Rude-αは、新たなポップスターに? ヒップホップのみにとどまらない越境的な音楽性を分析

 また自主企画『TEEDA』の対バンの顔ぶれも面白い。これまで迎えたアーティストはAFRO PARKER、ゆるふわギャング、LUCKY TAPES、踊Foot Works、DATS、SUSHIBOYS、Michael Kanekoら。ヒップホップからロックまでジャンルを絞らず、クリエイティブなグループを指名している印象だ。この横断的な姿勢は、沖縄のコザ市で生まれ育ったことと無関係ではないだろう。今もアメリカ文化が色濃い、この地で分け隔てなく音楽やカルチャーを吸収したことが今の活動に結実したと感じる。

 そして満を持して発表されるのが、メジャーデビューEP『22』。ソウルフルなフックから2倍の速さのバースとなる「wonder」をはじめ、傾向の違う5曲が収録されている。Rude-αのラップと歌をシームレスにつなげるスタイルは、冒頭に示した世界的なポップスのスタンダード。しかし『22』はヒップホップやR&Bではなく、J-POPとして聴こえるのはなぜだろう。全体のサウンドとネイティブ風の発音が少ない明瞭なラップによるものだろうか。

Rude-α 『wonder』

 ヒップホップ以降の世界的なポップスとして日本の音楽を展開していこうとするなら、Jポップシンガーはリズムと向きあう必要がある。1つの音符に1つの言葉を当てることの多い、日本語をフロウさせるのは難しく、下手をすると単調なグルーヴになってしまうからだ。乱暴すぎるくらい簡単に考えると「バトル」は音符3つ使うが、「battle」は音符1つで済む。ケイン・コスギにはCMの撮影で「ファイト一発!」が言えずに、どうしても「fight一発」になってしまったという逸話がある。つまり日本語は音符を英語よりも多く消費する分、明確にかっこいいリズムのパターンをイメージして構築しなければいけない。

 アメリカでは幼少期から日常でラップしたりして感覚をつかむのかもしれないが、文化的に日本人はハンデがあるかもしれない。しかし近頃は、そのフロウ感覚を持っている日本語シンガーが台頭してきている。Rude-αがそのひとりとして、世界的なJ-POPシンガーになることも十分予想できるだろう。ラッパーがポップスターとして生まれる未来が日本でも近づいているはずだ。成功の最初の一歩に『22』がなることを期待したい。

■小池直也
ゆとり第一世代・音楽家/記者。山梨県出身。サキソフォン奏者として活動しながら、音楽に関する執筆や取材をおこなっている。ツイッターは@naoyakoike

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