金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」
MIYAVIやTKらのサポートドラマー boboが語る、スタイルの確立と大きな転換期
「すべては出会い。僕は運がよかった」
ーー途中で「今の世界の音楽には生ドラムがほとんどない」という話もありましたが、実際に打ち込みのトラックの割合が増す中、ドラマーとしてはどんなことを思いますか?
bobo:今はもう瀬戸際だと思います。まあ、日本はまだそこまで瀬戸際感はないですけどね。一番観客が入るフェスが『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』だから、まだバンドが強いし、その分ドラマーもたくさんいて、ドラム飲み会もアホみたいに人がいるんですよ(笑)。ただ、世界が求めてるのはトラックであって、フレーズ、音色、ダイナミズムに関して、生ドラムは求められていない。でも、その瞬間、その場所で人間が起こす爆発力っていうのは、絶対伝わると思います。DTMだって、DJ連中が魂込めて作ってるから、当然説得力がある。ただ、今この瞬間、ここで生まれてるっていう爆発力、ビッグバンの始まりみたいなその瞬間は、絶対に人間の方が強い。逆に、生に残されている可能性はそのぐらいなのかもしれない。
ーー実際に、音源は打ち込みで作られていても、ライブだと生ドラムっていうパターンも少なくないですしね。
bobo:お客さんはビートの出どころが見たいんじゃないですかね。あとは今曲を作ってるDJたちも、生ドラムの音楽を聴いて育ってきたからっていうのはあると思います。音源でも生ドラムが活きるとしたら、本当にリアルタイムで全員が混ざったときでしょうね。まずドラムを録って、後から他の楽器を乗っけるんだと、機械と何ら変わらないけど、その場でそこにいる人たちと作ったものには強度があるはず。あとは「拙いものがいい」っていうアドバンテージくらい……でも、それももうトラックで出せちゃうしね。
ーーつい先日、田島貴男さんに取材をしたんですけど、ORIGINAL LOVEの新作『bless You!』も1970年代以前のレコードを意識した一発録り主体の作品で、やはりそこはひとつの可能性なのかなと。
bobo:そうやってカウンターが出てくるんでしょうね。まあ、生楽器がなくなることはないと思うんですよ。オリンピックに人が集まる以上、その場の体験を求める人はいなくならないと思いますから。ただ、そういったことについて、音楽に関わる人たちがもう一回しっかりと話し合った方がいいんじゃないかとは思います。
ーーboboさん個人にとっても、ドラムという楽器のあり方としても、今まさに転換期と言えるのかもしれないですね。
bobo:そんな気がします。今関わってるやつらもみんな新しいフェーズに入ってる感じがするんですよ。特に、海外ベースの活動が増えつつある。僕も去年、一昨年と15カ国くらいに行ってて、日本人と一緒に世界に行けるっていうのは幸せなことだし、ありがたいことだなって。そこに関しては、すべては出会いだと思います。僕は運がよかったなって。“しごかれる運”がよかったのかもしれないです(笑)。
(取材・文=金子厚武/写真=池村隆司)
■bobo
54-71のドラム。MIYAVIやTK from 凛として時雨、くるり、フジファブリックなどのサポートドラマーとしても活躍中。Twitter:@bobo_drums