メジャーデビューの切符は誰の手に? 新世代シンガーの座を争う『ONE in a Billion』参加者インタビュー

 ソニーミュージックが2019年秋に新たなに立ち上げたオーディションブランド『ONE in a Billion』。昨年からスタートした同オーディションの3次審査が始まり、歌唱力審査、ライブパフォーマンス審査、Music Video審査を経て、昨年末に合宿審査がスタート。4000人に迫る参加者が、審査も佳境を迎え、とうとう6名まで絞られた。

 合宿審査に進めるのは、Music Video審査時点でのランキング上位6名のみ。最新のランキングでは、木下優真、野嵜豊、三浦風雅、きゃない、MASAZAYN、成山俊太郎がランクイン。しかし、MASAZAYNが体調不良により結果発表を欠席、7位にランクインした荒木一仁が仮通過として合宿審査に参加する波乱の幕開けとなった。

 今回、リアルサウンドでは、合宿審査が行われる施設に赴き、参加者全員にインタビュー。ここまで審査を勝ち抜いてきた印象をはじめ、ライバルである、他参加者への意識や勝ち抜くためのアピールポイント、そして歌手活動に対する思いについて語ってもらった。(編集部)

木下優真「どんなことがあっても初心は忘れない」

ーー今回『ONE in a Billion』に参加した理由を教えていただけますか?

木下優真(以下、木下):もともと自分のハスキーな声質にコンプレックスを持っていたんです。普段、誰かと話をしていても声が通りづらかったり、あまり好きではなかったんですよ。でも、2年前くらいからシンガーソングライターとして弾き語りの活動をはじめて、そこから徐々に自分の声質に自信を持ち始めたんですけど、そんな中で『ONE in a Billion』に出会って。“ボーカル”に特化したシンガーを募集していることを知ったときは、「もうこれしかない!」と思って受けました。

ーー小さい頃はどんな音楽を聴いていましたか?

木下:周りからは意外と言われるんですけど、親の影響もあって小さい頃からB’zが好きで。ボーカリストとして稲葉(浩志)さんは憧れですし、原点はB’zですね。最近好きになった方だと、石崎ひゅーいさんを尊敬しています。感情をストレートに表に出す歌い方が好きで、僕もそのくらい気持ちを伝えられるような歌手になれたらなって。ライブパフォーマンス審査では自分のオリジナル曲を歌わせていただいたんですけど、その時は今までにないくらい感情を歌に乗せることができました。

ーー普段から自分の気持ちを表に出せるタイプですか?

木下:普段はめちゃめちゃ恥ずかしがりです(笑)。でも、それと同じくらい有名になりたいという欲も昔から強かったんです。矛盾していると思うんですけど、認めてもらいたいというか、もっと自分のことを知ってもらいたい! って。不思議なんですけど、やっぱりステージの上だと、そういう恥ずかしいみたいな雑念は無くなるんですよね。結局、僕は歌えれば楽しいというか。

ーー今回、合宿審査前のランキングでは見事1位でした。

木下:1位という順位には誇りを持っていますが、この結果は応援していただいているファンの方のおかげだと思っています。自分が視聴者の方々に刺さった理由も考えるんですけど、もし僕がお客さんだったらきゃないみたいな個性の強いタイプが印象に残るんじゃないかなって。自分の歌声に個性がないとは思っていないけど、すごく際立っているかというと、そうではなくて。逆にその塩梅が一般の方に受け入れてもらえたのかもしれないと、ポジティブに考えています。

ーー周りの参加者に対して思うことは?

木下:最初はどうしてもライバルとしか見れていなかったんですけど、それぞれがみんな違った個性を持っていて、お互いに尊敬し合っていると感じますね。ライバルであり、戦友のような関係に近いかもしれないです。

ーーこれまで様々な条件の審査を受けてきましたが、成長につながっている点はありますか?

木下:まず、ここまで残った6人は“歌が上手い”は大前提で、そこからどうアピールしていくかが今後の鍵になってくると思っています。普段なら「上手く歌えた」で終わってしまうところだけど、今はその先に進むための一歩を考えなければならない。そういう思考を身につけられたこと自体が、このオーディションを受けた大きな成果であり、勉強になったところだと思います。

ーー自身のオリジナル曲を審査で披露する機会がありましたが、作詞作曲についてはどうでしょうか?

木下:曲を作るときは、メロディ優先で考えることが多いです。歌詞のメッセージ性も大切だとは思いますが、メロディでどれだけ聴き手を惹きつけられるかを大事にしています。歌詞もメロディのひとつだと思っているので、言葉選びも意味よりも語感で決めていくことが多いですね。聴いていただいた方からは、夕焼けやオレンジっぽい色が浮かんできたとよく言っていただけます。温かいメロディだねって褒めていただくこともあるんですけど、それは嬉しいです。

ーーオーディションも佳境に入っていますが、このまま勝ち抜いてグランプリを獲れたとしたら、その先はどう考えていますか?

