YoungBoy Never Broke Again、Roddy Ricch、Lil Romo……DaBabyに続くか、2020年注目のラッパー6組

リル・ロモ|Lil Romo

『Memories Hurt』

 カルボーイ、ポロG(Polo G)など、シカゴから生まれたニュースターたちは、全米に名を轟かせつつある。Netflixのオリジナル番組である『リズム+フロー』では、チャンス・ザ・ラッパーを中心に、シカゴのアンダーグラウンドを掘り起こそうという動きもあった。そして現在進行形で力をつけつつあるのがリル・ロモである。18歳という若さでありながら、ラップの完成度は非常に高い。ポロGのビデオグラファーも務めている、ライアン・リンチによって撮られた「Move Out The Way」は、彼らのライフスタイルを上手く切り取り、まるでG Herboが乗り移ったかのように的確に淡々と言葉を当てはめていく。「For the Set」では、スキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッドの隠れた名曲である「Nationwide」の変則的なビートを器用に乗りこなし、本家に負けるとも劣らずの高いスキルを見せつけた。お金への強い執着も見られ、大学へ行くことも明かしており、冷静に状況を捉えているのも好印象である。2020年が彼にとって賭けの年であるとしたら、上がってくる日も近いだろう。

 2019年のリル・ナズ・Xブームはまた違った文脈で、2020年に引き継がれると思われる。コロンビアレコードにて、リル・ナズ・X、ポロG、リル・ティージェイをヒットさせるにあたり、重要な役割を担っていたティアラ・ハーグレイブが、2019年9月から<Alamo Records>に合流している。おそらくこれからさらに大きな動きをしてくると見られるが、すでに予兆は出ている。その中から2組紹介したい。

トレバー・ダニエル|Trevor Daniel

「Falling」

 まずはこのトレバー・ダニエルだが、彼の広報を担当しているのが、まさしくティアラ・ハーグレイブだと思われる。(参照元:celebrity)YouTubeのキュレーションアカウントから動画を出し続けたことで、「Falling」が1年以上前の曲でありながらTikTokでバズることに成功。ドレイク、XXXテンタシオン、リル・テッカらと、数多くのヒットを手掛けた<Internet Money Records>とも契約を結んでおり、現在ヒットしているチームのかけ算のようなアーティストが出来上がった。肩書きとしてはシンガーソングライターだが、エモラップの系譜を強く引き継いでおり、SoundCloud出身のアーティストである。トピックは恋愛を軸に、恋に落ちてから失恋まで、パーソナルなものが多く、共感しやすい。ただ彼が救いを求めているのは、ドラッグではない。どこにもいかない気持ちを歌の中に落とし込んでいる。

ロド・ウェイブ|Rod Wave

『Ghetto Gospel』

 日々の生活に疲弊し、救いを求めているとしたら、ロッド・ウェイブを聴くことをオススメしたい。彼のルーツを辿るとその意味が理解できるだろう。少年時代、父親はハスラーであり、そこまでお金に関しては困っていなかった。ただ父親が逮捕されると、環境が一変する。明日食べる金を稼ぐため、彼自身もストリートに身を捧げるようになった。ドラッグ売買や盗みなどを繰り返し、そこから多くのトラブルに見舞われるようになる。2017年に父親が出所すると、マイクをプレゼントされる。そこから音楽の才能が開花すると、<Alamo Records>と契約し、ストリートから抜け出す道を確保した。

 現在20歳でありながら多くのことを経験しただけあり、言葉1つ1つに魂のこもったようなリリックを映し出すのが特徴的だ。力強いラップとハイトーンの美しい声をスイッチする器用さが売りであり、ニューアルバムである『Ghetto Gospel』では、さらに高い解像度で表現することを可能にした。有名になるにつれ、それとともに増える孤独、刑務所に行く覚悟を持ちながらのストリートでの生活など、切っても切れないしがらみに苦しみつつもなんとか前を向こうとするリリックは、多くの人に勇気を与えた。アルバムは“Billboard200”で10位を記録。次作は間違いなくこれを超えるものができるだろう。

RealSound_ReleaceCuration@Yoshi

■Yoshi
1997年生まれ、学生HIPHOPライター。HIPHOPを中心に最新のトレンドを執筆。HIPHOPメディア、Waffling TV運営。Twitterブログ

関連記事