パノラマパナマタウンが表明した“選んで足を運ぶこと”のかけがえのなさ 『渦:渦 vol.2』東京編レポ

 終盤は「ほっといてくれ」のシンガロングが起こる「フカンショウ」、数多のライブを経てビートがグッとタイトになった「めちゃめちゃ生きてる」では、フロア前方が“自分こそがめちゃめちゃ生きてる”ことを自然発生的なリアクションで見せる。様々な諦め、輝いていた出来事は色あせていくーーそんなラップ部分から、サビの〈何だってできるなんて強がりも虚勢も味方に変えて〉がメロディに乗った時、シンガロングする声に篭った個々のエモーションを確かに肌で感じた。そして岩渕は「ほんとはここで終わってもいいんだけど、プレゼントとして受け止めて」と、新曲「Dive to Mars」を披露。ギターリフで作るロックサウンドのファンクやヒップホップで、一瞬、Beastie Boys、Fatboy Slimなどビッグビート的なジャンルのミックステイストを感じたが、明らかにこれまでのパノパナ流ミクスチャーとはまた違う。タイトルからして宇宙、だ。一度では噛み砕けなかったが、アンコールで二度目の演奏。さらにこの日の深夜0時から配信がスタートしたが、音源の情報量の多さをまだ消化しきれずにいる。

 パノパナから忘れらんねえよへのリスペクトはMCではなく、アンコールで「この高鳴りをなんと呼ぶ」のカバーの中の平歌部分で岩淵がラップをしたことが全てで、この場所を選んで足を運ぶことのかけがえのなさを表明していたと思う。オンラインの世界に辟易していてもしょうがない、知恵を使ってオフラインの世界で何か一つでも手応えを掴んで帰って欲しいーーそのスタンスに共振する人が確実に増えつつあることを確認したライブだった。加えて新作ミニアルバムのタイトル当てクイズをTwitter上で展開したり、アンコールでは次回ツアー内容を岩渕のスマホからAirDropでフロアに拡散したり(通信速度の影響か一気にとはいかなかったが)、何かと自力でできるアイデアを盛り込んでくる彼ら。SNSやデジタルデバイスに辟易しながらも前向きに使う、そのスタンスもこのバンドらしい。

(撮影=Atsuko Tanaka)

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

パノラマパナマタウン オフィシャルサイト

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