木下:グランプリを取ってからが本当のスタートだと思っていて。デビューした後は、一般の方々に興味を持っていただけて、聴いてみたいと思っていただけるような曲や活動を発信できなければならない。まだ漠然としていて具体的な言葉にはできないですが、みんなに驚かれるような新しいものは作っていきたいなと思います。それに音楽を楽しむ気持ちは常に持ち続けたいなって。どんなことがあっても初心は忘れないように。

ーーもし今回ダメだったとしても、音楽との向き合い方は変わらないと思いますか?

木下:本間さんが「音楽は一生続けていくものだし、ずっとそばにいてくれる。ここで落ちてもまたどこかで会おう」といってくれたんですけど、自分もその気持ちですね。今回落ちたメンバーにも、またどこかで絶対会えると信じています。オーディションを通して成長できた部分も大きいですし、今はここで落ちたとしてもこの先も絶対大丈夫という根拠のない自信があります(笑)。だからと言って負ける気もないので、このまま進んでいけたらと思います!

野嵜豊「ファンの方は、僕にとってとても大事な存在」

ーー野嵜さんは、もともとダンス&ボーカルグループ・DRESS_No.として活動。『あんさんぶるスターズ!』などの舞台も経験するなど、オーディション前から芸能活動は行っています。

野嵜豊(以下、野嵜):ダンス&ボーカルグループと舞台での役者活動を行っていたんですけど、2017年頃に一度辞めて、2年くらい活動に間が空いてしまったんです。その2年間は、あまり外に出られなくなるくらいふさぎ込んでしまっていたんですけど、知人から『ONE in a Billion』のことを聞いて、挑戦してみたいと思って今回受けました。

ーー芸能活動を辞めてから、ふさぎ込んでしまった理由というのは?

野嵜:昔はどんなことにも根拠のない自信があったんですけど、だんだん「自分は何に自信をもっているんだろう」ときちんと考えるようになって。そう考えたときに「本当は自分はなにもできないんじゃないか」と思うようになってしまい、その自信のなさからだんだんと……。

ーー自信喪失のような状態になってしまったんですね。

野嵜:でも、今回オーディションを受けて、今ここまで残れたことは自信に繋がっています! 昔はもっと明るくお喋りできていたんですけど……暗いですよね(苦笑)。もともと人見知りではあったんですけど、その2年間はほぼ誰とも会わないくらい周りをシャットアウトしていました。私生活だけでなく、周りの方々からも自信がないことがパフォーマンスからも見えると言われてしまって。今はそれも課題として受け止めています。

ーーでは、DRESS_No.での活動を辞めた理由は?

野嵜:小さい頃からダンス&ボーカルグループに憧れていたので、当時のメンバーと一緒に活動するのも楽しかったんですけど、だんだんパフォーマンスや活動そのもののクオリティをもっと高くしたいと思い始めたんです。でも、それは僕個人のやりたいことや目標であって、グループとしての考えには至らなかった。今振り返るともっと柔軟に出来ることがあったんじゃないかと思うんですけど、当時はそういう強い気持ちが前に出てしまって……。

ーーMusic Video審査でダンスを披露しています。野嵜さんの音楽活動においてダンスは外せない要素ということですよね?

野嵜:そうですね。ダンスは小さい頃に少し習っていたんですけど、グループ活動を始めるときにもう一度始めて、そこで改めてダンスが好きだと思うようになりました。Music Video審査では振り付けを初めて自分で考えてみたんですけど、審査で1位をとることができたので、それは自信に繋がりました。

ーー今回の審査やレッスンで印象深かったことは?

野嵜:たくさんありますが、特にライブ審査が印象に残っています。グループで活動していたときは、基本的には誰かに呼んでいただいて、用意されたステージでオケをバックにパフォーマンスをしていたので、今回のライブをイチから作っていく感覚は新鮮でした。それに2年間ブランクがあったので、ボーカルやダンスにおける体の使い方を改めて見直せたことは大きいですね。

ーー自分のどんな部分をアピールしていきたいですか?

野嵜:僕にはダンスが強みだと思っているので、そこはきちんと見せていきたいです。ボーカルにはまだ少し不安があるんですけど、今回のレッスンを通して学んだことも多かったので、それを繰り返してもっと歌のクオリティを上げていきたい。きっと、歌が際立てば、ダンスも相乗効果で良くなっていくと思うんです。それにライブパフォーマンス審査でイチから何かを作り上げていくことの面白さを体感したので、もっと自分で曲や振り付けを考えていきたいですね。これから入っていこうと思っている世界は、自己プロデュースできるのが当たり前だと思いますし、ダンス&ボーカルで自分の世界観をしっかりと作り上げて、伝えられるアーティストになっていきたいです。

ーーYouTubeでのコメントを見るとしっかりファンの方も付いているようです。野嵜さんにとってファンはどんな存在ですか?

