宮本浩次の衝動と言葉がサウンドに直結した“決意表明” 1stシングル曲「昇る太陽」を聴いて
実に30年連続(!)となる日比谷野外音楽堂での公演を、去る7月6日、7日の2日間にわたって開催したエレファントカシマシ。そのフロントマンである宮本浩次が、満を持してソロ名義のパッケージとしては初となる1stシングル『昇る太陽』をリリースした。“満を持して”というのは、何も大げさな話ではない。決して短くはないバンドの歴史において、恐らく何度も機会はあったであろうソロ名義での活動。長年のファンであればあるほど、ある種の驚きと感慨をもって受け止めるに違いないソロ名義での活動に、宮本はついに、このタイミングで踏み出すことを決意したのだ。
無論、そこには2018年に迎えたデビュー30周年のアニバーサリーイヤーを、初の『NHK紅白歌合戦』出場、そしてさいたまスーパーアリーナ2Days公演という、実に晴れやかな形で締め括ることのできた、エレカシというバンドの充実があるのだろう。けれども、“満を持して”というのは、それだけではない。ソロでの活動を宣言してから、昨年の10月には椎名林檎とのコラボレーション曲「獣ゆく細道」を配信リリース(椎名林檎と共に和服姿で臨んだ、昨年末の紅白歌合戦も記憶に新しい)、11月には東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカルとして「明日以外すべて燃やせ」をリリースするなど、彼はそのシンガーとしての類まれな存在感を、昨年より各方面で露にしてきたのだから。
さらに今年に入ってからは、ドラマ『後妻業』(カンテレ・フジテレビ系)の主題歌として、いわゆる“歌謡曲”に振り切った楽曲「冬の花」を配信リリース。4月には自身も出演した月桂冠『THE SHOT』のCMのために、軽やかなロックチューン「going my way」を制作、5月には自身も出演したソフトバンクのCM用に“宮本流ヒップホップ”とでもいうべき斬新な一曲「解き放て、我らが新時代」を制作&配信リリースする一方、俳優・高橋一生の歌手デビュー曲であり、彼が出演するドラマ『東京独身男子』(テレビ朝日系)の主題歌でもある「きみに会いたい-Dance with you-」の作詞・作曲・プロデュースを担当するなど、ひとりのアーティストとして、まさしく八面六臂の活躍を繰り広げてきたのだ。
しかし、ここで留意しておきたいのは、椎名林檎とスカパラの楽曲が、いずれも“ボーカリスト”としての参加であったこと、そして久しぶりに小林武史とタッグを組んで生み出した「冬の花」が、あくまでも『後妻業』というドラマの世界観に合わせて作られた楽曲であったこと、さらには、月桂冠とソフトバンクのCM曲が、それぞれ“マイウェイで、いこうぜ”というキャッチコピー、「しばられるな」、「新時代」というキーワードに寄せた形で生み出された楽曲であったことである。つまり、ソロ活動のアイドリング期間とも言えるこれらの楽曲は、求められた歌、求められたテーマを、宮本自身が反芻した形で生み出されたものであったのだ。