STUTS、BIM、RYO-Z「マジックアワー」が纏うサマーチューンの歴史 引用とオマージュに着目

 余談ながら、「サマージャム'95」に登場する〈意味深なシャワー〉はさらにサザンオールスターズによる1982年の「夏をあきらめて」からの引用(〈熱めのお茶を飲み 意味シンなシャワーで〉という一節がある)。さらに〈夏のせい〉もスチャダラパー自身の楽曲「クラッカーMC'S」からの再利用だ。「夏」をめぐって数珠つなぎのようにオマージュや引用が飛び出てくるのが面白い。

 「マジックアワー」自体は、言ってみればウェルメイドな、いい湯加減のサマーチューンだ。この夏のみならず、あらゆる夏に聴き継がれても良い普遍性を持っている。まさに、STUTSによる勘所をおさえたシンプルなプロデュースワークの賜物だ。

 一方で、歌詞にはコラボレーターへのリスペクトや、日本語ヒップホップのクラシックへのリスペクトが伺える引用が織り込まれてもいる。さらに、その引用の系譜を辿っていけば、「夏」をテーマにした日本のポップス史にも触れる広がりを持っていることも上で示したとおり。「企画モノの豪華なノベルティソング」にとどまらず、リスナーのファン心をくすぐるツボとヒップホップやポップミュージックの築いた歴史をうっすらと纏った洒落た一曲だ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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