森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.179
平井堅、KinKi Kids、UVERworld、大原櫻子、SHE’S……歌声の魅力が活かされた最新作
ポップミュージックの魅力はいろいろあるが、最初に耳に飛び込んでくるのは、やはり歌。今回は歌声の魅力が活かされた最新楽曲を紹介します。ドラマ『4分間のマリーゴールド』(TBS系)主題歌として話題の平井堅の新曲、坂本真綾が歌詞を手がけたKinKi Kidsのニューシングルなど、名曲&名作ばかり!
歌というのは、誰が何を歌うかが大事で「“この曲はこの人が歌わないと良さが伝わらない”ということはやっぱりあるよな」とビックリするほど当たり前のことを、筆者は平井堅の新曲「#302」を聴いて改めて実感した。ドラマ『4分間のマリーゴールド』主題歌として制作され、「“自らの身を削るほどに、焦がすほどに相手を想う気持ち”というところを共通項に、ドラマと並走するような、 もう一つのラブストーリーを紡ぐつもりで書きました」というスタンスで紡ぎ出されたこの曲は、恋人・あるいは他に好きな人がいるであろう“君”と、そんな“君”が好きであることを言い出せない“僕”が渋谷(と思われる)カラオケボックスに入る、という物語を描いている。二人の間に生じる、愛おしくて繊細な感情が平井堅の声によって伝わり、じんわりと切ない思いが広がっていく。アコギと歌を中心に、しっかりと音数を抑えたオーガニックなサウンドも、語り部のような平井のボーカルに色を添えている。
坂本真綾が作詞を手がけたことでも注目を集めているKinKi Kidsの41stシングルの表題曲「光の気配」は、キャロル・キングに代表される70年代の海外のシンガーソングライターの楽曲を想起させるミディアムバラード。“いつ満たされるかわからない、諦めることもできない、でも、かすかな光の気配がそこにある”というイメージをもたらす歌詞――洗練された詩的な表現で、美しい叙情性を醸し出すーーを堂本剛、堂本光一は、言葉を伝えることに重きを置きながら歌い上げている。ブラックミュージックの雰囲気を反映させ、独特のタメとグルーヴを生み出す剛、そして、正確にリズムを捉えて、まっすぐに感情を表現する(ように聴こえさせる)光一のコントラストは、シンプルな4リズム(ギター、鍵盤、ドラム、ベース)のアレンジにより、いつも以上に際立っている。この二人でしか生み出せない世界観をもっともっと味わいたいと思わせる、新たな名曲の誕生だ。
ドイツ語の「UNSER」(俺たちの)と英語の「ANSWER」(答え)を重ねた、つまり、“俺たちの答え”を意味する「UNSER」を冠したニューアルバムは、まちがいなくUVERworldの新機軸であり、このバンドが次のタームに突入したことを告げる作品だ。既存のシングル『ODD FUTURE』、『GOOD and EVIL / EDENへ』、『Touch off』で示されていた通り、本作の軸になっているのは、現在進行形の海外のR&B/ヒップホップとリンクしたサウンドメイク。当然メロディやフロウの手触りもこれまでとは大きく変化しているが、TAKUYA∞独特のタイム感は存分に活かされ、強いメッセージと音楽的な気持ち良さが絶妙なバランスで共存している。〈一つで良いずば抜けろ〉(「One Last Time」)をはじめ、オーディエンスの感情を力づく引き上げるリリックの強さもさらに向上。TAKUYA∞の声と言葉が真ん中にある限り、UVERworldの音楽は絶対にブレることがない。