MAN WITH A MISSIONが生み出す、“歌モノ”の魅力 『Mステ』歌唱の「Remember Me」などから考える
頭はオオカミ、身体は人間という究極の生命体、通称“マンウィズ”ことMAN WITH A MISSION。今や日本に止まらず、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界中を駆け巡り、その名を轟かせているオオカミたち。音楽的には90年代のメタル、オルタナ、グランジ、ポップパンク、ミクスチャーロックから多大な影響を受けており、DJを含むバンド編成も見ても分かる通り、マンウィズの楽曲は多様性に富んでいる。
今年6月にリリースされた10thシングル曲「Remember Me」は月9ドラマ『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(フジテレビ系)主題歌に起用されたため、耳にした人も多いだろう。5月6日に配信シングルとして先行配信され、デジタルシングル(単曲)ランキングでは自身初の1位を獲得。そして、12月27日に生放送される音楽番組『ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2019』(テレビ朝日系)に出演し、この曲を披露するという。マンウィズと言えば、ライブやフェスで観客が頭上に両手を掲げて左右に振る無類のパーティーチューン「FLY AGAIN」のインパクトが大きいかもしれないが、「Remember Me」のようなミドルテンポの“歌もの”ナンバーにおいても突出したソングライティングの高さが光っている。同曲は鍵盤やストリングスを取り入れつつ、歌とメロディで正面突破した曲調と言っていい。今回はずばり"歌もの"を切り口に、マンウィズの魅力に迫ってみたい。
まずそのテーマで真っ先に思い浮かぶ、セルフタイトルを冠した1stアルバム収録の「RAIN OF JULY」を取り上げたい。リリース当時のライブでは必ず披露され、しかも後半の重要な場面でプレイされることが多く、観客の心に静かな感動を呼び起こす1曲だった。今聴いてもその輝きは微塵も色褪せていない。イントロから柔らかなアコギを用い、切ないメロディにポジティブなメッセージを宿した歌詞もこれから駆け上がっていくバンドの立ち位置と重なり、聴き手の感情移入を誘う名曲だ。この頃から、じっくり聴かせる曲調でも正々堂々と勝負できる歌の強さを誇示していた。
その歌の強さを意外な方面から気付かされた楽曲がある。少し重箱の隅をつつく選曲になるが、これまでNirvanaの「Lithium」、「Smells Like Teen Spirit」とカバーを発表してきたマンウィズだが、その中で個人的にもっとも衝撃を受けたのは3rdシングル『database feat.TAKUMA(10-FEET)』収録のカップリング曲「Green-Tinted Sixties Mind」である。ご存知、日本のハードロック/ヘヴィメタルファンに絶大な人気を誇るMr.BIGの傑作2ndアルバム『Lean Into It』収録曲だ。イントロから打ち込み音が響き、そこにラップを取り入れた斬新なアレンジにも度肝を抜かれたが、サビは原曲に忠実に歌い上げるという、そのギャップにも打ちのめされた。エリック・マーティン(Vo)という希代のボーカリストを比較対象に一歩も引けを取れないポップな歌メロを炸裂させていた。このカバーを聴いた際、マンウィズのポテンシャルの高さを思い知らされた。
ここからは複数の楽曲を取り上げていきたい。“歌もの”は大きく二つに分類すると、パワー系とミドルテンポ/バラード系が存在する。パワー系として挙げるならば、ライブで抜群の盛り上がりを見せる「Emotions」だろう。ドラマティックな曲展開もさることながら、合唱コーラスも効果的で、身も心も熱くなる圧倒的な歌メロの高揚感は群を抜いている。リスナーの魂に一瞬で火を付けるサウンドだ。また、「Raise your flag」は英語詞の中に〈声の限り 声の限り 声の限り叫んで/きっといつか いつか何処か 辿り着くと信じて〉と歌い上げるサビの突き抜けっぷりがとにかく最高。ライブ会場を一つに束ねる大合唱必至のキラーチューンである。