日向坂46の歌姫 齊藤京子、努力の末に勝ち取った歌唱力 『Mステ』初出演を機に振り返る

 ひらがなけやきが連続ドラマ初主演を務めた『Re:Mind』(テレビ東京系)の主題歌「それでも歩いてる」は、1stシングルに匹敵するほど重要な曲だ。ひらがなけやきの象徴である長濱ねるが欅坂専任になった直後の同曲で、センターを任されたのが齊藤だった。その歌声で世間に勝負できると判断されての抜擢だろう。また、齊藤が自身のことを歌っているというソロ曲「居心地悪く、大人になった」の歌詞からは、彼女の心境の変化や生き様が伝わってくるようだ。〈ああ 僕らはここまで来てしまった/ただひたすら歩き続け/目指したわけではないのに/気づけばこんな遠くへ〉と歌い出し、そして、今ここにいるのはあの頃の自分じゃない、生まれ変わった自分だと続く。

 歌手という夢を叶えるために頑張ってきた齊藤だからこそ、シングルデビューと日向坂46への改名が告げられた際に、飛び跳ねて喜んでいたのも頷ける。当時のブログでは、「初めて見た人にもすぐに理解して興味を持ってもらえてグループを大きくしていくには新たに坂道が必要だと私は思いました。自分が入ったグループを大きく成長させることがメンバーとしての役目だと思っています」とその心境を綴っていた。デビューシングル『キュン』における齊藤のポジションは、まさにグループを大きく成長させる重要な役目を担っていると言える。センター小坂菜緒の真横で、後輩センターを支えながら、自身の歌とダンスも目立つ位置。だからこそ齊藤のポテンシャルが問われる。

 そんな「キュン」で日向坂が『Mステ』に初出演を果たす。今回の出演は、遠回りしてきた彼女たちがやっと辿り着いた、デビューの証にして一つの到達点。メンバー各々に様々な思いがあるはずだが、ひらがなけやき単独アルバム『走り出す瞬間』がリリースされた直後の『BUBKA8月号』(2018年)のインタビューで、これからひらがなけやきで実現させたいことについて「私はMステにでることです」と断言していた齊藤にとっては、一つの夢が叶う瞬間でもある。ずっと歌手を目指していた齊藤が、目標にしていた番組に出演するという記念すべき日を我々は目撃するのだ。

(文=本 手)

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