『IDOL舞SHOW』特別企画

斎藤滋×木皿陽平×冨田明宏に聞く、二次元アイドルコンテンツの現在と新プロジェクト『IDOL舞SHOW』の展望

ユニット間のバトルが、魅力であり怖さ

――では続いて、『IDOL舞SHOW』自体について聞きます。このコンテンツは、いつ頃から動き出したんですか?

斎藤:前フリは昨年末頃から少しずつ工藤(智美)さん(※本プロジェクト全体のプロデューサー)からありましたけど、実際に集まったのは春先だった気がします。

冨田:その顔合わせの場で、この『IDOL舞SHOW』っていうタイトルも決まりましたし。

斎藤:みんなで考えたんですよね。

木皿:……いや、考えたの斎藤さんじゃないですか(笑)。

斎藤:あ、僕だったっけ(笑)。

冨田:その顔合わせのときに各ユニットの人数を決めたり、ユニット名のアイデア出しをブレスト的にして。あと、音楽性についてのざっくりとした提案もした気がします。

――その際に、特に面白そうだと感じられた部分はどんなところでしたか?

木皿:やっぱり“天下旗争奪バトルロイヤル”っていう、ユニット間のバトルですよね。普段音楽プロデューサーって基本的にはスタンドアローンなことがほとんどなので、同じ業界の先輩として見ていた方々とこういう形で“共演”するという……我々裏方の立場で、その言葉を使うのが適切かはわかりませんけど。

冨田:僕だって、2006年の『ハルヒ』のタイミングでこの業界でライターとしてやっていくといったときに、最初にイロハを教えてくださったのが斎藤さんですから。でもこのバトル要素、「すごい面白い」とか「呼んでもらえて光栄だな」って思いましたけど、同時に「怖ぇ……」とも思いました。

斎藤:僕も怖かったんですけど、この3人の並びが面白いのかもしれないと思ったし、しかも勝ち負けがはっきりするというのもいいのかもしれないと思って参加を決めました。たぶん30代中盤ぐらいだったらすごく悩んだと思うんですけど、今、割と解脱してまして。

――先ほども「一周回って」みたいな話がありましたね。

斎藤:あまりよくないことかもしれないですけど、「勝っても負けてもどっちでもいっか」っていう境地に達してるところがあって、楽しければいいかなと思ってやってるところがあります。経営者としてはもうちょっと貪欲なほうがいいと思うんですけど……人生の残り時間を考えるようになりまして。

――早くないですか?

斎藤:いや、「もうすぐ44だなぁ。仮に60が定年だとあと16年かぁ」って思うんですよ。そうすると、勝ち負けよりも「楽しんで死ぬしかない」ですよね。

冨田:いいですね。それこそまさに戦国時代みたいで。「人生五十年――」じゃないですか(笑)。

木皿:でも、3人を束ねる工藤さんがいちばん面白くないですか?

冨田:うん。たぶんもう、私たちをいろいろと焚きつけることやってるんですよ。そこに乗っかって、面白くしたいですね。

プロデューサーが明かす、各ユニットの特性と狙い

――各アイドルグループのプロデューサーが武将の生まれ変わりという設定をはじめ、コンセプトもどんどん固まってきています。(※『IDOL舞SHOW』では、斎藤重道(斎藤滋)、伊達宗人(冨田明宏)、真田幸之助(木皿陽平)という武将の生まれ変わりのプロデューサー3名が各グループを担当する)みなさんが各ユニットをどう育てていきたいのかも、注目されているポイントだと思います。

冨田:僕は“三日月眼(ルナティックアイズ)”を担当するんですが、最初の顔合わせのときにはっきりと「3人がいいです」とお伝えしました。というのも僕、3人組のグループがものすごい好きなんですよ。Perfumeとか、今のアイドルだとTask have Funとか。あと、スリーピースバンドも。英語圏では“パワートリオ”なんて言い方をするんですけど、それってフロントひとりだけが頑張っててもダメで。それぞれがめちゃくちゃ個性がないと成立しないんですよ。マキシマムなパワーできれいな三角形のパワーバランスが取れると、いいユニットとかバンドになるイメージがあるんですよね。それに、伊達政宗の兜も三日月型ですから。

