「バケモノ」リリースインタビュー

DEZERTが「バケモノ」で向き合った“劣等感”「自分の愚かな部分をちゃんと見つめようと思った」

 シーンの枠を超えて活動するバンド・DEZERTが、10月2日に急遽「バケモノ」を配信リリースした。「バケモノ=劣等感」をテーマに、ロックチューンに乗せて歌われる赤裸々な歌詞が印象的な楽曲だ。さらに、11月27日には同曲も収録したアルバム『black hole』を発売。今回はアルバム制作中のメンバーを直撃し、新曲「バケモノ」についてや、“考え方が変わった”というホールツアー『DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”』も振り返りながら、現在のバンドのモードに迫った。(編集部)

(ホールツアーは)結果的にすごく自信になった(Sacchan)

――8月にイベントで観たライブが非常に良かったんですが。

千秋(Vo):そうですか? 打算もなく普通にワンマンのつもりでやっただけというか、ナチュラルでしたけど。

――他のV系とは明らかに違うバンドのライブだな、と思って。自分たちでも違いを感じたりしてます?

Sacchan(Ba):違いはよくわかんないですけど、他のバンドの人たちと話が合わなくなってきた感じは最近してます。プライベートで呑みながら話をしてても「あれ?」みたいな。どっちが良いとか悪いとかじゃなくて、バンドのことを話すと違和感を感じて。また友達が減りそうだな……と(笑)。

SORA(Dr):俺もそれは感じます。いろんな友達と話してて、見てる先というか考えてることが違うような気がする。

――ライブもそうですけど、バンドがすごく先のことまで見据えて活動している印象があって。それは今回の「バケモノ」という曲にも感じました。

千秋:これは次のアルバムの土台みたいな曲ですね。ひとまずバンドが次のリングに上がったって感じ。だから先行配信なんです。ここからさらに広がっていくというか。

――ちなみに前回出したシングル『血液がない!/Call of Rescue』との違いは――。

千秋:あのシングルのことはもう忘れました(笑)。

――ちゃんと思い出してください(笑)。

千秋:あのシングル、俺は好きなんですけど、今のバンドの力量では表現しきれなかったんですよ。特に「血液がない!」は、ライブだともともと俺の持っていたイメージと全然違ってて。たぶんアレンジとかも今のバンドだとあれ以上のものにならないというか。リズムも俺ららしいリズムじゃなかったし、こないだのツアーでもすごく苦しんだんで。だから自分の中では忘れたことにしてます(笑)。

――『TODAY』はこの先にバンドの可能性が広がっていることがわかるアルバムで、「血液がない!」はその先を見せようとした新境地だったと思うんです。自分たちが行きたい場所だったり立ちたいステージ――例えば武道館でもいいんですけど、そういう未来の自分たちに向かってて。

千秋:ああ、そうそうそう。

――もっと言うとここではないどこかに行こうとして、バンドが少し無理している印象もありました。

千秋:ああ、そうっすね。まさにその通り。まさに俺、武道館とかを目指してたんですよ。そこを意識してのシングルだったんで。でも今は武道館とかどうでもいいし、どこかを目指してやってるって感じじゃなくて。イベントもフェスもワンマンも全部同じ気持ちでやってるんですよ。楽しいからやる、やりたいから出る、みたいな。

――あえて目的とか目標を持たず、目の前のことをしっかりやろうと。

千秋:もっと先々のことを考えたら、その方がいいかなって。普通はどのバンドでもZeppとか渋公(渋谷公会堂、現:LINE CUBE SHIBUYA)とか目標があって、そこに向かって今を頑張る、みたいな感じじゃないですか。けど今の俺らにはそれがなくて。だったらとりあえず次のアルバムを作ろうってなったんですよ。そしたら会社が喜んじゃって(笑)。「え、作ってくれるんですか! 出しましょう、出しましょう!」みたいな。

――そういう考えのシフトチェンジが起こったのは、やはりホールツアーでの経験が大きかったからで?

千秋:や、あれはマジでデカかったです。あのツアーがなかったらこの作品もなかったと思う。

――自分にとってどんなツアーでしたか?

Sacchan:僕としては……一瞬心が折れたんですけど、結果的にすごく自信になったツアーでしたね。ホント一瞬、心が折れるような光景があって、でもそのおかげで自分のライブに対する考え方が間違ってないって再認識できた。

千秋:いやぁ、みんなのボキッて折れた音、聞こえたもんね(笑)。SORAくん以外はみんな心折れてた。

SORA:俺、バカなんで気づかないんですよ、いろんなことに。で、「俺ってダメだな」ってツアー終わった後落ち込んだんですけど、先輩と飯食いに行って、そこで俺、ホールツアーの感想を携帯にメモったんです。それを今探してるんだけど……見つからなくて(笑)。

――探してください(笑)。とにかく、ホールツアーで動員が芳しくない場所があって、そこで見た光景に心が折れたけど、だからこそライブの規模や目的を意識するんじゃなくて、自分たちのライブをやればいいモードになった、ということですよね?

千秋:そうです、そうです。

Sacchan:そういう経験をして、改めて自分がもともと持ってた思考――どこでやろうと自分らのライブをやればいいって思えるようになったんですね。

Miyako(Gt):確かにあのツアーは辛い時もあったんですけど、そういう時こそバンドの本質が見えるというか。ホールツアーが終わった後、なんかすごく……いい感じになってたんですよ、バンドが。結局どこの会場でも普通にいいライブをしようとしてたし、たぶんあの辛さをバンドが乗り越えることができたってことだと思うんですよ。それが自信になったな、という感じはします。

――そういう意識でバンドをやってたら、周りのバンドとは話が合わないかもしれない。目の前の壁だったり問題にぶち当たっても、そのことでバンドが困ったりビビったりしなくなったってことだから。

SORA:確かに。もっとみんな、目の前のことでいっぱいですもんね。あの、メモが見つかったんで読んでいいですか?……「ツアーを廻る前から動員が良くない場所もあるのを知ってたんで、それを気にしないで強気でいこうと思ってツアーを廻りました。楽器隊、お客さんを含め、ライブは自分の音から始まるものだから自分が精神的にも強くないとダメだと思って。だからみんなの心が折れた日のライブ、俺だけは折れてなかった」。

千秋:や、それがむしろありがたかったんだよ。

SORA:「でもそこで俺が愚かなところはさらに調子に乗ってしまうところで。だからもっとドラマーとしても人間としても進化していきたいです」……終わりです。ホールツアーを終わってそう思ったらしいです。過去のSORAくんは。

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