野嵜:ファンの方は、僕にとってとても大事な存在です。グループを辞めて時間が空いてしまったにもかかわらず、こうやって活動を再開したら暖かく迎えてくれて……。本当に優しいです。ファンの方々のおかげで僕も安心して再スタートができたし、ずっと支えていただいていると感じています。

ーーそういう応援してくれる方々のためにも、グランプリを獲りたいですね。

野嵜:そうですね。それにオーディションで落ちてしまった方々の思いも背負って頑張っていきたいです。まだまだ足りない部分はあると思いますが、応援してくれる方々、そして自分のために優勝して、デビューしたいです。

荒木一仁「僕の強みは気持ちの強さ」

ーー荒木さんは、MASAZAYNさんが審査発表に間に合わなかったため、仮通過という形で合宿審査に進みました。今の率直な心境はいかがでしょうか?

荒木一仁(以下、荒木):正直……やりにくい立ち位置だな、とは思います。でも、ここまで来たら、グランプリを取りたいです。

ーー仮通過と聞いたときは、どんな気持ちでしたか?

荒木:喜びはなかったです。仮という言葉が自分の中でもひっかかっていたし、悔しい気持ちが大きすぎて。自信はあったんですよ。でも、7位かって。やっぱり通過する条件の6位に入っていないと意味がない。だから最初にランキングが発表されたときは、「あぁ、終わったな」って。今は、仮通過だけど審査を続けられるなら、やるしかないという気持ちです。

ーー他の参加者を意識する部分もありますか?

荒木:みんなライバルですけど、こうやって男同士で共同生活をすることも滅多にないので、今は純粋に楽しさを感じています。僕自信はあまり喋るタイプではないんですけど、みんなでワイワイしながら音楽の話もできるし、常に刺激を受けています。まわりのみんなはオリジナル曲もたくさん作っていて、普段の活動も積極的に行っている人たちばかりなので、僕ももっとアピールしていかなければならないと思うし、活動ももっと増やしていかないといけないなって。

ーー歌うことを意識し始めたのはいつからですか?

荒木:小学校の頃にみんなの前で歌う機会があって、そのときにまわりから上手いと褒められたときが歌を好きになったきっかけかもしれません。心を開いたら明るいんですけど、基本的には引っ込み思案なタイプで。その割に目立ちたがりなところもあったので、そういう場所で歌うことも平気だったんです。中学生の頃はカラオケにたくさん行くようになって、とにかく歌を上手くなりたい一心で歌っていました。

ーー音楽活動をはじめるのも自然な流れだったんですね。

荒木:そうですね。僕、高校を中退しているんです。最初は高校をやめて働こうと思っていたんですけど、親父が僕が歌が好きなことを知っていて、そっちの道を目指したらどうだって進めてくれたんです。親父は僕が一番男として尊敬しているし、その言葉に後押しされたところも大きいですね。それで、高校は卒業しとかないかんなと思って通信制の学校に通って、今は音楽の専門学校で勉強しています。専門学校ではボーカルを専攻していて、音楽理論や演奏スキルなどを学んでいます。

ーーでは、触れる音楽もお父様からの影響が大きかったのですか?

荒木:いえ、そこは自分の好きなものを聴いていましたね。ロック系をよく聴くんですけど、特にONE OK ROCKが好きで、ボーカルとしてもTakaさんを一番尊敬しています。歌声が好きなのはもちろんですが、Takaさんの精神性というか、目標に向かって一直線に進んでいけるパワー、まわりに影響を与えられる思いの強さにすごく惹かれます。

ーー目指すべき理想のボーカル像もTakaさんですか?

荒木:Takaさんへの憧れは強いですけど、似せたり、真似したいわけではないです。自分は自分で個性を持っていると思うので。やっぱり日々自分が感じていること、信じているものを、まわりの人にも共感してもらえるように届けたい。テクニックも大事だと思いますが、僕がTakaさんの歌に希望や夢をもらったように、そういう思いの部分をしっかり届けられるような歌手を目指しています。

ーー荒木さんは作詞作曲も行われています。そういう意味では、歌詞のメッセージ性も大切にされているのでは?

荒木:作詞でもメッセージ性は大事にしています。でも、人に伝えたいという気持ちが先行しすぎて、まだ自分が納得できるような歌詞にするのは難しくて。ストレートすぎて、少し拙い歌詞になってしまうというか。音楽学校の先生にも、もっと比喩的な表現を入れた方がいいんじゃないかってアドバイスをいただくんですけど、まだ勉強しているところですね。人の胸に響くような歌詞が書けるようになりたいです。

ーーグランプリを取ってデビューした場合も、そういう心に刺さるような歌を歌っていきたい、と。

荒木:そうですね。僕の強みは気持ちの強さだと思うので、自分のそういう歌の色をだしていきたい。ステージは僕にとって本当に特別で、自分のすべてをさらけ出せる場所なんです。ここを通過できたら絶対に1位になります。それに負けず嫌いなたちなので、もし今回がダメだったとしても、あのときグランプリを獲らせておけばよかったと思えるようなアーティストに成長して、見返していければと思ってます。

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