Poppin'Party、Aqours、LiSA、梶裕貴、IDOLiSH7、ヒプマイ……2019年声優/アニソンシーンをライター4氏が総括
とみたまい
男性声優のテレビ進出と、声優以外での活躍も
今年は、男性声優たちの活動の場がとても広がった印象です。例えば、梶裕貴さんは『news zero』(日本テレビ系)のコメンテーターとして何度か出ていましたし、『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)でも観覧ゲストとして出演されていました。また、武内駿輔さんも『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)の映画『アナと雪の女王2』特集でオラフ役として「あこがれの夏」を歌って話題になりましたし、木村昴さんは『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)で特集が組まれたり、『有吉ジャポン』(TBS系)の「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」特集にも出演されていました。このようなテレビ露出が増えたことで、「声優」という職業に詳しくない方にも身近な存在になっていったように思います。また、声のお仕事以外の活動も目立っていて、梶さんは『イノサンmusicale』(以下、『イノサン』)でミュージカルデビューを果たし、宮野真守さんと蒼井翔太さんはWキャストでブロードウェイミュージカルの初主演を務めています(『ウエスト・サイド・ストーリー』トニー役)。彼らの活躍もあり、声優の可能性がさらに広がった一年となったように思います。
2019年に飛躍した男性声優は?
今年、声優シーンのなかでも注目されていた印象があったのは仲村宗悟さん。取材した男性声優たちから彼の名前が挙がることも多かったです。まだキャリアとしては長くはないのですが、卓越した表現力と歌唱力で声優の方々にも厚い信頼を得ています。特に『AD-LIVE ZERO』に出演されたことには驚きました。『AD-LIVE』はキャラクター設定に適応しながらアドリブでお芝居をしていくという舞台で、若手声優が出演することは極めて珍しいんです。彼の実力が認められているからこその大抜擢だと思います。ベテランの森久保祥太郎さんと一緒に舞台に立っても見劣りすることなく堂々とされていて、肝が据わった方という印象でした。さらに今年はソロアーティストとしても活動を始めていて、シングル自体も非常に良い作品です。
あとはやはり梶さん。冒頭にお話しした通り、昨今非常に活躍されていますが今年は特に顕著でした。宮本亞門さんが演出を手がけた『イノサン』では物語における重要な役に抜擢され、公演前から注目が集まっていました。実際に舞台を拝見させていただきましたが、ミュージカル初出演とは思えないほど堂々とお芝居をされていて、歌もとても伸びやかに歌っていたのが印象的です。これを機に新たな扉を開いたように感じましたし、梶さんは来年以降もさらに活動の場を広げていくように思います。
それから、花江夏樹さん。今年大ヒットしたアニメ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎を演じて再注目された印象です。以前主演された『東京喰種トーキョーグール』で非常に複雑な役どころを演じられていたように、多彩なキャラクターを演じることができる声優ですが、特に竈門炭治郎という役は花江さんの優しい声質にハマっているなと思いました。もちろん原作が素晴らしいのですが、花江さんをはじめとするメインキャストのお芝居によって作品の良さがより引き上がったように思います。『鬼滅の刃』が大ヒットした要因のひとつと言えるでしょう。
「キャラクター×声優×音楽」ジャンルがますますアツくなる?
今年非常に興味深かったことは、化粧品メーカーのDHCとIDOLiSH7のコラボでした。IDOLiSH7(アイドリッシュセブン)は、同名アプリゲーム内のアイドルグループですから、楽曲を歌うのはゲーム内に登場するキャラクターです。そんななか、IDOLiSH7の「ハツコイリズム」をタイアップとして起用したDHCオリジナル“実写”短編ムービーでは、キャラクターを押し出すのではなく、あくまで“IDOLiSH7がアーティストとして楽曲を提供している”といった演出になっていることに大変驚きました。「キャラクター×声優×音楽」コンテンツが過熱するなか、こういった業界を驚かせるようなチャレンジを見せてもらえたのは感動しましたし、今後もそれぞれが独自のブランディングを展開してくれるのではと期待が高まります。