ROTH BART BARON、“ファン主導”で開催したプラネタリウムライブは宝物のような一夜に

 都心から1時間あまり電車とバスを乗り継いで着いたのは、多摩六都科学館。夕闇迫る時間帯、巨大な球体の建物に繋がるエントランスは柱が青いLEDで縁取られ、まるで宇宙船の入り口のよう。これから体験するであろう非日常空間に思いを馳せながら、高揚した気分で勇んで入館した。

 何しろ今夜のライブはすべてが特別。クラウドファンディングによってROTH BART BARON(以下、ロット)のプロデュース権を獲得した24名が、プロジェクトチームを組んで企画・運営する「ファン主導」のライブなのだ。よって、この会場を手配したのも、演奏する曲目を決めたのも、ライブ中に使用する映像を作ったのもチームのメンバー。それどころか、会場の誘導も、ライブの撮影も、物販の売り子も彼ら自身が行なう、まさに“手作り”のイベントなのである。

 バンドのマイルストーンとして今後も語り継がれるであろう夜は、「よだかの星」で始まった。巨大なスクリーンに投影される、東京では決して見ることの出来ない圧巻の星空に、早速心震える。

 三船雅也(Vo)と中原鉄也(Dr)の脇を固めるのは、岡田拓郎(Gt)、竹内悠馬(Tp)、大田垣正信(Tb)、西池達也(Key/Ba)といった、これまでの作品やツアーでもおなじみの面々だ。

 ここのプラネタリウムは直径27.5メートルと世界最大級であるため、天井がとても高い。そのため音の響きがやわらかく、バンドの音も案外遠くに聞こえる。その点は野外ライブの開放感に似ているが、バンドの姿は暗くてよく見えない。今回のメインは頭上の映像ではあるが、ロットの音楽が好きだからライブに来ているのに、演奏している本人たちをほとんど見ないというシチュエーションはなかなかおもしろいものだな、と思った。

 それにしても。“プロデュース”の名に違わず、プロジェクトチームはどうしたらロットの楽曲が最も映えるかということを知り尽くしているのが凄い。どの曲にどんな映像を充てるかというセンスが的確であることは言うに及ばず、曲に内包されているメッセージまでもを汲み取ったような映像の差配は、本当に彼らの音楽が好きでなければなし得ないことだ。

 今夏出たシングル「Skiffle Song」では〈僕らは夜空に花火を打ち上げた/赤い火の粉がチラチラ揺れてて綺麗〉という歌詞のままの光景が眼前に拡がる不思議を体験。灯る炎を見つめていると、その熱が伝わってくるようだった。歌が映像を補完し、映像が歌を補完してできる空間は、さながら遊園地のアトラクションのようなVR感覚を味わわせてくれる。

 「bIg HOPe」の見慣れたMVさえ、ドーム状のスクリーンに映ることによって、これまでとは違った迫力とリアリティを伴って迫ってくるし、雪原をバックに演奏された「氷河期3(Twenty four eyes/alumite)」では、冷えた地表の温度ばかりか湿度までもが伝わってくるようだった。

ROTH BART BARON - bIg HOPe -

 そして興奮は終盤の「GREAT ESCAPE」「Innocence」「HEX」「HAL」と繰り出された『HEX』収録曲4連発で頂点に。

 幻想的な星空とロットの紡ぎ出す音楽の相性が良いのはファンならば誰もが“予想の範囲内”のことであるはずで、今回のプロジェクトはそういう意味では始まる前から“間違いのない”ライブであることは疑いようもなかった。ところが実際投影された映像は、星空だけでなく雨、オーロラ、ダイヤモンドダスト、雲海、流星……といったあらゆる天体現象をはじめ、雪原や街の夜の風景、炎、宇宙空間に漂う人工衛星など多様な映像で様々な角度から“自然の偉大さ”と“人間のちっぽけさ”を対比させ、想像以上の余韻と、人生の深淵に迫る深みを感じさせてくれた。 

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