“K-POP界のアベンジャーズ”SuperMがデビュー EPからグループに期待される役割を考察

 韓国では映画版の『アベンジャーズ』の人気が高いこともあり、“最強メンバー”を“アベンジャーズ”と形容することが多い。特に『PRODUCE 101』シリーズ以降、芸能界では頻繁に使われるようになった。そのような文化的背景もありSuperMが“K-POP界のアベンジャーズ ”を標榜するのは自然な流れだが、実際のビジュアルのイメージはカラフルなマーベルヒーローズのイメージとは少し違い、「Jopping」MVでの全身黒レザー姿でのダンスブレイクは、むしろ“ヴィランズ=悪役”のようでもある。アメリカショービズ界の現在を見ると、女性アーティスト界隈では“ヴィランズ”寄りのキャラクターが優勢であり、一方で“K-POP”“ボーイズグループ”、そしてナイーブなメッセージでファンに寄り添う“21世紀的グッドボーイ”の席はすでに埋まっているようだ。

 近年のSMは、カルチャー寄りのファンタジーな設定や非現実的なイメージで多くのファンドムを惹きつけてきた。パフォーマンス面では一貫して“ダンス”という大きな強みを持っているSMが、アメリカという多民族国家でよりマスな足跡を残すためには、アジアでは共通認識として受け入れられやすかった“多層的なわかりにくさをあえて含ませたイメージ”から脱却し、より多様な文化圏の人々に向けてある意味もっと”わかりやすい”、よりシンプルかつ肉体的な表現へと回帰する必要があると考えたのではないだろうか。ナイーブな歌詞の”寄り添いソング”ではなくあえて少し強気の歌詞を選び、ハリウッド映画的な“アメリカンコミックのヒーロー”というフィルターを通すのもそのための手法と言える。同時に、むしろ“ヴィランズ”が主役にもなりうる今日的な“アメリカのヒーロー像”は、単純な善と悪を描くものではなく、多様性を求められるという複雑さも併せ持っている。見る立場や状況によってヒーローあるいはアンチヒーロー、時にはヴィランにもなりうる多面性を持ち、フィクショナルではあるが共感もできる多様性を内包した存在。それが“2019年のアメリカでデビューするK-POPグループ”として、SuperMに期待される役割なのかもしれない。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
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