福永:そうですね……バンドとしてのあり方、みたいな話になるんですけど……雨のパレードってどこの畑にも属さないと思ってたんです。シティポップの畑でもないし、J-POPの畑でもないし、ギターロックの畑でもない。それってどうなんだろうって考えてるときに、昔お世話になったイベンターの方が久しぶりにライブに来て「今の雨のパレードってロッキン(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』)にもフジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL』)にもサマソニ(『SUMMER SONIC』)にも出られるね」って言ってくださったんです。それがすごく嬉しくて。どこの畑にも属さないじゃなくて、「どこの畑にも属せる」って、胸を張って僕らのアイデンティティとしていきたいと思いました。

ーーたとえば『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出ているようなバンドと自分たちとの距離感のようなものは感じますか。

福永:ロッキンに出てるバンドといってもひとくくりにはできないと思いますけど、2018年まではすごく感じていました。その後ベースの脱退を経てライブのやり方や曲の作り方も変わったんです。「Ahead Ahead」のリリースパーティー(『ame_no_parade RELEASE PARTY “Ahead Ahead”』2019年4月24日恵比寿LIQUIDROOM)のときに、最後に「Ahead Ahead」を演奏したんですけど、お客さんのリアクションがすごく良くて。そのとき蔦谷さんが「アーティストには2種類いて、圧倒するようなパフォーマンスをするようなアーティストと、お客さんと一緒に楽しむようなアーティストがいる。どちらも正しい」という話をされてて。前者はたとえば米津(玄師)さん。僕らもそのときまではバンドとして圧倒的に前者の方向性だったんです。もともと僕は音源を聴くのが好きで、ライブはそんなに好きじゃなかった。けど、その「Ahead Ahead」のリリースパーティーのときにカルチャーショックというか、こういう楽しみ方もあるなと思ったんです。僕らにはすごく新鮮な感覚で。

ーーつまり「お客さんと一緒に楽しむようなアーティスト」としての面白みを見いだしたと。お客さんを意識し始めたということですか。

福永:うーん、意識はしていたんですけど、僕らが踊れる曲だと思ってやっていたものは、みんなで踊れる曲というわけではなかった、みたいなところはあったと思うんです。たとえば「Count me out」というDisclosureを意識したような曲は、日本以外のアジアならみんな踊ってくれるんですけど、日本だと思ったより反応がなくて。今でこそみんな跳んでくれたりするようになったんですけど、その頃の僕らのライブだとみんな棒立ちになることが多くて。どうしていいのかわからなくなることがあったんです。

ーーそれはなぜでしょう。

福永:どうしてでしょうか……僕がちゃんと(お客さんを)誘導できてないというのもあると思います。なので曲を出すごとに、これなら盛り上がるんじゃないか、みたいな感じで常に考えてやってました。たとえば「Change your mind」だと、「Wow〜」って歌うところがあるんですけど、もしかしたらここでお客さんも一緒に歌ってくれるんじゃないか、とか。

ーーああ、なるほど。

福永:「Ahead Ahead」や「Summer Time Magic」を発表して、ライブの反応も変わってきたし、いろんな楽しみ方ができるようになってきました。たとえば「BORDERLESS」は、「Ahead Ahead」や「Summer Time Magic」のライブでの感触があったからこそできた曲だと思います。よりお客さんと一緒になれるような楽曲をテーマに制作しました。

雨のパレード - Ahead Ahead (Official Music Video)
雨のパレード - Summer Time Magic (Official Music Video)

ーーそういう風に外に向けてメッセージを投げかけるようなポップな曲がある一方で、コーラスを効果的に使った「Story」やゴスペル調の「Hallelujah!!」のような内省的な曲もありますね。その対比が今の雨のパレードをよく表している気がします。