――ハロプロを意識したユニットとのことですが。

冨田:それも工藤さんからの提案もあってなんですけど、僕、ハロプロのアイドルにはすごくポジティブなイメージがあって。それがすごく好きなところなんです。なので“応援してくださるファンのみなさんを承認・肯定するユニット”にしたくて、コンセプトも“ラブ! ブレイブ! イエス!”なんです。このなかなかにシンドい社会で一生懸命に生きて、三日月眼と出会ってくれたファンのみなさんを、私たちは愛を持って全肯定します……みたいな。だから“ラブ=愛”と“イエス=肯定”が入ってるんですよ。

――楽曲面でも、そういった要素を詰め込んだものになっている。

冨田:そうです。このユニットでは、とにかくエネルギーにあふれた楽曲をやれればと思っていますし、歌詞にもそういったメッセージは結構入れ込みましたね。私たちの業界のお客様の傾向として歌詞までちゃんと読んでくれているし、自分に置き換えて考えてくださる方が多いように思うので。

――続いて斎藤さん担当の“NO PRINCESS”は、SPEEDを意識したサウンドとのことですが。

斎藤:これは「ダンスユニットにしましょう」というコンセプトが元々ありまして。最初の打ち合わせでSPEEDっぽさっていう案も出たので、そこで決まりました。人数を4人にしたかったのは冨田さんと同じような理由もあって。今の自分には少ない人数でやるほうが向いてるだろうなと思って、「4人にさせてください」と言った覚えがあります。あとは、ユニットの特色的にやっぱダンスがなきゃいけないので、「踊れるキャストさんを」というお願いもしました。

――楽曲制作上で、現状こだわられている部分は?

斎藤:やっぱりダンスユニットなので、今のクラブサウンドを意識したものにしたいなと思っています。ただ、自分の場合は何をやっても必ず共通してしまうのが、“サウンドよりメロディ”というところで。メロディが強くないと絶対ダメだと思ってるところがあるんです。なので僕の場合は、ピアノ一本でも聴けるようなメロディには必ずするぞと決めています。

――また、NO PRINCESSに関しては、歌詞もあいまって特にオトナ感が出てる印象もありました。

斎藤:そこは工藤さんからのオーダーもあったので、そういったイメージにかなり寄せて作っていきました。

――そして木皿さん担当の“X-UC(テンユーシ)”は、“真田十勇士”になぞらえた10人組ユニットです。

木皿:さっき冨田さんがおっしゃっていたのとは真逆なんですが、多人数のよさとして、偶然やハプニングを楽しめるところがあると思うんです。今のところ、この10人の方々にはお会いできていないんですけど、やっていくうちに何か面白いものを発揮する方が急に出てきたり、未知数のXファクターが見つかると思うんですよね。だから、アイドルって時代ごとに意味合いや位置付けが大きく変わってくると思うし、今求められてるアイドル像とかを考えすぎないのが僕のやり方というか……やっていくうちに「お客さんやこの子たちのこういういいところが見えてくる」みたいなものを楽しみながらやりたいです。なので、今からどんなハプニングやサプライズが待っているのか、僕自身も楽しみにしています。

――ユニットとはもちろん、お客さんともコミュニケーションを取りながら、そこで生まれてきたものを大事に育てていきたい。

木皿:そうですね。あと、コンセプトにAKB48って書いてありますけど、明確な“AKBサウンド”の定義ってないと思うんです。ただ、たぶん多人数感を活かす力のあるメロディと、ギミックのある歌詞が特徴だと思うので、ストーリーやシングルの位置付けをヒアリングしながら、それに沿った楽曲制作を進めています。

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