『B.PチャンネルFes.』イベントレポート

ヴィジュアル系バンド×YouTuber『B.PチャンネルFes.』、成功の秘密は? イベントから感じた未来への可能性

 今年10周年を迎えたRoyzは、自己紹介ラップ動画でメンバー全員のポテンシャルの高さを見せつけてから登場。自称“B.P.Rイケメン代表”・昴(Vo)の美しい歌声と激しいサウンドの融合が心地よい「IGNITE」から始まり、ミディアムテンポのバラード「月ハ蜃気楼、遠ク」では切ない恋心をしっとりと聴かせ、激しいだけがヴィジュアル系ではない、ということを証明してみせた。

 ゴールデンボンバーは登場前に喜矢武豊(Gt)による「歌ってみた」動画を披露。彼らの人気が出たきっかけのひとつがニコニコ動画にあるため、このような動画を制作したことは至極自然なことだ。

【歌ってみた】紅 / X JAPAN【ゴールデンボンバー喜矢武豊】

 ステージに登場すると、鬼龍院翔(Vo)は「(今日の出演者は)全員かっこいいなあ、夕闇以外」と茶化し、歌広場淳(Ba)は大トリの己龍を「ラスボス」と称し、一層盛り上げるためにコールアンドレスポンスを先導。そして「YouTuberになりたーい」とぼやく喜矢武豊(Gt)と「YouTubeではASMR動画で癒しの効果音を聞くのが好き」とおすすめする樽美酒研二(Dr)の前フリを受け「抱きしめてシュヴァルツ」へ。間奏で喜矢武は回転する椅子に座り、YouTuberのように「高速回転をしながらギターソロを弾いてみた」を披露。頭に装着したカメラの顔面アップの映像もスクリーンに流れていた。そして、突如聞こえてきた川のせせらぎのようなASMR動画らしき音に会場全体が癒される、かと思いきや、樽美酒が裸でトイレに座った状態で登場。先ほどの音は川のせせらぎの音ではなく、樽美酒が用を足す音だったのだ。ラストには「女々しくて」で乱入した他の出演者と共に会場を存分に盛り上げた。

 夕刻に開始したフェスも遂に最終演目。“ラスボス”己龍が登場すると、黒崎が「百鬼夜行、我らに続け」と言い放ち演奏開始……かと思いきや沈黙が続く。そんな思わぬハプニングもあったが、「百鬼夜行」ではデスボイスが炸裂し、続く「朔宵」では黒崎とオーディエンスによる扇子が美しく舞った。そして和楽器の音色がメロディアスで心地よい「悦ト鬱」や、高速ながら圧倒的な演奏力の高さで魅せる「九尾」などを披露し、曲中にオーディエンスにウェーブさせる場面も。ラストの「天照」まで、この日出演したヴィジュアル系バンドの中でも最高級の存在感と威厳を見せつけた。

 最後は出演者全員がステージに現れ「繚乱レゾナンス」を演奏。この楽曲は出演者全員が参加する動画として事前に公開されていた。最後の最後までオーディエンスを楽しませようと準備をしていたことが伺えると同時に、こうした試みもイベント成功の秘密のひとつだと感じる。

「繚乱レゾナンス」B PチャンネルFes.Ver

 客席をバックに写真撮影をし、フェスは終幕。最後までステージに残った己龍の酒井参輝(Gt)がマイクをとった。

「夢は叶うんだなと実感しています。夢を追いかけている人はここに沢山いると思います。夢を追いかけている人は諦めずに追いかけてください、ありがとう」

 彼の言葉には、新しいことをひとつ成し遂げた達成感が表れていた。当日に到るまで様々な仕掛けを用意し、それが着実に実を結んだのを実感できたからなのではないだろうか。彼らを見て、また新たな音楽の楽しみ方に挑戦するアーティストが増えていく未来を感じた一夜だった。

■白乃神奈
フリーライター。ヴィジュアル系など、音楽ジャンルに囚われない音楽が好き。趣味はライブ、ダンス、キャラクターグッズ集め。座右の銘は「鶏口となるも牛後となるなかれ」。
Twitterアカウントは@flugzeug255

(写真=KEIKO TANABE)

B.PチャンネルFes.公式サイト

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