Poppin’Partyが開いたガールズバンドとしての新たな扉 サイサイとのメットライフドーム公演
DAY2
対する2日目は、そうして2組の魅力がひとつになった『NO GIRL NO CRY』の集大成。この日は冒頭、オープニングアクトとしてRAISE A SUILENが登場。「A DECLARATION OF xxx」でライブをはじめると、全員でヘッドバンギングをして会場を盛り上げ、以降も「UNSTOPPABLE」「R・I・O・T」を披露。最後は「EXPOSE ‘Burn out!!!’」で六花役の小原莉子が回し蹴りのようなパフォーマンスをしながらギターを弾くなど、躍動感あふれるパフォーマンスで会場を盛り上げた。前日のオープニングアクトとして出演したRoselia同様、彼女たちも7月13日と14日の2日間、神戸ワールド記念ホールで単独ライブ『Heaven and Earth』を開催予定。この公演にはPastel*Palettesの丸山彩役の前島亜美と、ハロー、ハッピーワールド!の弦巻こころ役の伊藤美来の出演も決定している。彼女たちが『BanG Dream!』のリアルライブに加わった「新たなバンド」から、「シリーズに欠かせないバンド」になったことを伝えるようなステージだ。
そして2日目の先攻を務めたSILENT SIRENは、1日目には最後に演奏された「チェリボム」でライブをスタート。楽曲がはじまるとすぐにサイサイ/ポピパのファンが一緒になって「チェリチェリボム!」と声を合わせ、2日目ならではの息の合った光景が広がっていく。その様子を受けてすぅが「最初からみんな盛り上がってるね! 歴史に残るイベントにしようぜー!」と告げると、そのままゆかるん(Key)から「みんな一緒に、キラキラドキドキしようね!!」とPoppin’ Partyのフレーズを引用し、「天下一品のテーマ」やメットライフドームだからこそ映える野球ソング「ジャストミート」などを次々に披露。メンバーが光るサングラスをかけて披露した「DanceMusiQ」では、ポピパとサイサイのファンがともに肩を組むように促して、対バンライブならではの光景がますます広がっていく。
以降は「昨日の続き、やっちゃっていいですか?」と観客に伝え、前日にサプライズでワンフレーズだけ披露したPoppin’ Partyの「ときめきエクスペリエンス!」のカバーをフルVer.でパフォーマンス! 最後は「恋のエスパー」を披露すると、途中でまた時間を止め、「この楽しい時間を終わらせたくない!」とこの日の1曲目を飾った「チェリボム」まで戻る演出。Key.ゆかるんがすかさず「巻き戻りすぎです。チェリボムの続きは、『ガルパ』でやってもらっていいですか?」とツッコミを入れて、会場がますます盛り上がる。こうした選曲からも伝わる通り、SILENT SIRENのライブで印象的だったのは、2日間を通して「2バンドのファンを繋げる」ことへの気持ち。先輩バンドらしい懐の深さと、ステージングの巧みさを感じさせるこの雰囲気が、2日間全体のムードをより魅力的なものにしていたように感じる。
一方のPoppin’ Partyは、「夏のドーン!」でステージ上では火花が散り、スクリーンに花火が広がるド派手な演出で2日目をスタートさせると、バンドとしての一体感や演奏力の高さを伝えるギターロック「Time Lapse」を経て、9月から公開される劇場版『BanG Dream! FILM LIVE』の映像とともに「Happy Happy Party!」「二重の虹(ダブルレインボウ)」を披露。とはいえ、2日目の大きな見せ場となったのは、新曲「Returns」の初披露だ。この楽曲は、アニメ内で純粋な楽しさを原動力に進んできたPoppin’ Partyにあって、『BanG Dream! 2nd Season』で花園たえ(CV:大塚紗英)の幼馴染み・レイヤ(CV:Raychell)の登場を機にたえが別バンドにもサポートメンバーとして加わるという初の経験=バンドの危機を経て作られた、Poppin’ Partyにとって重要な楽曲のひとつ。歌詞はアニメの第1シーズンで戸山香澄(CV:愛美)がたえをバンドに誘った際の台詞へのアンサーソング的な要素も込められていて、演奏終了後に愛美が「お帰り、おたえ!!」と大塚紗英に抱きつくなど、作品との相乗効果で楽曲が魅力的なものになる『BanG Dream!』らしさ全開で会場を魅了した。
Poppin’ Partyはその後もトロッコを積極的に使って会場を周遊した「キラキラだとか夢だとか 〜Sing Girls〜」、ドームの最後方からふたたびトロッコに乗って演奏され、円形状のドームがひとつの「輪」になった「CiRCLING」、「ティアドロップス」「STAR BEAT! 〜ホシノコドウ〜」といった人気曲を次々に披露。そして本編最後にメンバー5人の“絆”について歌う「キズナミュージック♪」の演奏をはじめると、この楽曲ではメットライフドームの巨大なスクリーンにメンバー5人の姿が並んで映し出され、大画面でそれぞれの楽し気な表情を捉えながら、お馴染みのボーカルリレーが展開されていく。メンバーそれぞれの歌声が順番に重なり合い、最後に戸山香澄役の愛美がボーカルを取る風景は、“みんなで進んでいく雰囲気”を何よりも大切にしてきたPoppin’ Partyらしさを伝える本編のハイライトだった。
アンコールに応えて登場した2日間のラストは、いよいよPoppin’ PartyとSILENT SIRENのメンバーが9人揃って披露した「NO GIRL NO CRY」。ステージ上で互いにポジションを取って、9人が混ざり合うように演奏する2バンドのメンバーと同じように、巨大なドームの観客席のファンも、Poppin’ Party/SILENT SIRENの垣根なく声をひとつにして歓声を送り、2日間の間に深まった2組のバンドメンバー/ファン同士の絆が会場全体を満たすような雰囲気の中で、『BanG Dream!』シリーズ史上最大規模のライブを締めくくった。
『BanG Dream!』シリーズは現在、『BanG Dream! 2nd Season』の初回放送を終えて、同番組の再放送を展開中。9月には劇場版『BanG Dream! FILM LIVE』が公開され、いよいよ2020年1月からは『BanG Dream! 3rd Season』の放送もスタートする。そうしたシリーズ内での作品の広がりに加えて、シリーズ外のバンドとも交流をはじめた現在の『BanG Dream!』シリーズは、今まさに新章に突入するような、新たな扉を開くような熱気に溢れている。
その第一歩として、シリーズをけん引してきたPoppin’ Partyが、憧れの存在・SILENT SIRENと観客を盛り上げた2日間は、これからのシリーズの広がりにも大きな影響を与えるに違いない。『BanG Dream! 2nd Season』の冒頭に登場する「大ガールズバンド時代」の幕開けを告げるニュースと同じように、『BanG Dream!』自体が現実のガールズバンドの可能性を様々なバンドとともに広げていくような、そんな雰囲気が何よりも印象的なライブだった。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。