福永:そうですね。2019年はすごく変化した年で、制作方法もそうだしライブもそうなんですけど、僕ら自身も変化していて。(レコード会社の)ディレクターが変わったんですよ。それによって僕らの中に新しい風みたいなものが入ってきたんです。このタイミングでプロデューサーを迎えるのはどうだろうという話が出て、蔦谷さんと曲を作らせていただくことができた。新しいディレクターとは歌詞も含め制作についていろいろ意見を交わすことができているんです。特に蔦谷さんとの曲に関しては、歌詞を伝える、多くの人に届けるということに重きを置いて、何度もやりとりして書いていった。その一方で「Hallelujah!!」ではもともと僕の中にある内省的なものを曲にすることができた。そういうコントラストはよりはっきりとしてきたかな、という気がします。

ーーじゃあ「Hallelujah!!」は本来の福永さんらしい曲であると。

福永:はい。テーマについてはそうだと思います。でもそこで蔦谷さんから、言葉尻を合わせるとグルーヴが出るよ、という話を聞いていたので、韻を踏むをことを意識して作りました。そこでもいい形の変化が起きている気がします。

ーー外に向かって開かれていくようなメッセージ性やポップ性は、蔦谷さんと出会うことによって生まれてきたということでしょうか。

福永:僕らなりにずっとそれをやってきたつもりではいたんです。でも前作まではもがいて模索している段階だった。ディレクターからプロデューサーを迎えるという提案をされたとき、大きなスケールの仕事をされている人と一緒に制作した方がいいだろうという意見が出て、僕らもバンドとしてはそこを目指していたので、蔦谷さんにお願いすることになったんです。いいタイミングだったと思います。

ーー福永さん本来の内省的な部分と、外に向かって開かれていく方向は、今後も同居していく。

福永:そうですね。1曲のなかでその両面を表現できたらと思いますね。

ーーなるほど。ざっくりとした質問ですが、歌詞は雨のパレードのなかでどれぐらいの重みを占めてますか。

福永:これも蔦谷さんに言われたことなんですけど、「日本人の多くは歌詞を聴いてる」って。僕もメンバーも蔦谷さんも、サウンドを追いたいんですよ。でもやっぱり歌詞が一番大事だからねって言葉を蔦谷さんからいただいて、そこからは歌詞の重要性はより強く感じています。ただ、好みでいうと音を追求していきたいって気持ちは強いです。新しい洋楽の音はいつもチェックしてますし、それをいかに取り入れて自分の歌と歌詞を載せて、自分たちなりのポップスとして成立させるかをいつも考えてます。『BORDERLESS』は、それをきちんと表現できたアルバムだと思ってます。

雨のパレード『BORDERLESS』

■リリース情報
『BORDERLESS』
発売:2020年1月22日(水)
通常盤<1CD> ¥3,000+税
収録曲:
1. BORDERLESS
2. Summer Time Magic
3. Story
4. Walk on
5. Trust
6. 惑星STRaNdING (ft.Dos Monos)
7. Hallelujah!!
8. EXIT
9. Gullfoss
10. Material
11. Ahead Ahead (new mix)

完全生産限定盤<CD+BONUS CD+GOODS>¥4,800+税
※GOODSに関しては後日発表
BONUS CD:LIVE ALBUM『Live at TOKYO-LIQUIDROOM 2019.4.24』
1. Reason of black color
2. Tokyo
3. You
4. 1969
5. speech(interlude)
6. free
7. Hwyl
8. Noctiluca
9. /eɔː/
10. You & I
11. Take my hand
12. Shoes
13. new place
14. Count me out
15. Ahead Ahead

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・その他チェーン・CDショップ特典
オリジナルステッカー<Type G>

<対象店舗>
山野楽器(CD/DVD取扱い店舗)、WonderGOO、新星堂(一部店舗を除く)、新星堂WonderGOO楽天市場店、セブンネットショッピングなど
※上記各特典ともに数に限りあり
※特典対象店は順次追加となる
※一部、特典の取扱いが無い店舗あり。事前に各店舗へ確認必須
※特典の内容・デザインは予告なく変更する場合あり

<雨のパレード楽曲配信>
iTunes Storeレコチョクmora
iTunes Storeほか主要配信サイト、Apple Musicほか主要定額制聴き放題サービスでも配信中。

■関連リンク
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