ORANGE RANGEの遊び心に富んだ音楽哲学 5回目の『RWD←SCREAM』を振り返る
今日皆さんと出会えたことも記念日だと言って、ブライトなメロディが冴える「Happy Birthday Yeah! Yeah! Wow! Wow!」を贈り、エモーショナルな「シアワセネイロ」をじっくりと聴かせた。また中盤には、一旦『PANIC FANCY』から離れ、当時のツアーでもやっていたというメドレースタイルで「上海ハニー」「ロコローション」「JIN JIN」「祭男爵」「Special Summer Sale」という新旧のサマーチューンを披露し、盛り上げる。その灼熱のクライマックスから季節を飛ばして、『PANIC FANCY』の冬の歌「冬美」へと繋ぐ構成も見事。哀愁感たっぷりの響きが雪景色を誘うNAOTO(Gt)のギターがフロアをクールダウンして、3人のボーカルハーモニーが切なさを掻き立てた。
終盤のMCでは改めていいアルバムで、このツアーが終わってほしくないことや、こうしてついてきてくれる人がいて自分たちが好きな音楽をできていること、ライブが自分たちの原動力になっていることを観客に伝えたORANGE RANGE。リリースから11年を経たアルバム『PANIC FANCY』を引っさげたツアーは、「ドレミファShip」でエンディングを迎えた。YOH(Ba)が中心となって作り上げた曲で、「メジャーに来ていろいろな経験があったなか、メンバーに向けて書いた曲」(YOH)だと紹介したこの曲は、〈まだまだ人生これから ならやっぱ楽しまねーとな〉とアグレッシブに歌い出す。
5人一体となってポジティブなパワーを広げていくこの曲の核となっている想いは、今なお変わらないものだろう。その証明のように、アンコールの1曲目に披露したのは新曲「Enjoy!」。「この曲をみんなで大きくしていきたい」と、新曲にして陽性のシンガロングを巻き起こした「Enjoy!」は、5人が縦横無尽に跳ね回るライブという場で本領を発揮する楽しく、エネルギッシュな曲だ。過去作品を巻き戻し、ORANGE RANGEの遊び心に富んだ音楽哲学をより強靭に磨き上げながら、未来へとまっすぐに貫いていく意志を感じる、充実したツアーとなった。
(取材・文=吉羽さおり/撮影=平野タカシ)